2017年 03月 12日

天の邪鬼

ずいぶん前、初夏の山原でのこと。
朝からスコールに降られてトンボは壊滅状態。することもないので、たまたま目に付いた路傍の朽ち木
を引っくり返してみると、小さなクワガタの雌が出てきた。なんだコクワガタか、、と捨てようとした
が、あまりに成果が無い日だったので、一応持ち帰ることにした。

それ以来、このクワガタのことは忘却の彼方へ消え去っていたのだが、つい先日、雑虫が入ったケース
をほじくり返していて再会した。
山原で採れたからリュウキュウコクワガタということになるのか、、と一応調べてみると、これが面白
い。

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まず、「コクワガタ」と名前が付くが内地の普通種コクワガタとは全く別種。むしろヒメオオクワガタに
近縁、ということらしい。言われてみれば、スリムな胴体と長い脚はヒメオオクワガタ的に見えなくも
ない。
そして奄美以南に3亜種分布していて、どの亜種も採集難易度がそこそこ高く、なかでも八重山亜種は、
国内産クワガタの最難関種であるという。

コクワガタと言えば、森で見つけても触りもしない空気のような存在のクワガタで、リュウキュウコク
ワガタもその一派、という認識だっただけに、この事実は軽い衝撃だ。

リュウキュウコクワガタは、コクワガタではない。

コクワガタを含む所謂ドルクス属は、絢爛豪華なオオクワガタやヒラタクワガタを含むが、調べてみる
と、ヤマトサビクワガタなどの小型のグループが面白い。雄の大顎の発達が悪く、一見すると雄雌区別
がつかない種はなおのこと面白い。他の属ではルリクワガタ、チビクワガタ、マダラクワガタ、マメク
ワガタなど、「クワガタなのにクワガタらしくない」という天の邪鬼的な要素に惹かれるのかもしれない。

次回はリュウキュウコクワガタの、クワガタらしくない雄と対面してみたい。





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# by brunneus | 2017-03-12 12:49 | つぶやき | Comments(0)
2017年 03月 10日

電気と蝋燭

コシアキトンボは汚れた水でも平気で繁殖する、都市環境に適応した「ド」が付く普通種だ。
社会人になったばかりの頃、職場があった神保町の近くの茶色く濁った外堀の上を、6月になると群れ
飛んでいたのを思い出す。

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図鑑の記述には、別名ロウソクトンボとかデンキトンボと言われている、とある。恐らく雄の腹部付け
根の白色部のことを差すことは推測できるが、発光する蝋燭や電気という名前には共感できなかった。
しかし、コシアキトンボが群れ飛ぶ姿を思い出すうち、すとんと合点がいく瞬間があった。

コシアキトンボは木立が豊富な池沼に棲息するが、曇りや嵐の前などの悪天候の時には、林縁に群れて
摂食飛翔することがある。
薄暗い背景を前にすると、翅や胸、腹部後半の黒色部は背景と一体化し、額と腹部付け根の白色がぽっ
と光って見えるのだ。


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薄暗い空間を浮遊する、白い光点。まさに、小さな電灯がふわふわと飛んでいるようだ。

今では白い背景の図鑑的なイメージにすっかり慣れてしまっているが、考えてみれば図鑑が普及してい
なかった時代、人々が生き物を認識するのは自然の風景の中だったはずだ。名前も、その風景を元に付
けられたものも多いだろう。ロウソク、デンキもそのひとつ。

図鑑やデジタル、標本箱の中だけでなく、自然の風景の中に存在する生き物を、もっとしっかりと味わ
おうと思う。

デンキトンボ万歳!







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# by brunneus | 2017-03-10 14:58 | つぶやき | Comments(2)
2017年 03月 07日

大山二態

オオヤマトンボは、北は北海道、南は八重山まで分布するポピュラーなトンボだ。
トンボを始めた頃は行く先々で見かけるので、極普通種という印象だったが、近年あまりその姿を見か
けなくなったのは気のせいだろうか。  

昨年の南方遠征では多くの個体を見た。偶然雌も手にできたので、内地産と比べてみる。

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左:八重山産 右:山梨産

こうして見ると、八重山産の雌は黄色斑の発達が顕著で、どこかキイロヤマトンボを彷彿とさせる。
「南下するにつれて淡色部が拡大する」という傾向は、他にオニヤンマやヤブヤンマ、オオシオカラトン
ボ、トンボ以外ではナガサキアゲハが有名だが、種を越えたこの変化は、何か共通の秘密が隠されてい
るような気がしてならない。

南国に住む人間が明るく派手な色を好む傾向がある、ということと強引に結びつけ、人間の人種という
概念を昆虫に当てはめてみたり。
妄想は果てしなく続く。








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# by brunneus | 2017-03-07 21:57 | つぶやき | Comments(0)
2017年 03月 02日

芦と横綱

ネアカヨシヤンマとアオヤンマは、どちらも図鑑的には「抽水植物が繁茂した池沼に棲息する」というこ
とになっている。

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環境から考えると、アオヤンマにとって、雌の産卵基質であるアシなどの背が高い抽水植物は必須だ。
いっぽう、ネアカヨシヤンマの雌は湿った土や、湿った朽ち木に産卵するので、必ずしもアシは必須で
はない。
アオヤンマはいるがネアカヨシヤンマがいない環境は、ネアカヨシヤンマの雌が産卵する湿土が無い、
という可能性が考えられる。中空に突き出たアシに掴まって産卵するアオヤンマと異なり、地面に降り
立って産卵するネアカヨシヤンマにとって、密生して生えるアシはむしろ邪魔な存在のはずだ。

こういった産卵基質が影響しているせいか、地面が必要ないアオヤンマは、大河下流の水郷地帯や公園
などの岸からすぐに水深が深くなる池、ネアカヨシヤンマは里山の谷津や休耕田などの湿地に産地が片
寄る傾向にあると思う。
千葉や都内の2種が混生する場所は、泥深いアシ池と湿土の両方がある、ということだろう。

ネアカヨシヤンマという和名は「翅の付け根が赤い、ヨシ原に棲むヤンマ」という意味だが、生態を見る
限り、「ヨシ」はむしろアオヤンマに献上すべき名前だ。
アオヤンマ改め「ヨシヤンマ」。ネアカヨシヤンマは、ヨシを外してネアカヤンマ、という所か。翅の根
元が赤くなるヤンマは実は他にもいるので、ここは発想をがらりと変えて、逞しく黒々とした体躯をふ
まえて「ヨコヅナヤンマ」はどうだろうか。

あっという間に3月。
あと3ヶ月もすれば、この2種が飛び交う季節がやってくる。





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# by brunneus | 2017-03-02 11:19 | つぶやき | Comments(0)
2017年 02月 25日

黒船

虫と美術。
どちらの世界にも片足を突っ込んでいる身からすると、現代の日本におけるこの2つの世界が置かれた
状況は似かよっていると思う。

国内の美大から毎年大量の学生が卒業するが、画家、作家として食べていけるのはそのうちの一握りに
も満たない。何故ならば、需要がないからだ。絵画や彫刻を気軽に買って家に飾っている人が、はたし
て自分の周りに何人いるだろうか?大多数の人々の生活に、絵画や彫刻は必要ないのだ。

前記事のソーラーパネル問題も含め、全国で動植物に保護の網をかける一方で開発がいっこうに止まら
ないのは、大多数の人々にとって、ちっぽけな虫けらよりも大切なのは金だからだ。
竹富町が4種の水棲昆虫を特別保護種に指定し、採集を禁止にするようだが、そもそもそうなった原因
も、西表島の低地の湿地や水田を次々に潰していった結果だろう。
要するに、開発を許可する権限を持つ組織には、本気で環境を保護する気がないのだ。

自然を理解することと、美術という概念は明治以前の日本にはそもそも無かった。
この二つは、ある日、浦賀水道に突如として黒い船の軍団が出現する光景を見た当時の日本人が、コン
プレックスの渦と共に大量に輸入した欧米原産の雑多な概念の中の一部だ。

つまり、日本の文化には美術と自然保護は根付いていない、ということなのだろう。もちろん、本気で
取り組んでいる人々もいるのは知っているが、その存在はあまりに頼りなく、心細い。

残念ながら、この二つの世界を取り巻く環境は、今後も厳しいものになるだろう。
絵画は趣味でも描くことはできるが、ウスバキトンボ以外は全て絶滅危惧種、なんてことになったら笑
うに笑えない。

自分に何ができるか、考えなければいけない。


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# by brunneus | 2017-02-25 14:09 | つぶやき | Comments(0)