2010年 06月 28日

キイロヤマ採集記

ある年の正月のこと。
忘年会でM氏の家に集い、例のごとく一日中トンボ話に花を咲かせていた。
そしていつからか、

「キイロヤマはおんもしれーよ!!」
「そうそう、あれはハマるねー」

という話になった。
その時の採集風景の映像を見つつ、ビール片手に嬉々として話し出す彼等を眺めながら、
「なるほど、確かに楽しそうだ。
しかしこんなに凄腕ハンターたちを興奮させ、苦戦させるトンボは、
どんなに難しいんだろう、、。
中途半端な装備とへっぴり腰のフォームしか持ち合わせていない自分には、
とても採集なんてできないんだろうな、、。」
などとぼんやりと考えていた。

しかし、国産macromia属の手持ちが充実してきた状況では、
本土分布種の最後の砦、キイロヤマトンボを無視するわけにもいかなくなってきている。

「今年はキイロヤマ、参戦しますよ!!」

威勢のいい宣言をして、はや数年。
休みや、他のトンボとのスケジューリングがどうしても合わず、
結局、その姿を生で拝むことのないまま、月日だけが過ぎていった。

彼等の話を聞くと、どうやらキイロヤマトンボを採るには、ネットが重要な鍵
になるらしい。
そして今年、ようやくキイロヤマ専用のネットを入手(Sさん、ありがとうございました)、
悪天による延期を経てから、満を持して初参戦に臨んだのだった。

トンボ仲間とのプチ遠征は、いつも前夜発。
今回は1台の車に男5人という濃密なトンボ行となった。
そしていつものことながら、トンボの話をしているうちに明るくなり、
結局仮眠ゼロでポイントへ。皆殆ど完徹状態だ。
仕事で終電でも地獄なのに、どうしてこういうことになると、全然疲れないんだろう。

午前4時半。朝焼けが始まった。
M氏の「ちょっと〜、まだ早いんじゃないの〜」
という声をよそに、待ちきれない他のメンバーは、いそいそと準備を始める。
そしてまだ夜の冷気が漂う中を、ポイントへ。
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ポイントはいかにも「とうとうと流れる清流」という言葉がぴったりの、
なんとも気持ちいい環境。
水着でも着て、水遊びをしたら、どんなに楽しいことだろう。
しかしここは重装備。まるで泥沼の戦地に赴くような格好で川の中に踏ん張り、
遠くに霞む空間にトンボの影を探す。
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そして薄暗がりの中を、時々ちらちらと通過するトンボの気配に全神経を集中させる。

午前6時20分。
上流側から、ひとつのトンボの影が水面近くをぐんぐん接近してくる。キイロヤマか?
竿を構えて、足元を通過する瞬間に思い切り振る。

「パッキーン!!」

周囲の竹林に、哀しい音が高らかに響き渡る。

シマノ製玉網EV6m。
トンボ屋の間ではこれ以上のスペックはない、と唱われた愛用の竿が見事に三分割してしまった。
頭が一瞬で真っ白になるが、R氏の助言と、ビニールテープを借りてなんとか応急処置。
しかしリーチが半分ほどに、、、。

なんとか気持ちを奮い立たせ、川面に仁王立ちになること6時間。
午後12時33分、M氏が見つけてくれたキイロヤマトンボ雄を、
ついにネットに入れることが出来た。

初めのうちはちょくちょく飛んできた各種トンボも、8時を過ぎるとぱったり来なくなってしまっていた。
この後は徹夜の影響が出始め、睡魔とひたすら戦う時間帯となる。
気付くと川岸にへたり込み、意識を失っていたこと数回。

そしてカラスの声に目をむけると、なんと買い置きした食料が入ったビニール袋の周りに、
黒い鳥が3羽。
「こらあ〜!」
とじゃばじゃばと石を投げつつ駆け寄り、無事を確認してみると、全然無事ではなかった。
午後の楽しみにしておいた、タマゴサンドとバウムクーヘンが、袋だけに。
たらこおにぎりは一見無事だったが、出してみると中から川の水がちょろちょろ、、、。

「はっはっは、この川では誰もが通る道だよ!」
M氏の慰めの言葉?に癒されつつも、さらにキイロヤマの追加を待つ。

午後4時25分。
「雌来たっ!!」の声に駆け寄ると、浅瀬の上を猛速で飛び回るトンボの影。
足元を前に横に後ろにすごいスピードで旋回し、全く狙いがつけられない。
「一点を見て」
対岸からのR氏の冷静な声に導かれ、自分の前方に影が来た瞬間に、
思い切って竿を振り下ろす。
「パシャッ」
「採った!」
水中のネットの端っこには、黄色い翅と金緑色の複眼が、、、。

チャンスはこれっきりだったが、
トンボ仲間を魅了させてやまないキイロヤマトンボの雌を、ついに手にすることができた。
これで、竿が折れたことや、カラスに大事な食料を盗られたことは、チャラになるだろう。

コヤマトンボ雌:体長70mm
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キイロヤマトンボ雌:体長74mm
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生態写真で見ると瓜二つのこの2種類だが、
こうして見ると、体型が全然違う。スリムな腹部に、黄色い翅。
そして腹部第3節の側面黄色斑が「キレてる」。
八重山のヒナヤマトンボにも通ずる独特のフォルムは、確かに魅力的だ。

もう今年は行くことはないだろうが、長年の宿題を果たすことが出来て良かった。

黄昏ヤンマシーズンが本格的に始まる前に、竿が修理から戻ってくるか心配、、、。
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by brunneus | 2010-06-28 01:14 | Comments(2)
Commented by Mくん at 2010-06-28 08:22 x
貫徹&10時間超、川ん中で待ち続け。。。。お疲れ様でした。今年もキイロヤマを見れてうれしかったです。
それにしても竿おれ&カラス被害。。。いきなりの洗礼でしたねー。(僕も数年前、カラスにシュークリームとポテチを持っていかれた。。。)
そろそろマルタンシーズン突入。
Commented by brunneus at 2010-06-30 11:28
Mくんさん
キイロヤマお疲れさまでした。Mくんさんのポジショニングセンスには脱帽です(笑)
次に行く時は、食料はしっかり隠しておきます!!
マルタン、ついに始まりましたねー!!


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