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トンボの日々

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2010年 10月 08日

産地の興亡・その2

長野県上田市のマダラヤンマ。

ここは山裾にひらかれた風通しの良い水田地帯で、
水の便が悪いからか、あちこちに溜池が点在する。
アシなどの水生植物が繁茂した池も多く、
これがトンボ類の恰好の生息地となっていた。
なかでもマダラヤンマは数が多く、かつては「棲息密度日本一」と言われたほどであった。
実際、「日本一」の状況が見たくてだいぶ前に訪れた時には、
池のなかにまさに「うじゃうじゃ」いて、あまりの数の多さに溢れだした個体が道路のあちこち飛び交い、
草むらに入れば足元から雄雌交尾態が次々に飛び出すような状態だった。

夢中で池の中を覗きこんでいると、通りかかった地元の人が
「何してるんですか?」と声をかける。
マダラヤンマを見せると、「へえ、こんなトンボいるんですねえ、見たことないですよ」
と感心していた。

それまでマダラヤンマは北関東での知見しかなく、
「姿を見ても一日で2、3匹」という印象だったので、上田の数の多さは
ちょっとしたショックだった。

それが数年前、上田市のマダラヤンマが天然記念物に指定されて採集禁止になり、
産地一帯が「保護」されて、地元有志が毎日「パトロール」し、
「マダラヤンマの歌」なるものも作られて、啓蒙活動が活発になった。

採集を厳しく監視し、手厚く保護されているので、
さぞかし個体数は増えているのだろうと思い、昨年現地を訪れてみた。
9月上旬、晴天。気温もちょうどいい。
マダラヤンマの活動には打ってつけの状態だったが、姿が見えない。
おかしいな、と思い、ポイントをあちこち移動しても、見つからない。
だいぶ探し回った所で、やっとアシの茂みに、雄がぽつんと一匹
ホバリングしているのを見つけることができた。

そういえば、いつもなら池の上空を我が物顔で飛ぶオオルリボシヤンマもいない。
結局、一日粘っても、マダラヤンマはたまにパラっと雄が飛ぶだけで、かつての面影は影もなかった。

きっと何かのタイミングが悪いのかな、と、また日を変えて行ってみても、
状況は変わらず。

風景は昔とあまり変わっていないので、
(かつてマダラヤンマが沢山いた池のいくつかが、無残にも改変されてしまってはいたが)
はっきりとした原因は分からない。
遠い産地なので毎日通うこともできず、正確な個体数の変化を把握しているわけではないので、
あくまで感覚にすぎないのだが、とにかくマダラヤンマは減っている。


その3につづく。

by brunneus | 2010-10-08 15:39 | Comments(0)


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