トンボの日々

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2012年 05月 03日

改めてムカシ

毎年この時期はシーズンスタート戦で、あっちへこっちへと大忙しなのだが、今年は生憎の雨。
こうなっては折角の休日も、家で画像をいじることくらいしかすることがない。

そこで採れたてのほやほやのムカシトンボをじっくりと観察してみる。

「生きた化石」というと何故だか稀少種で滅多に出会えないイメージがあるのだが、
トンボ界の生きた化石であるムカシトンボは、その気になれば簡単に出会うことができる。

時期は4月下旬から5月中旬。
場所は流量豊富な渓流。苔むした岩に木漏れ日が当たるような環境。
時間は大体午前中から午後にかけて。
天気は気温が高い晴天。

以上の条件が揃えば、東京近辺でも確実に姿を見ることができる。
きちんと調査したわけではないが、環境から推測して、八王子から青梅にかけての谷間には
まんべんなく分布していると言ってもいいかもしれない。

4月下旬の未成熟な個体は、真っ昼間に谷沿いに開けた空き地の上をのんびりと旋回する。
空間を飛ぶ小虫を捕らえる摂食飛翔だ。
飛ぶ姿を目で追うと、時折飛ぶコースをついっと変えて上手に虫を空中キャッチする様子が
見られる。
5月に入ると流れに姿を現し、雄は岸辺の草を覗き込むように俊敏にパトロールする。

とは言うものの、たかが5センチ足らずのトンボが路上を飛んでいても、
普通に歩いていてはまず気付かないだろう。

さて、このトンボの特徴はなんと言っても独特な外形にある。

現世に生きるトンボと言われる昆虫はことごとく、
1、4枚の翅の前後の形が等しい「均翅亜目(いわゆるイトトンボ型)」と、
2、前後の翅の形が異なる「不均翅亜目(いわゆるシオカラトンボ型)」の
二つのグループに属するのだが、たった3種だけ例外がある。

それがこのムカシトンボの仲間だ。
地球上に3種類。日本とヒマラヤと中国(昨年の新発見)の3箇所でしか見つかっていない。

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翅の形は前後が同じ均翅亜目型。
しかし胴体はがっしりしていて、不均翅亜目型。
二つのグループの特徴がミックスした形態をしているのだ。
これは、均翅亜目と不均翅亜目が枝分かれする以前の形質をいまだ残したまま現存
しているからだと言われている。時期で言うとジュラ紀とかそのあたり。
だから名前もムカシトンボ。

それともうひとつ。
トンボの複眼は緑とか赤とか青色が多いのだが、ムカシトンボの複眼は灰色。
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例えばオニヤンマやミナミヤンマも未熟な時はこんな色をしているのだが、
成熟するとどれも緑色になる。
しかしムカシトンボは死ぬまでこの色なのだ。
国内で他に灰色の眼を持つトンボはコフキオオメトンボくらいで、
そのなんとも言えない半透明な灰色はちょっとしたプレミアム感が漂う。
毛むくじゃらな頭部と翅胸も、独特だ。

腹部の斑紋も三日月型を散らしたようで、他のトンボには見られないパターン。
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何から何まで異例ずくしのムカシトンボだが、
こんなトンボが電車から降りてちょっと歩いた谷筋で沢山飛んでいる、というのは
なんとも贅沢な話だ。

春だけの特別なお楽しみ、というキャラクターのトンボ。
そのシーズンも間もなく終盤にさしかかる。
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by brunneus | 2012-05-03 01:17 | つぶやき | Comments(0)


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