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トンボの日々

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2012年 07月 20日

八重山・ふたつのトンボ

「八重山」「初夏」というキーワードを聞いただけで、
条件反射で思い浮かべてしまうトンボがふたつある。

まずはイリオモテミナミヤンマ。

左/イリオモテミナミヤンマ雄:体長79mm
右/イリオモテミナミヤンマ雌:体長82mm

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イリオモテミナミヤンマは
「ミナミヤンマ科」と呼ばれるオニヤンマに近縁な熱帯原産の大型トンボ類の一種だ。

国内では他に、
四国南部から徳之島まで点々と見られるミナミヤンマ、
沖縄本島北部や渡嘉敷島に分布するミナミヤンマの亜種であるカラスヤンマ、
そして沖縄本島北部のみに見られるオキナワミナミヤンマという種類がいる。

どの種も雄は一見するとオニヤンマそっくりだが、
雌は幅広い翅を持ち、その翅に様々な模様が発現する、という強烈な個性を持つ。
イリオモテミナミヤンマも、画像のように、雌には翅に独特の斑紋が発現している。

このグループは未熟時や摂食時に、大きな山の斜面やその麓の道路上、時には海岸の砂浜の上を
複数の個体が気流に乗ってグライダーのように雄大に旋回飛翔する習性がある。
姿かたち、行動のすべてが堪らなく魅力的なトンボなのだ。

イリオモテミナミヤンマは数回挑戦しているが、いつも悪天候に阻まれ、
あとちょっとの所で決まって時間切れ。生態が分からなければ、当然成果も出ない。
自分にとっては、なんとも掴み所のないトンボなのだ。

しかし幸運なことに、非常に稀なことではあるが、条件が良い日にぶつかることもある。
そんな時は拍子抜けするほど、あっさりと目の前に姿を現す。

朝日を浴びて路上をウスバキトンボと共に漂ったり、
海岸の絶壁の上をふわふわ浮かんでいたり、
風が静かな木立の上を忙しなく、舐めるように飛び回ったり。

行動は、ミナミヤンマやカラスヤンマと全く同じだ。

大きな翅で滑空しながら、目と鼻の先をゆったりと飛ぶ姿を間近に見る。
胸の斑紋や、翅の煙り具合、時々太陽光をきらりと反射する腹部。
心臓は飛び出るくらいに高鳴っているのだが、
その瞬間はまるで時間が止まったように永遠にも感じる。

イリオモテミナミヤンマは、
目を閉じると、いつもその飛翔する姿と風景が、共に蘇ってくるトンボだ。



もう一種はヒナヤマトンボ。

ヒナヤマトンボ雌:体長68mm

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ヒナヤマトンボの産地は石垣島が有名らしいが、西表島でも見られる。
国外では台湾を経て東南アジアや中国南部に広く分布するという。
内地にも分布するコヤマトンボグループの一種だが、
その細身の体型と、雌のぷっくりと広がった腹端は一見して他の種と異なり、
熱帯の雰囲気を強く感じさせる。

コヤマトンボは明るい川面をのんびりと飛ぶので採集は容易いが、このトンボは全く別。
薄暗い、木漏れ日のさす流れの上を、影のように素早く飛び回るのだ。
あっと気付いた時はもう遅い。次の瞬間には遥か遠くで後ろ姿となっている。

未熟な自分の腕では全く歯がたたないが
それだけに、偶然手にできた時の喜びもひときわ大きい。

ヤエヤマクマゼミや、ズアカアオバトの声を聴きながら一人、
涼しげな清らかな流れでこのトンボを待つ時間は、何にも代え難い至福の時だと思う。

by brunneus | 2012-07-20 23:09 | 沖縄 | Comments(2)
Commented by Mくん at 2012-07-21 21:06 x
どっちも格好いい!男のロマンですね~
イリミナが樹冠をパラつく姿が思い出される。。。。。
それにしても、相変わらず図鑑クラスの綺麗な写真ですねぇ。
クソ暑い中、人影無い大自然の中の探索は、本当に何にも代え難い至福の時間です。大事にしたいっすね
ではでは
Commented by brunneus at 2012-07-21 22:33
Mくんさん
本当に、トンボ採りはトレジャーハンターみたいな所があって、男子特有のロマンを感じますよね。
苦労した先の喜びが、中毒になるんですよね、、。
一人遠征の良い所は「現場で頼れるのは自分だけ」ということですかね。持てる判断力を総動員して動く、という所に爽快感を感じます(笑)


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