人気ブログランキング | 話題のタグを見る

トンボの日々

brunneus.exblog.jp
ブログトップ
2014年 01月 19日

上ばかり

今年もまた、2月23日の大宮のインセクトフェアに出す冊子を作っている。
冊子は基本的にトンボの写真は採集した生体を使う、というルールで制作しているので、当然国産トン
ボ全種はとてもカバーできない。(手持ちの写真だけを使ったこじんまりとした物なので、とても「図
鑑」と呼べるものではない)
しかし今回は例外的に乾燥標本を使ったものがひとつだけある。

シコクトゲオトンボ雌

上ばかり_a0126535_043770.jpg


10年ほど前、高知にミナミヤンマを狙いに通っていた時期に、目の前に飛んで来たところを偶然採集
した個体だ。
今思い出すとその環境は、杉林に囲まれた薄暗い谷間で、まさにシコクトゲオトンボが棲息していそう
な場所だった。ちゃんと探そうと思えば追加できたかもしれないが、当時はミナミヤンマに夢中で空ば
かり見上げていたので、梅雨の晴れ間の貴重な時間を割いて、薄暗い下草に止まるシコクトゲオを探す
余裕など無かった。
沖縄本島にもオキナワトゲトンボ、ヤンバルトゲオトンボの2種が棲息する。しかし幾度となく通って
いるにもかかわらず、水が滲み出した岩の前で蜘蛛の巣にかかった個体を一度だけ見かけた以外は、未
だに出会いが無い。
カラスヤンマやオキナワミナミヤンマが舞う谷間は、それこそトゲオトンボ類の好生息地のはずだが、
やはり空ばかり見上げていたのでは、出会えるものも出会えないだろう。

赤い脚と顔面と黒い身体。全身から南方の雰囲気を醸し出すトゲオトンボ類は好きなトンボなのだが、
出会いを求めるなら、やはり上空の誘惑を断ち切って、薄暗い地面に意識を向ける勇気と余裕が必要な
のかもしれない。

by brunneus | 2014-01-19 01:21 | つぶやき | Comments(0)


<< 再会      蘇る >>