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トンボの日々

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2014年 01月 22日

再会

このブログは一応、トンボがメインのブログなのだが、乾燥標本にしたトンボを載せたことは殆ど無い。
(前回の記事のシコクトゲオトンボが初だと思う)

さしたる理由は無いのだが、なんとなく、標本は、画像としてよりも実際手にして味わうものだという
感覚があるのかもしれない。デジタルの鮮やかな色再現性のもとでは、どんなにうまく作った標本も、
生時の輝きには敵わないのだ。

先日。
シコクトゲオを探してあちこちひっくり返していたのだが、その時に思いがけず懐かしいものが出てき
た。

コフキオオメトンボ雄 体長53mm(デジタルイラスト)
再会_a0126535_191854.jpg


元は乾燥標本なのだが、ここでは生時に近い状態をデジタルで加工した。
話は逸れるが、図鑑的な写真の場合、たとえ写真であっても少しでも加工を加えれば、それは写真では
なく、手描きのイラストレーションと同じ立ち位置になると思う。ここではそういった意味も込めて、
「デジタルイラスト」と呼ぶことにする。

話を戻すと、このコフキオオメトンボは、10年程前に西表島で採集したものだ。
このトンボは元来、国内で定着しているのは絶海の孤島、大東諸島のみだった。それが2000年代に
入ると何故か八重山諸島でも見られるようになり、西表島を訪れた時も、ジャングルの中の薄暗い不気
味な池の上を、白い稲妻のように飛び交っていた。
当時の自分にとってコフキオオメトンボは憧れのトンボで、無我夢中でネットを振り回したが、気持ち
ばかりが空回りして思うような成果はあげられなかった。

個体数は多く、その時は「また来て採ればいいか」と自分を慰めて帰途についた。そして2年前、八重
山遠征の時に久々に産地の池を訪れてみると、池の姿はそこには無く、かわりに繁茂した湿性植物の群
落があるだけだった。調べてみると、どうも池を支える堤の一部が決壊してしまい、水が流出してしま
ったようだった。

こうしてコフキオオメトンボとの再会は幻に終わってしまったわけだが、インターネットの情報では、
近年、西表島にほど近い島でも採集されているようだ。
大東島まではとても行く気持ちになれないが、八重山諸島のどこかでひっそりと世代交代してくれてい
るとしたら、頼もしい。

次の再会が楽しみだ。

by brunneus | 2014-01-22 01:34 | つぶやき | Comments(0)


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