2015年 10月 20日
唐突にオニヤンマの話。 種「オニヤンマ(Anotogaster sieboldii)」は、国内では北海道から八重山まで全国に広く分布 する、とされていた。ところが近年になり、八重山産の個体群が沖縄諸島以北と切り離され、新 たな種として「ヒロオビオニヤンマ(Anotogaster klossi)」なる名前が付けられた。 「ヒロオビオニヤンマ」は、八重山を北限として、中国や東南アジアに広く分布するらしい。 オニヤンマは、内地産と南西諸島産で斑紋の変異があることが知られ、具体的には、雌の腹部の 黄色斑紋が南へ行くほど発達する。そしてヒロオビオニヤンマではさらに黄色が鮮明になり、翅 の根元に橙色の斑紋が出現する。 そしてこの個体。 ヴェトナム産のAnotogaster klossiとされる個体だ。 もちろん当地に行って採集してきたわけではなく、資料を元に再現したデジタルイラスト。 種としては、これも「ヒロオビオニヤンマ」ということになるのだが、とても同じ種に見え ない。しかし、内地産のオニヤンマの斑紋変化を参考に当てはめてみると、やはりヴェトナ ム産も、「腹部黄斑が極限まで拡大した」状態であることがわかる。 「南へ行くほど淡色部が拡大する」という傾向がAnotogaster属にはあるのだろうか。 国内の種と海外の近似種とを比較し、その共通項を見出したとき、いま住んでいる国と、そ の外側の世界が一気に繋がる感覚に襲われる。これが知の力であると思うし、探究心の原動 力になるのだと思う。 世界は広い!
by brunneus
| 2015-10-20 00:51
| つぶやき
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Comments(13)
いつも拝見させていただいております。
貴重な写真ありがとうございます。 どのお写真も綺麗で素晴らしいものばかりです。 今後ともよろしくお願いいたします。
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brunneus at 2015-10-20 23:37
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ミーハー
at 2015-10-24 13:25
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同所的に棲み分けていたら別種だけど、島で途切れながらも連続的変化なら、地域個体群とか亜種の気がするんですが…
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brunneus at 2015-10-24 14:54
ミーハーさま
初めまして。コメントありがとうございます。 そうですね、、。オニヤンマに関しては、八重山には他に同属はいないので、「ヒロオビオニヤンマ」は僕も地域個体群、または亜種なのかな、と思っていました。 僕は知る由もありませんが、近年、トンボのDNA解析が進み、分類に新たな知見が進みつつあるようで、DNA解析によると、八重山のオニヤンマは東南アジアに分布するA.klossiと同種となる結果が出たようです。 亜種の扱いは、様々な生物群集間で細かい定義が異なるようで、難しい問題ですね。トンボの分類に関しては、近年はDNA解析での分類が主流になっていて、僕も少々戸惑っています。 分類に関しては色々考えるのは好きなので、もうすこし考えてみようと思います。
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ミーハー
at 2015-10-24 23:50
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DNAで調べたのですね
なるほど 大陸側でオニヤンマとヒロオビオニヤンマがどっかで同所的に存在しているのでしょうかね? それとも連続的変化なのかなぁ? そんな所が気になってきたりしますね。 ロマンがありますね!
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brunneus at 2015-10-25 00:12
ミーハーさま
大陸側でまず種分化して、北回りでオニヤンマが日本列島を南下、南からはヒロオビオニヤンマが北上、しかし八重山の北に海峡が成立していたのでストップ、、。こう考えるとロマンがありますね!その発想はありませんでした。 「種オニヤンマ」が成立した時期は、アジアがどういった地理状況だったのか、、。 地理的分布と種分化の問題は、地学的な部分も総合して考えなければならないと思います。 そのうちDNA解析?が飛躍的に進化して、種分化した時代まで特定できるようになれば、様々な疑問が一気に解決できる気がします。 いっぽうで、例えば別種とされるクロスジギンヤンマとギンヤンマの雑種は妊性がある、など、種の定義を超えるような事例もあります。 「種とは何か」を考えるのは、ほんとうに楽しいですね。 もちろん僕は専門家ではないので、妄想で遊んでいるような状態ですが、、。
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ミーハー
at 2015-10-25 00:51
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ノコギリクワガタとかはヤイマとリュウキュウの間で種がかわる(連続性に欠けるかなり差がある)ので、いつぞやの時代になんらかの地理的隔離があったのだろうと思われます。一方塩分に強い流木拡散できるヒラタクワガタは亜種。ナガサキアゲハは南にいくほど白くなりながら同種。とかあるんで、トンボとか飛翔性つよいから、ナガサキアゲハのパターンで同種じゃないのかななんて考えてコメントしてしまいました。
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ミーハー
at 2015-10-25 01:13
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追加…
わたしも昆虫に関してはすぶの素人ですが、いろいろ妄想するのが好きです。 ギンヤンマとクロスジギンヤンマの件ですが、種が分化したあと、時間が不十分で交配可能性は失ってないけど、発生時期や交尾する時間帯、住む場所など生態面での生殖隔離が働いて別種として進化中のものもあるのではないのかなと…。 森林性のミドリシジミの仲間などテリタイムが早朝、午前中、昼間、夕方で同じ場所でもズレていたりするのもあるし、ナニワトンボとか昼にしか出てこないとかあるし、池でも時間帯で主役のトンボが変わって異種交配避けるシステムとかはないのでしょうか? くだらない議論で連投してすみません。
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brunneus at 2015-10-25 02:24
あれこれ考えると面白いですね、、!
チョウもそうかもしれませんが、トンボの中にも飛翔力(移動力)が強い種と弱い種がいるので、種分化は、なかなか複雑な過程を経ているのかもしれません。 ナガサキアゲハは移動指向の種ですが、地域変異がある。いっぽう、トンボではギンヤンマも移動指向が強いですが、地域間での形態、色彩差が殆どありません。このあたりもテーマとして考えてみると面白いですね。 トンボでも、同じ環境でうまく時間と空間を使い分けている例は、沢山ありますよ。 大切なのは、ミーハーさんが仰る通り、全ての種は常に「進化、種分化の途中である」ということだと思います。連続的に続く変化の中で、どこを切り取るか、、。これはごく個人的な感覚ですが、分類学というのは、人間が自己満足のために考え出した、一種の宗教ではないかと思うんです。生物に限らず、ランダムに散乱するものを仲間集めをして整理し、理解する(したつもり)のが、人間の性だと思うからです。 分類の問題は、その巨大な連続性の一瞬について考えているに過ぎない、ということなのかなあ、と。 深夜の投稿なので、なんだかおかしな方向に行ってしまいました、すみません(笑)
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ミーハー
at 2015-10-25 11:45
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同感です
分化の途中にあるものを地域個体群とするか亜種とするか別種にするかに累代交配可能性でデジタル的に線を引くのは難しいと私もおもいます。 ゲニタリア、外形態、地史、分布、生態、DNAとかの総合的な判断が… それでもグレーなものは限りなくあるみたいな… ギンヤンマはさしずめチョウでいえば汎世界種ヒメアカタテハでしょうか…? ??? 私、沖縄で捕まえたギンヤンマはオオギンヤンマとリュウキュウギンヤンマだったけど…???
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brunneus at 2015-10-25 12:41
そうですね。
分類に限らず、ある事柄を突き詰めて行けば行くほど、その先には漠然とした世界が待っています。ですので僕は、分類はあくまで仮、とりあえずの、その場限りの知識の遊びのようなものだと思っています。 ギンヤンマは、ヒメアカタテハほどは広域分布ではないようです。トンボで言うなら、高温期には、極地、砂漠を除く世界中を埋め尽くす、ウスバキトンボがそれにあたるでしょうか。 沖縄にはギンヤンマもいますよ。ただ沖縄では、リュウキュウギンヤンマは定着性が強いので常に個体数は一定ですが、ギンヤンマとオオギンヤンマは常に移動しながら世代を重ねているので、個体数の増減が激しいです。特に最近はオオギンヤンマの減少が著しいです。沖縄の環境変化、というよりも、供給地や、気流の変化が原因なのではないか、、と個人的には思っています。 ミーハーさんが訪沖されたときは、たまたまオオギンヤンマの当たり年だったのかもしれませんね。僕は近年はオオギンヤンマを久しく手にしていないので、羨ましいです(笑)
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ミーハー
at 2015-10-29 10:30
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沖縄のオオギンヤンマとギンヤンマ迷蝶というか迷トンボみたいなものですかね?
迷蝶でも気候が安定してれば大量発生して土着化したかと思わせて突然消えるものもありましね。 迷蝶といえば南からと思わせますが、北からの迷蝶もあるみたいです。 オナガアカネとかあるし… 最近ナミアゲハも沖縄本島でかなり見られるみたいですし…
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brunneus at 2015-10-31 14:22
ギンヤンマは、個体数の増減を繰り返しながらも、毎年安定して見られるので土着、と考えて良さそうですが、オオギンヤンマに関しては微妙なところですね。最新の知見では、ウスバキトンボと同じ「飛来種」という扱いになっているようです。
北方からの飛来種、ご指摘のオナガアカネのほかに、マンシュウアカネなども、大陸から北海道に飛んで来るトンボです。春から夏は南西、秋から冬は北西の季節風に乗ってやってくるのでしょうね。 ナミアゲハ、沖縄本島で増えているのですね!知りませんでした、、。食草であろうシークァーサーは沢山あるので、競合する他のアゲハとの関係が気になりますね。 |
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