このカミキリが棲息する島に行ってきた。
ヤエヤマムネマダラトラカミキリ
この格調高いカミキリを手にできたのは、全くの偶然。本土のムネマダラトラカミキリですら憧れの存
在なのだが、まさか想像もしていない場所で出会うとは思ってもみなかった。今回は、他にも嬉しい偶
然があった。
自分の場合、遠征というものは、予測を立ててある程度の確実性を担保できた段階で決行を決めている。
しかし大抵の場合その担保はあっけなく崩される(単に予想が甘いのだが)のだが、その裏には想像す
らしなかった偶然の産物が用意されているものだ。
それが、遠征をより豊かなものにしてくれる。
何故、毎年熱病のように南方遠征に取り憑かれているのか。例えば近所のコンビニでカップ麺を買う感
覚で遠征に行く人間もいるのだろう。しかし、自分にとって沖縄は特別な場所だ。北海道でも東北でも
なく、沖縄に行くという行為そのものが大切なのだと思う。
言ってしまえば、別に目的のトンボが採れなくても良いのだ。クマゼミの叫び声に意識を朦朧とさせな
がら亜熱帯の熱い空気を存分に肺に吸い込み、ホオグロヤモリの控えめな声を聴きながら微睡むことが、
自分にとって大切なことなのだ。
亜熱帯には「トンボ採り」に行くのではない。だから成功も失敗もない。
ただ、あの場所に居られれば、雨でも晴れでも関係ない。
毎年、そう思って南へ向かう。
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