関東でオニヤンマを見かけても、「ああ、いるね」で済ませてしまうことが殆どだが、南西諸島では話
が違ってくる。
棲息可能な環境が多くあるにも関わらず、何故か南西諸島ではオニヤンマを見る機会が少ない。しかも
奄美大島以南では島ごとに変異が顕著で、八重山産は東南アジアに分布する別種の北限とされている。
この微妙な変化が面白く、南方遠征で姿を見かけると本気で追い回してしまう。
遠征二日目の朝。
オオキイロトンボの狂乱の真っ最中に、立木の梢を周回する巨大なトンボが目に入った。考えるまでも
ない。乱舞するオオキイロトンボは放り出して駆け寄り、竿を全開にして射程に入るのを待つ。背伸び
してぎりぎり届く高さを不規則に飛ぶので全く自信は無かったが、ここぞという瞬間に振ると、空中か
らシルエットが消えた。
ヒロオビオニヤンマ雄
昨年の遠征では全く姿を見ず。2012年の遠征では雌を、2010年では雄を手にしている。雄は実
に7年振り。ヒロオビオニヤンマは雌の翅の付け根が橙色になることが大きな特徴だが、雄もやはり一
見して内地のものとは雰囲気が異なる。その理由は腹部下側の黄斑拡大で、裏返してみるとそれがいっ
そう顕著。「黄色いオニヤンマ」という形容がぴったりだ。
八重山でのヒロオビとの出会いは、未熟、もしくは成熟したての個体の摂食飛翔だ。その日にどこを飛
ぶかは全くの運任せなので、今回は幸運にぶつかった、ということなのだろう。
そしてその後、今回の遠征中最大の幸運にぶつかることになる。
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