トンボの日々

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2017年 07月 19日

パイヌシマ2017・その7

亜熱帯でほっと一息つけるのは、日没後と夜、そして日の出前の僅かなひととき。山の尾根から太陽が
姿を現すと、あたりは熱と光の暴力的な世界へと一変する。

そんな灼熱の地獄から逃れるように、ジャングルに囲まれた渓流に駆け込んだ。足元の日だまりには、
コナカハグロトンボがちらちらと舞う。長靴を通して心地よく冷えた水の感触が脹ら脛に伝わってくる。
背後の斜面から響く、タイワンヒグラシのヒステリックな耳鳴りのような声を聴きながら石に腰を下ろ
して放心していると、目の前に黄色っぽい小さなトンボがふらふらと現れた。ヒメホソサナエだろうか。
正体を確認すべく、脇に置いた竿を手に取りトンボの動きを注視する。

トンボはさっと水面を掠めて再び舞い上がった。水飲み行動だ。まずい。このままでは飛び去ってしま
う。体勢が整っていなかったが、竿を振る。「かさっ」という微かな音。

頭の中にヒメホソサナエの雌のイメージを浮かべながらネットの中を覗き込んで、息を呑んだ。


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サキシマヤマトンボ雌

去年、まぐれで雄を採った全く同じ島、同じ場所で、今度は雌を手にしたのだった。しかも今回手にし
たのはまだ未熟な個体。サキシマヤマの時期は既に末期のはずだ。さらに雄ならまだしも、サキシマヤ
マの雌なんて、どこでどうやって採ればよいのか見当もつかない。
このことは何度も書いているが、幸運とは、全く予想もしない時にひょっこりと目の前にやってくるも
のなのだ。

今回の最大の目標、イリオモテミナミヤンマは最後まで姿を見せなかったが、サキシマヤマトンボの雌
と出会えただけでもう充分。これ以上の成果を望むのは欲張り、というものだ。

八重山最高!









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# by brunneus | 2017-07-19 22:18 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 16日

パイヌシマ2017・その6

関東でオニヤンマを見かけても、「ああ、いるね」で済ませてしまうことが殆どだが、南西諸島では話
が違ってくる。
棲息可能な環境が多くあるにも関わらず、何故か南西諸島ではオニヤンマを見る機会が少ない。しかも
奄美大島以南では島ごとに変異が顕著で、八重山産は東南アジアに分布する別種の北限とされている。
この微妙な変化が面白く、南方遠征で姿を見かけると本気で追い回してしまう。

遠征二日目の朝。
オオキイロトンボの狂乱の真っ最中に、立木の梢を周回する巨大なトンボが目に入った。考えるまでも
ない。乱舞するオオキイロトンボは放り出して駆け寄り、竿を全開にして射程に入るのを待つ。背伸び
してぎりぎり届く高さを不規則に飛ぶので全く自信は無かったが、ここぞという瞬間に振ると、空中か
らシルエットが消えた。

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ヒロオビオニヤンマ雄

昨年の遠征では全く姿を見ず。2012年の遠征では雌を、2010年では雄を手にしている。雄は実
に7年振り。ヒロオビオニヤンマは雌の翅の付け根が橙色になることが大きな特徴だが、雄もやはり一
見して内地のものとは雰囲気が異なる。その理由は腹部下側の黄斑拡大で、裏返してみるとそれがいっ
そう顕著。「黄色いオニヤンマ」という形容がぴったりだ。

八重山でのヒロオビとの出会いは、未熟、もしくは成熟したての個体の摂食飛翔だ。その日にどこを飛
ぶかは全くの運任せなので、今回は幸運にぶつかった、ということなのだろう。


そしてその後、今回の遠征中最大の幸運にぶつかることになる。







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# by brunneus | 2017-07-16 00:46 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 14日

パイヌシマ2017・その5

オオギンヤンマを最後に手にしたのはいつだろう。
記録を辿ってみると、2006年の山原が最後だった。2007年は姿を目撃したが少なく、採集には
至らず。2008年以降は一匹も見ていない。
移動性の強いオオギンヤンマの減少は、環境の変化や採集圧ではなく、はるか南方の供給地から飛来す
る際、気流が変わったか、なんらかの理由で山原まで到達できなかったのではないか、と考えている。
2006年以前の山原ではごくありふれたヤンマであったので、改めて採集しようなどという気が起き
なかった。しかし気付いてみると、その姿はない。
2015年もその姿は無かったが、その年の遠征の前後に行った仲間からの情報では、オオギンヤンマ
は複数いたらしい。こうなると気流云々ではなく、自分の日頃の行いが原因、、という疑いが強くなっ
てくる。

ともかく、オオギンヤンマはまともに撮影を始めてから一度も手にしていなので、是非とも出会いたか
った。実は昨年の八重山でも姿は見ているのだが数は少なく、炎天下の岸辺で待ち続けるという状況に
音を上げて、ついに採集はならなかった。

そして今年。昨年姿を見た池で、再びオオギンヤンマと対峙する。
オオギンヤンマは広大な範囲を縄張りに持ち、一度目の前を通過するとなかなか戻ってこない。
頭上のオオキイロトンボを収納した次の瞬間、足元の岸辺に飛び込んできて、一瞬ホバリングする大型
ヤンマが目に入った。体勢は整っていなかったが、フルスイング。快音。

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思わずガッツポーズが出る。
11年越しの念願が叶った瞬間だった。そして是非やってみたかったのがこれ。

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Anax3種の夢のコラボレーション。
こうなるとオオギンヤンマの雌も、、と欲が出てしまうが、それは来年以降に取っておこう。希望は少
しづつ叶えるのがいい。








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# by brunneus | 2017-07-14 00:55 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 11日

パイヌシマ2017・その4

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小粒な種類が多いトンボ科の中で、オオキイロトンボはひときわ目立つ存在だ。
亜熱帯の日差しを浴びて金色に輝く長大な翅を水平に保ちながら、悠然と滑空するスケールの大きな
飛翔は、せせこましいトンボ科のイメージとは一線を画し、周囲に一種の緊張感すらもたらす。
このトンボは山あいの池が好きなようで、カラスヤンマを求めて山原の谷間の林道を逍遙している時
は、いつも遥か頭上にぽつんと浮かんでいる。オオキイロトンボは、山原では遠い存在なのだ。
八重山では少し事情が違い、山裾の池や湿地はもちろん、風通しのよい林道などでも、頭のすぐ上く
らいの高さをふわふわと浮かんでいる。ヒメハネビロトンボに混じって忽然と姿を現す黄金色を目に
すると、いつも胸が高鳴ってしまう。

このトンボの行動は面白い。
池や林道をぽつんと漂うのはいつも雄ばかりなのだが、午前中のある時間になると、水辺に一斉に雄
雌の連結態が飛来するのだ。あちらのカップルの接近を待っていると、すぐ脇を別のカップルが抜け、
ネットインしたカップルの収容作業中に、目の前で雄の警護を受けながら雌が産卵、、というふうに、
水辺はオオキイロトンボのお祭り状態となる。
昨年はお祭り時間の前にポイントを後にしてしまったので、雌は手に出来ず。
そして今年。オオキイロトンボは久々のお祭り状態となり、これが今年の遠征でのクライマックスの
ひとつとなった。
このポイントでの産卵タイムは一時間足らずで終わってしまうのだが、その後は何事もなかったかの
ような、ぽつんと雄が浮かぶいつもの風景となる。祭の後の寂しさ。

オオキイロトンボが乱れ飛ぶ眺めを見られただけでも、遙々遠征した価値はあったと思う。








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# by brunneus | 2017-07-11 23:07 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 08日

パイヌシマ2017・その3

今回の旅で出会ったトンボの中で、勢力を拡大していたのはこの2種。

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上:アカスジベッコウトンボ雄雌 下:ウミアカトンボ雄雌

アカスジベッコウトンボは、昨年は全く見られなかった湿地にも多くの個体が飛び交っていた。初め
てこのトンボを見たのは2012年。ホソアカトンボの池で2つの雄を見て仰天したのだが、今や止
水系トンボの中では、オキナワチョウトンボに次いで幅を利かせている。しかし不思議なことに、ギ
ンヤンマが飛ぶような広々とした池ではあまり見かけない。むしろ、水草が生い茂った、半ば湿地化
した池や、木立に囲まれた小規模な池、貧相な水田脇の水路などで見かけることが多かった。
このトンボに関してはあまり知識を持っていないのだが、内地で言うとオオシオカラトンボのような
生態的地位にあるのだろうか。

ウミアカトンボは、昨年は一箇所でしか見なかったので、今年は短いスケジュールの中、無理にこの
トンボのために時間を確保しておいた。しかし初日、島に到着して早くも40分後に発見。その後も
別の湿地で複数を見かけ、スケジールが随分楽になった。ウミアカトンボは近年、沖縄本島にも出没
しているらしいので、絶賛分布拡大中、と言いたいところだが、移動性が強い種は、ある日こつ然と
姿を消すことも多々あるので、次に訪れた時に出会える保証はない。

逆に少なかったのがこのトンボ

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ヒメキトンボ雄

昨年、何匹も飛び交っていた池には、今年は僅か二匹。しかも数が少ないからか異様に敏感で、滝の
ように汗をかきながら散々追い回した挙げ句、ひとつ手にするのがやっとだった。
昨年は全て未熟な個体だったが、今回手にした個体は成熟した雄。やはり未熟な状態とは雰囲気が全
く違う。発生ピークを過ぎてしまった、ということなのかもしれない。

こうして見ると、いつ訪れても沢山見るのはヒメハネビロトンボとオキナワチョウトンボ、あとはア
オビタイトンボ、コシブトトンボくらいだろうか。
不安定要素が多いので一喜一憂するのだが、行くたびに何が出るか分からないことが、南方遠征を止
められない原因のひとつだと思う。











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# by brunneus | 2017-07-08 23:33 | 沖縄 | Comments(0)