トンボの日々

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カテゴリ:長野( 25 )


2016年 10月 15日

陽炎

先月末の長野でのこと。
キトンボの産卵が一段落したので、池の畔の木陰で休んでいると、すぐ近くでチッチゼミの鳴く音がし
た。音は背後から響いている。視線を走らせてみると、すぐ後ろの草の上に黒い虫影が。

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チッチゼミ雄
奄美以北では最も小型になる北方系のセミで、横から見ると後翅の縁が上に飛び出るのが大きな特徴。

チッチゼミはモズの高鳴きと共に、秋の高原になくてはならない音の風景だが、いつもその音は、樹上
や遠くで陽炎のように響いて掴み所がない。
たまに近い距離で鳴いていて、本体を突き止めようと梢を凝視するが、音源に近づいたと思えば遠ざか
り、移動したかと思えばまた元の位置から響く。「ジッジッジッ」または「ビッビッビッ」(チッチッとは決
して聞こえない)という脳天に突き刺さる音は、不規則に空間を伝播するのだ。近付けば遠ざかる、まさ
に陽炎。

勝手なイメージだが、ハルゼミ類、エゾゼミ類、ヒグラシ類とこのセミは、基本的に木の高い位置で鳴
くので、捕まえるのが難しいグループだ。
調べてみると、チッチゼミは時々地上の草などで鳴くこともあるらしいが、実際にその状態を見るのは
初めて。次に見られるのはいつになるか分からないので、その姿をしっかり目に焼き付けた。

長野の秋は足早に過ぎ去る。今頃は虫の音も絶え、静かな風景が広がっていることだろう。






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by brunneus | 2016-10-15 11:30 | 長野 | Comments(0)
2016年 10月 02日

終わりよければ

長野のオオルリボシポイントにキトンボが多産するのを知ったのは、確か2年前。今年はオオルリボシ
は芳しくなかったが、キトンボはどうだろう。
秋の長雨の晴れ間、思い切って訪れてみた。

現地到着は午前10時。
池の畔に立ち、竿の準備をしていると、さっそくオレンジ色の連結体が足元の水面を打つ。

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このペアを皮切りに、正午過ぎにかけて一帯の池は、キトンボ産卵のお祭り騒ぎとなった。
撮影はできなかったが、キトンボ雄とネキトンボ雌の組み合わせのペアもふたつ混じっていた。このポ
イントではネキトンボを見たことがない。どこに潜んでいたのだろう。
異種のペアを良く観察すると、正常なキトンボのペアのように、一度打水してから大きく身体を前方に
振る、という行動をしている。しかしネキトンボの産卵は単純な打水のはずだ。もちろん異種のペアで
は、ネキトンボの方は全くやる気がなく、雄に振り回されているだけ。ということは、「打水してから
身体を前方に振る」というキトンボの一連の産卵動作は、雌だけではなく、雄もはっきりと意識して行
っているのだろうか、、。

そんなことを考えているうちに午後になりキトンボ産卵は下火に。時々飛来する雌が、ライバルが減っ
た雄の警護飛翔付きの単独産卵に切り替えるようになっていた。

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安物のコンデジでもじっくりと撮影できるほどの個体数。
関東地方の池でも、かつては至る所でこのような光景が繰り広げられていたのだろう。

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この日の天候は不安定で、ちょうどキトンボの産卵時間だけ日差しが出る、という幸運だった。
前回殆ど姿が見られなかったオオルリボシヤンマ雌も、今回は数頭の産卵が見られ、ここでは偶産種で
あるマダラヤンマを、今回も見ることができた。

撮影に不満で撮り直そうと思っていた、真紅に染まるコノシメトンボ雄を手にしつつ、早めに帰宅。
今年の長野は不作だったが、雄大な風景に抱かれてトンボと戯れる素晴らしい一日を、最後に過ごせて
非常に満足。終わり良ければ全て良し。

残り僅かなシーズンの日々を、地元のトンボを静かに観察して終わる心の準備ができた。







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by brunneus | 2016-10-02 01:13 | 長野 | Comments(0)
2016年 09月 10日

二連敗

一週間前の状況が信じられなくて、再び長野へ行った。

結果は、オオルリボシヤンマの雄の個体数は増えていたが、雌が相変わらず少ない。晴天で気温も高い
状態で雌がやって来ないのは不可解だ。仮に冬に水抜きされたり、水草を抜かれたりされたとしても、
他の地域から充分な数の個体が飛来するはずで、移動するのにちょうど良い池も周囲にある。何より雄
がいつも通り飛んでいるのに、雌だけが見られない理由がわからない。産卵基質はいくらでもあるのだ。

早々にポイントを後にし、メガネサナエの川へ。ここに初めて来た時は、その個体数の多さに感激した
のだが、近年めっきり数を減らした。情報を集めてみると、近隣の川では数が減っているようなことは
無いようなので、何らかの変化があり、この川のポイント力が失われつつあるのかも知れない。また新
たな場所をさがさねばならない時期に来ている、ということだろう。この日も、散々歩いて雄がひとつ、
という状態だった。
もっとも、メガネサナエの時期はもう末期なので、少なかった理由はそのせいもあると思う。

この日採集した3種。

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上左:メガネサナエ雄 上右:ミヤマサナエ雄 下:マダラヤンマ雄

数年ぶりに、このポイントでマダラヤンマを手にできたことが、唯一の救いとなった。

長野は良い印象しかなかったのだが、こう負けが続くと、今後は足が遠のいてしまいそうだ。








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by brunneus | 2016-09-10 00:03 | 長野 | Comments(0)
2016年 09月 04日

完敗

昨日。
お馴染み同好Aさん、その息子さんのMくんと、初秋の長野へ行ってきた。
関東は悪天だが、長野は晴れとの予報を確認しての決行、現地へ着くと、目論見通りの晴天。

結果は、狙いのトンボはほぼ皆無だった。
晴天で気温も高く、環境の変化も一見すると、無い。天候関連のマイナスの要素が思い当たらない。強
いて言えば、若干風が強いくらいか。

成果は必ずある、と確信しての現地入りだったが、自然界に「確実」は無い、ということを思い知らさ
れた。

この日の採集2種。

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左:オオルリボシヤンマ雄 右:アキアカネ雌

翅斑が発達したアキアカネが今年も採れた。

トンボは不発だったが、爽やかな長野の空気を思い切り吸い込んでリフレッシュできた。
そして、自然が貧しい幼少時代を過ごした身としては、日々素晴らしい体験を積み重ねているMくんが
羨ましい。20年後には、今日という日はどんなふうにMくんの記憶に刻まれているのだろう。

現地にはもう一度行ってみるつもりだが、果たして状況は良くなっているのだろうか。










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by brunneus | 2016-09-04 23:22 | 長野 | Comments(2)
2015年 10月 08日

もう一度

10月を過ぎる頃になると、関東南部では急激にトンボが減ってゆく。
夏に我がもの顔で谷津を飛び回っていたオニヤンマの姿は既に無く、そこにあるのは「プー・・」と寂
しげに響くケラの声と、枯れ草にぽつんと止まるくたびれたアキアカネ。ついこの間まで、夕暮れ時に
賑やかに飛んでいたヤンマたちはどこに行ったのだろう。

要は、進む季節に気持ちが置き去りにされているのだ。毎年のことではあるが、否応無しに寂しい気持
にさせられるこの季節が、どうも苦手だ。

日曜日。季節の終わりにトンボが飛び交う光景がもう一度見たくて、再び長野を訪れてみた。

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瑞々しい空気、頬を渡る冷たい風

頭上を飛び交うオオルリボシヤンマの雄と、足元には産卵する雌

キトンボの鮮やかなオレンジ色の残像

西日が眩しい

この日最後の太陽に輝く黄金の稲穂


三週間振りに訪れた高原の池は、今回も沢山のトンボで溢れ返っていた。
池の標高は900m。関東南部よりずっと季節の進行は早いはずだが、やはり環境のスケールが違う。
黄昏のトンボの楽園は、永遠に続くかのように賑わっていた。

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さすがにオオルリボシヤンマは擦れた個体が多かったが、まだまだ新鮮な個体も混じる。そしてキトン
ボはちょうどピークを迎えた頃合いだったようだ。

晩秋の使者、キトンボを手にしたことで、寒く長い冬を迎える心の準備が出来た。
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by brunneus | 2015-10-08 02:32 | 長野 | Comments(0)
2015年 09月 20日

違和感

この1枚の画像から漂う違和感。

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秋のヤンマであるオオルリボシヤンマと、春のヤンマであるクロスジギンヤンマが並んでいる。
両種ともに先日の長野で手にしたものだ。

クロスジギンヤンマは基本的には春のヤンマで、平地では7月には殆ど見られなくなる。ところが、山
間部や寒冷地では秋にもぽつぽつ姿が見られることがある。
これらの水温が低い地域では、春から断続的に発生が続いているのか、春と秋に二化するのかは分から
ない。いずれにしても、秋風が吹き抜ける高原で、オオルリボシヤンマの下をせかせか飛び回るこのヤ
ンマを見ると、一瞬、その場所だけ季節感が希薄になる。

そしてこの時期疑わしいのは、ギンヤンマとのハイブリッドである通称スジボソギンヤンマだ。この時
も淡い期待に色めき立ち、必死に追い回して手にしてみたが、どこからどう見てもクロスジギンヤンマ。

春に出現するヤンマで大型種はクロスジギンしかいないので比較対象がないが、こうしてオオルリボシ
と並べてみると、体型の違いが一目瞭然。やはり狭い空間をせせこましく飛ぶクロスジは翅が短く、
広々とした空間を悠然と飛ぶオオルリボシは、翅が幅広く長い。環境、習性による翼の形状の法則は鳥
類に顕著だが、個人的にはトンボにも当てはまると思っている。

秋の高原ならではの違和感をじっくりと味わう日々。
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by brunneus | 2015-09-20 14:29 | 長野 | Comments(0)
2015年 09月 16日

脱出

8月下旬から嫌らしく延々と続いた長雨から、やっと抜け出せたのは9月も中旬。
この間に出会いたかったトンボのシーズンは虚しく過ぎ去ってしまった。

次の晴れ間に行く場所は、長野の高原に決めていた。早朝に家を出て、オオルリボシヤンマの産卵時間
に間に合うようにスケジュールを組む。

しかしここで再び今年のお決まりパターン。
週間予報では晴れだったが、日を追うごとに太陽マークが減ってゆき、前日にはついに傘マークが、、。
だが他に候補日もないので、気乗りしないが、仕方なく電車に乗り込んだ。

現地の天候はこの状態。
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肌寒く雲が多いが、幸いなことに、時おり日差しがある。思ったより状況は良いようだ。水面上を旋回
する青白いヤンマの影を見て、一安心する。

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オオルリボシヤンマは、昨年並みに発生しているようだった。時期が早いのか、日照の関係か、マダラ
ヤンマは見られなかったが、次々に産卵に訪れるオオルリボシ雌を追い回す時間を堪能できた。

ところで、画像の雄は、ちょっと変わった個体だ。成熟した雄に特有なはずの鮮やかな青色の複眼では
なく、ダークグレーを帯びている。

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他の雄と同じように縄張りを張っていたので成熟していると思うのだが、未熟個体のような色が残った
個体は初めて見た。


このポイントは数年前に発見した場所だが、同業者はいないし、何より爽やかな高原の風が心地よい、
お気に入りの場所だ。
機会があれば、快晴の日にまた訪れてみたい。
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by brunneus | 2015-09-16 01:29 | 長野 | Comments(0)
2015年 08月 26日

高原の虫

先日の長野遠征。

トンボ以外で出会った虫たち。


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エゾゼミ雌

夏の高原のカラマツの梢から降ってくる、野太い軋むような声。木の高い部分で鳴くので、声はすれど
なかなか手に取ることができない。鳴いている個体が止まる木を蹴ると落下するというが、何度試して
も落ちてきたことがない。
指をくわえて梢を見上げるよりも、何かの拍子に道端に落ちている個体を拾う方が効率がいいかも知れ
ない。

今までの経験では、真っ昼間よりも、朝や霧雨などの低温時に落下個体を見る機会が多い気がする。
毎年、高原に行く度に探すのだが、タイミングが悪いのか、ここ数年は古い死骸を見るのみだった。


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ホソクビツユムシ雄

路傍の樹上から突然響く、尻上がりのユーモラスな声の正体。この虫も樹上性なのでなかなか採集する
機会がない。高原では時々声を聴くが、主はいつも遥か頭上。どうやって採ればいいのか見当もつかな
かった。
今回は、たまたま道沿いの低木で鳴いている個体を手にすることができた。短胴と長い脚は、ツユムシ
というよりクモを彷彿とさせる。



日向にある花をスイーピングしたときに、ネットに紛れ込んでいた小さな直翅。

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ムサシセモンササキリモドキ雌

この種をはじめとするササキリモドキ類はどれも樹上性で、移動力に乏しいせいか、地域ごとの種分化
が著しいミステリアスなグループだ。
都内の山ではセスジササキリモドキとヒメツユムシがお馴染みだが、遠方でもし見かけたら採集すると
決めていた。
図鑑によると、ムサシセモンは関東地方から中国地方、九州に広く分布するらしい。冷温帯落葉樹林に
生息する、とあるので、長野の高原ならではの種といえるかも知れない。

高原の昆虫には、特別な思い入れがある。
幼い頃、よく避暑に八ヶ岳山麓を家族で訪れていた。そこで目にする虫たちは、新宿育ちにとって何も
かも新鮮で、ダイナミックな山岳風景と共に、子供心を鷲掴みにしたのだった。

冷たい山風と、スケールの大きな自然。
手にした虫たちを眺めながら、幼い頃の記憶を反芻する。
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by brunneus | 2015-08-26 14:47 | 長野 | Comments(2)
2015年 08月 23日

晩夏の長野

先日。
おなじみ同好Aさんと、長野の湿原へ行ってきた。狙いのトンボは設定はしてあるが、時期的にはもう
遅い、ということなので、あまり期待はせずに高層湿原のトンボを楽しむつもりで現地へ。

ポイントはこういう環境。

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トンボ好きからすると、涎が出るほど良い環境だ。
しかし天気がいまひとつなせいか、トンボの飛びは鈍い。それでもいくつかの成果はあった。

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ルリボシヤンマ雌

昨年、都内周辺であれだけ探しても出会わなかったルリボシ雌が、足元から次々に飛び出す。本場の底
力を実感。

少ないながらも、お決まりのこのトンボも。

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オオルリボシヤンマ雄

不思議なことに、オオルリボシ雌の産卵が殆ど見られなかった。環境的にはルリボシヤンマの環境では
あるが、経験的にはこういう湿地でもオオルリボシは産卵に来るのだが、、。
両種共に、雄の縄張りも不活発だったので、日が悪かった、ということなのかもしれない。

その後に移動したメガネサナエのポイントは、あまり芳しくない状態。ここはまた訪れる必要がありそ
うだ。

カラマツの爽やかな香りと、その梢から降るエゾゼミの幾重にも重なる声。久々に爽やかな山の空気を
満喫できて充実。
今回も、Aさんの長時間の運転に感謝!
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by brunneus | 2015-08-23 22:29 | 長野 | Comments(4)
2015年 06月 21日

副産物

先日の長野遠征の副産物。

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オオヤマトンボ雌

オオヤマトンボは東京周辺では珍しくもないトンボだが、雌にはなかなか出会えない。
かと言って、雌を狙って一日中オオヤマトンボしかいない池に張り付こうとも思わないので、今までの
キャリアでも出会った回数は数えるほどしかない。

先日のオオトラフの池では、産卵するオオヤマトンボを複数回目撃した。この個体は運良く目の前で産
卵してくれたので、手にすることができた。
オオヤマトンボの雌の産卵は手強い。コヤマトンボと違って決まったゾーンで往復するようなことはせ
ず、広い範囲で滅茶苦茶に飛び回って打水する。
とても追いかけることなどできないので、運良く目の前に来てくれるのを待つしかないのだ。

未熟な雌は二年前に採っているが、成熟した雌は久々だ。
図鑑用の思わぬ副産物が採れて一安心。
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by brunneus | 2015-06-21 15:30 | 長野 | Comments(0)