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2010年 07月 28日

ネアカオニヤンマ

などという名のトンボはもちろん存在しないが、
そう呼びたくなるものがいる。

オニヤンマ雌:体長110mm
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画像ではわかりにくいが、未熟な雌は翅の根元から前縁に沿って、
淡い橙色の帯が発現するのだ。
しかし、成熟するとこの帯は消失し、何の変哲もない透明な翅に変わってしまう。
だが、八重山に分布する個体群の雌は、成熟しても鮮やかな橙色が残る。
こちらが真の「ネアカオニヤンマ」かもしれない。

7月の中旬。
この橙色の帯を持つ大きなシルエットが、谷間の開放空間の上空を悠然と旋回している光景は、
南方のミナミヤンマ類を連想させて、ぐっと来るものがある。
飛び方が、カラスヤンマやミナミヤンマにそっくりなのだ。思わず竿を伸ばしてしまう。

あまりにも普通種で、普段は巨大な体が飛び回っていても意識に入ってくることはまず無いし、
採ろうとも思わないが、未熟期だけは、魅力的なトンボに変身する。
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by brunneus | 2010-07-28 23:45 | 神奈川 | Comments(0)
2010年 07月 28日

異次元ポケット2010

火曜日の午後。
八王子の職場での休憩時間。
射るような日差しを背中に感じながら、購買から部屋に戻る途中。
北向きの日当たりの良い階段に足をかけた瞬間、足元にオナガサナエが止まっているのが
目に飛び込んできた。
オナガサナエはこの敷地で夏の始めにしばしば見かける。
暑い昼下がりに、植栽ケヤキの梢に止まり、ぱっと飛び立っては小虫を捕まえたり、
駐輪場の自転車のサドルに止まっていたりする。

ここから一番近い産地と思われる場所は、北へ数キロの浅川。
恐らく、この職場の、浅川に向けて開放的に開けた空間が、
半成熟個体の良き休憩所になっているのだろう。

いつかは捕まえてやろうと思っていたが、なかなかすばしこく、
素手ではとても捕えられそうにない。

しかし、今日はあっさりと手の中に収まってしまった。
指にサナエを挟んでいそいそと部屋へ戻ろうと、歩き出して数10m。
また足元にオナガサナエが、、。
この個体も、近寄ってもびくともせず、踏んずけられて死んでいるのかと思いきや、
摘むと元気に暴れた。

二匹のサナエを指にそっと挟み、何喰わぬ顔で部屋に戻り、即席三角紙で包む。

久々に、異次元ポケット的出会いに遭遇できた。

オナガサナエ雄:体長55mm
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このサナエの密かな特徴は複眼。
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成熟した雄の複眼の下半分が青味を帯びるのだ。
緑色の複眼が大半のサナエの中では、この青色は異彩を放つ。
標本では再現不可能の、束の間の輝き。
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by brunneus | 2010-07-28 23:27 | 東京 | Comments(0)
2010年 07月 28日

ふるわない

最近、隙をみては、ちょくちょく川崎市のマルタンヤンマポイントへ通っているが、どうも調子が悪い。

行くといつも強風で、森全体が唸っているのだ。
去年も強風の時もあったが、今年は風が強い日が多過ぎる気がする。

こうなると、谷を我が物顔で飛び回るオニヤンマですら少ない。
ごうごうと風が鳴る中、ぼーっと空間を見つめ、時間が過ぎていく。

今日も様子見に行ったのだが、マルタンの雄はついに一回も姿を見せなかった。


うーん、これは嫌な展開になりそうだ、、。
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by brunneus | 2010-07-28 21:09 | Comments(2)
2010年 07月 26日

カマキリのような

昆虫の複眼の仕組みで、図鑑などでよく例に出されるのが、カマキリ。
昼間は明るい緑色をしているが、夜は黒色に変化する。
これは暗闇でも僅かな光をより多く複眼内に吸収するため、と言われている。

こんな特殊能力はカマキリだけ、と思われがちだが、
実は夜に活動するキリギリス類の多くは、カマキリ同様に複眼の色が変化する。
ただ、彼等の複眼はゴマ粒みたいに小さいので、目立たないだけだ。

そして、大きな複眼が売り物の、トンボ類にも同じ特技を持ったものがいる。

例えばネアカヨシヤンマ。
先の記事にも書いたが、このヤンマは日中にも活動はするが、最も活発に飛び回るのは
朝夕の薄暗い時間帯。

明るい時には、複眼はこんな色。
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そして日が暮れると、こうなる。
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このほかに、ヤブヤンマ、マルタンヤンマ、カトリヤンマなど、朝夕に活動するトンボにこのタイプが多い。

こういうタイプは、標本写真を撮るときに困ってしまう。
黒い状態だと、本来の複眼の色が表現できないからだ。
採集した時間は大概黄昏時。どれも複眼は真っ黒だ。

そこで、撮影するときは、トンボを明るいライトの近くにしばらく置いておく。
こうすることによって、本来の色を蘇らせてから、シャッターを切るのだ。
手間はかかるが、今の所、こうするより仕方ない。

そしてまだまだ撮影待ちが控えている、、、。
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by brunneus | 2010-07-26 00:51 | つぶやき | Comments(0)
2010年 07月 23日

ヤブさん

この時期の黄昏の主役は、ヤブヤンマ。
茜色に染まる谷津の上を、すらりとしたシルエットが優雅に舞う。

成虫はヤンマ科の中では最大級の大きさの部類に入るくせに、
バスダブ程度の水たまりでも、ヤゴが生育できる。
同じような環境に棲息するクロスジギンヤンマやマルタンヤンマなどと共に、
都市環境に順応したヤンマといえる。

ヤブヤンマ雄:体長88mm
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よく見ると、なかなかお洒落な配色、複眼も美しい。
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ヤンマ科の中でも、美麗種に入れてもいいくらいだ。
しかし、黄昏の谷津でネットに入ると、なぜかがっかりしてしまう。
数が多いせいもあるが、どことなく全身の雰囲気が粗雑というか、
繊細さが感じられないせいもあるかもしれない。

まあ、当のヤブヤンマにしてみれば、大きなお世話もいい所だが、、。
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by brunneus | 2010-07-23 04:58 | 神奈川 | Comments(0)
2010年 07月 21日

トンボの視界

アオヤンマやネアカヨシヤンマは、雌雄でほとんど色彩が変わらない。
その他にも、色彩が雌雄で変化がないトンボは結構いる。

特に、サナエトンボ類は殆どが雌雄同色だ。そしてエゾトンボ科も雌雄同色が多い。
雌雄の色彩異化が最も進んでいるのは、トンボ科だろう。
ヤンマ科は、ミルンヤンマ属、サラサヤンマ属、コシボソヤンマ属、ギンヤンマ属、アオヤンマ属などが、
雌雄同色の種が多いグループだ。
いっぽう、マルタンヤンマ、ヤブヤンマなど、雌雄で全く色彩が異なる種も多い。

色彩が違う、ということは、視覚が発達している証拠。
人間と同じような色世界が見えているかは疑問だが、とにかく、色彩で雌雄のコミュニケーションをとっていることは間違いない。

たとえばマルタンヤンマ

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雄(上)は目の覚めるような鮮やかなブルーの複眼と、体斑を持つ。
雌(下)は深い飴色を帯びた、なんともいえない褐色系の複眼と若草色の体斑。

しかしこのヤンマは、朝夕の薄明薄暮時にしか飛ばない。
晴天の日照下ならいざ知らず、薄暗い中で、この鮮やかな体斑は、はたしてどれくらい効果があるのか、
ちょっと疑問だ。

ほんとうのことは、マルタンヤンマにインタビューしてみるしかない。
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by brunneus | 2010-07-21 01:15 | つぶやき | Comments(0)
2010年 07月 20日

近くて遠い

アオヤンマとネアカヨシヤンマは、同じ「Aeschnophlebia」という属に分類されている。
いわば親戚同士の、近い仲間だ。

しかし実際この2種は大きく外見が異なり、野外でもまず見間違うことはない。
全身は前記事参照だが、今回着目したいのは、頭部。

アオヤンマ雄頭部背面
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ネアカヨシヤンマ雌頭部背面
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まずこの角度から見ると、左右の複眼の接点(縫合線)が、
アオヤンマよりネアカヨシヤンマのほうが長い。
つまり、複眼がネアカヨシヤンマの方が大きい、ということになる。

アオヤンマ雄頭部側面
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ネアカヨシヤンマ雌頭部側面
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この角度からは、複眼後縁の膨らみを見てみる。
アオヤンマは、この膨らみが大きく張り出すので、全体が丸みを帯びて見える。
一方、ネアカヨシヤンマは膨らみが小さく、全体がやや角張って見える。

複眼が大きいということは、一般的な昆虫のルールに当てはめると、
暗い環境でも物が良く見える、ということ。

確かに、アオヤンマより、ネアカヨシヤンマの方が暗い場所を好み、
朝夕の薄明薄暮時に最も活発に飛翔する。

体の色に関しても、アオヤンマの鮮やかな緑色は、日中、アシ原の中で過ごすときに
有効な保護色となるだろう。
ネアカヨシヤンマが暗い体色をしているのは、薄暗い時間帯に飛ぶからだろうか。


うだるような灼熱の午後は、冷房をフル運転させた快適な部屋で、標本を引っ張りだしてきて、
こんな些細な差異を発見しては、あれこれ妄想しているのです。
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by brunneus | 2010-07-20 01:15 | Comments(0)
2010年 07月 19日

低湿地のヤンマ2種

二度目の千葉。
やっとネアカヨシヤンマに出会えた。

このポイントには、アオヤンマも見られる。
両種共に、図鑑では「背の高い挺水植物が繁茂する池沼に棲息する」と書かれていることが多い。
しかし実際は、微妙に棲み分けている。

アオヤンマは水深がやや深い部分。
ネアカヨシヤンマは水深が浅く、殆ど干上がったような部分を好む。

なので、アオヤンマの棲息地にはネアカヨシヤンマが同時に見られることが多いが、
その逆は無い。つまり、関東近県では、アオヤンマの方が、産地が限られるのである。
棲息環境ではアオヤンマが群れて飛んでいるので、数が多いと錯覚しがちだ。
しかし、これは少なくなった棲息環境に、多数の個体が集まった結果なのではないか、
と思う。

遥か江戸の時代。
東京湾岸に広大な低湿地が広がっていた時代。
この2種のヤンマは、広く浅く分布していたに違いない。

アオヤンマ雄:体長73mm
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ネアカヨシヤンマ雌:体長80mm
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by brunneus | 2010-07-19 03:13 | 千葉 | Comments(0)
2010年 07月 16日

黄昏の貴公子

7月上旬。
千葉のネアカヨシヤンマの湿地へ。
半袖でも涼しいほど気温が低く、狙いのネアカは鳴かず飛ばずだったが、
かわりにやってきたのがこれ。

マルタンヤンマ雄:体長74mm
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マルタンヤンマ雌:体長78mm
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今年の初物。
このヤンマは、雄雌共に、ほんとうに美しいと思う。
トンボ屋の多くがそうであるように、僕がトンボにのめり込むきっかけになったヤンマだ。

こんなに美しいので、さぞかし珍しいのかとおもいきや、都内にも広く浅く棲息している。
棲息に広い水面を必要としないので、
クロスジギンヤンマと共に、住宅が過密な都市部にもよく適応しているヤンマだ。
姿が見られないのは、朝夕の限られた時間しか飛ばないため。
どこにでもいるので、採ろうと思えば採れる、と言いたい所だが、実際は難しい。

近隣の住民が夕涼みに憩う脇で、長い竿と巨大なネットを振り回すことなんて、
とてもじゃないけど出来ないからだ。
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by brunneus | 2010-07-16 04:00 | 千葉 | Comments(2)
2010年 07月 12日

タイミング

6月の記録から。

サラサヤンマを求めて、3回目の青梅の谷津。
前2回は、到着したとたんに悪天となり、サラサを殆ど見ることができなかった。
三度目の正直で、好天の下ポイントへ入ったが、雄はそこそこ見られるものの、
今回の目的、雌の産卵時間になっても一向にそれらしい姿は見えない。

そして時間切れ。
数年振りに、サラサ雌ゼロの年になってしまった。

千葉のトラフトンボの産地では、ポイント入りしたすぐ後日にM氏が入り、
サラサ雌を沢山見ている。
埼玉のサナエトンボの川近くのサラサポイントは、訪れたときは激しいブッシュに行く手を阻まれ、
ポイントに入ることさえできない。
翌日に入ったM氏によると、草刈りがしてあって、楽に入れたという。

なんというタイミングの悪さ!!

サラサヤンマ雄:体長56mm
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そしてこのヤンマの特徴、腰の部分の★(星)印。
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まあ、今年もなんとか青梅の谷津が存続していたことだけでも、良しとしよう。
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by brunneus | 2010-07-12 00:32 | 東京 | Comments(2)