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2011年 07月 28日

関東の暗闇系


Q.黄昏活動性があるトンボで、最も遅い(暗い)時間まで飛ぶ種類は?

A.コシボソヤンマ

こう答えたいくらい、このヤンマには暗がりが似合う。

コシボソヤンマ雄:体長80mm
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先日行った旧知のマルタンヤンマのポイントは、
コシボソヤンマの多産地でもあるのだが、
ポイントに到着した時は、まだ流れの上にその姿はなかった。
マルタンが終わり、あたりの見通しが悪くなって急ぎ足で来た道を戻る途中、
足元に気配を感じてよく目を凝らしてみると、何か半透明の黒い物体がせわしなく移動している。
もしやと思い、気配のするあたりの暗闇に見当を付けてネットを振ってみた。
カサッという微かな音とともに手応えがあり、中を覗いてみると、
やっぱりコシボソヤンマがそこにいた。

もうあたりは真っ暗で、空にはほのかに夕方の名残がある程度。
完全に懐中電灯がないと歩けないほどの明るさだが、
まさかこんなに暗い時間に飛ぶとは思わなかった。
手にした個体はまだ身体が軽い未熟個体。
未熟な個体は、捕食者から身をまもるためにこういった暗闇を選んでいるのかもしれない。

北米大陸には、「Phantom Darner」(幽霊ヤンマ)という種がいて、
生態は知るすべもないが、名前からすると
やはり薄暗い場所を幽霊のようにゆらゆらと飛ぶのだろう。
コシボソヤンマも、まさに幽霊ヤンマの名前にふさわしいと思う。
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by brunneus | 2011-07-28 16:58 | 神奈川 | Comments(2)
2011年 07月 28日

木陰の普通種

台風は去ったものの、台風以前とはすっかり天気が変わってしまった。
どんよりと曇り、気温は低いが蒸し暑い。
蒸し暑いのはいいが、黄昏時に飛ぶヤンマが活動する夕方になると、
決まって天気が崩れるのが痛手だ。

千葉に遠征に行きたいが、こう不安定な天気だと、
なかなか踏ん切りがつかない。延々3時間もかけて雨に降られたときには、
泣くに泣けないからだ。

そんなわけで、リスクが少ない近場のマルタンヤンマを地道に追っているが、
あまり芳しくない。

すっきりしない灰色の空を、ぽつんとヤブヤンマが飛ぶ。

ヤブヤンマ雄:体長83mm
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ヤブヤンマは平地に棲むヤンマの中では最大級の大きさだが、
幼虫が棲むのは、林の中の水たまりや、コンクリートの小さな貯水槽などの
みみっちい貧弱な水域。
あんな餌も少ないような水辺から、よくこんなに大きなトンボが成長できるものだ。

その小回りが効く生息環境を最大限に活かし、東京都内では幅をきかせている。
平地のヤンマと言えばギンヤンマが真っ先に思い起こされるが、
ヤブヤンマはギンヤンマが棲めないような小さな水域をネットワークとして、
ギンヤンマを凌ぐ繁栄を手にしている。

しかしギンヤンマより目立たないのは、昼間にはめったに飛ばないため。
薄暗い水辺を影のように密やかに飛ぶので、気付かれることはまずない。

狙いのマルタンヤンマが不発に終わっても、ヤブヤンマだけは必ず姿を見せる。
この「神経の図太さ」も繁栄の原因かもしれない。
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by brunneus | 2011-07-28 04:14 | 神奈川 | Comments(0)
2011年 07月 26日

定点観測

JR国立駅から南に伸びる大学通り。
駅から一橋大学の先までの数百メートルほどを毎日歩いている。

この区間は商店街で、歩道にはタイルが敷かれ、
買い物客が店を物色しながら、
のんびり歩くのには都合の良いつくりになっている。
西友があり、吉野家があり、マックがあり、スタバがあり、エクセルがあり、
本屋があり、お得意相手のブティックや床屋がある。
休日には買い物客で若干賑わう。
まあ、どこにでもある普通の商店街だ。

引っ越してきて何年か経つが、
毎日この通りを歩くうち、他の街と違うことに気付いた。

それはムシが多いということ。
正確には、昆虫相が豊かである、ということになる。

これまでに大学通りの数百メートルの間に見かけた昆虫をざっと挙げてみる。

○チョウ
クロアゲハ
カラスアゲハ
ナミアゲハ
モンシロチョウ
キタキチョウ
ヤマトシジミ
アカボシゴマダラ
アサギマダラ
ツマグロヒョウモン
イチモンジセセリ

○トンボ
オナガサナエ
オオシオカラトンボ
アキアカネ
コシアキトンボ
ウスバキトンボ

○バッタ、キリギリス
セスジツユムシ
クビキリギス
クサキリ
ハヤシノウマオイ
ヤブキリ
アオマツムシ
エンマコオロギ
コカマキリ
ハラビロカマキリ

○セミ
ニイニイゼミ
ミンミンゼミ
アブラゼミ
ツクツクボウシ
ヒグラシ

○コウチュウ
カナブン
シロテンハナムグリ
カブトムシ
コクワガタ
ノコギリクワガタ
コフキコガネ
アオドウガネ
スジコガネ
セマダラコガネ
オオキイロコガネ
ビロウドコガネ
クワカミキリ
ウバタマムシ
アオオサムシ

はっきりと種を認識できたものだけでも、こんな感じだろうか。
これらは、昆虫を探す、という目的で発見したものではなく、
あくまで通勤時に「普通に歩いて」見かけたものだ。
他にも、同定に自信がないチョウやガ、
殆ど認識できていないハチ、アブ、ハエ、アリなどを含めると、
ちゃんと調べれば、恐らくこの数十倍の数になるだろう。

しかし、ここで言いたいのは数ではなく、その内容だ。

注目種は、
オナガサナエ、カブトムシ、ノコギリクワガタ、オオキイロコガネ、
クワカミキリ、ウバタマムシ、ヤブキリ、ハヤシノウマオイ。

これらの昆虫は、普通に考えれば、
東京の平地の駅前商店街に出現することは考えられないものばかりだ。
特徴としては、状態の良い森林に棲むものが多い、ということが言える。

国立駅周辺で森林といえば、一橋大学のキャンパス。
武蔵野の面影を僅かに残した林が広がるが、それほど広い面積ではない。

注目種の中で、
オオキイロコガネとノコギリクワガタの発生源としては、このエリアが考えられるが、
実際には、大学から離れた駅寄りの商店の店先に落ちていることが多い。
通りには並木があるが樹種はサクラとイチョウで、これらの昆虫とはあまり縁がない木だ。

彼らはどこで発生しているのだろうか。

ウバタマムシは、大学脇の駐輪場のアカマツ。
オナガサナエは恐らく未熟個体で、遥か南の多摩川からの飛来。
カブトムシやヤブキリ、ハヤシノウマオイは郊外の里山の昆虫というイメージで、街中ではめったに見られないが、
比較的小さな環境でも世代を維持できるので、まあ納得はできる。
クワカミキリは一回しか確認していない。


そして昨日。
今年も大学通り西側、ツルハドラッグの前でノコギリクワガタの雌を拾った。
そして今日は東側のモスバーガーの前で大きな雄の死骸を見た。

未だに彼らの発生源のてががりは掴めず、
ただ目の前に落ちている、という事実を受け入れるしかない。

しかし、日常の生活空間のすぐそばに、
奥深い異次元の自然世界が潜んでいるようで、
そう考えると楽しくなってくる。
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by brunneus | 2011-07-26 08:57 | Comments(0)
2011年 07月 23日

まとめ

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今回は、かつてなく早い梅雨明けの後の遠征となった。
この地域のトンボは、だいたい梅雨開け一週間がベストとされている。
あまり晴天が続いてしまうと空気中の湿度が失われ、
湿気を好む昆虫の活動が鈍ってしまうからだ。

今回の遠征に関しては、当初予定していた日に台風が襲来。
その一週間後の出発だったので、梅雨明けして時間が経っていたものの、
適度に湿度が戻って、森が良い状態になっているのではないか、と踏んだのだ。

しかし、現実は厳しいものだった。
過去の記録を見返しても、晴天が続いても、オナワミナミヤンマは見られずとも、
カラスヤンマや、水田に棲む平地性のトンボは問題なく見られたが、
今回はカラスヤンマはおろか、平地性のトンボまでもが激減した状態だった。

海沿いの水田地帯では、過去には
ハネビロトンボ、アオビタイトンボ、オキナワチョウトンボは確実に見られたものだが、
今年はゼロ。例年、数は少ないものの、必ず見られるオオハラビロトンボも見られなかった。

なんというか、地域全体のトンボが少ない、という印象だ。
たまたま日が悪かったのか、台風の影響か、梅雨明けが早まって、
生殖活動期が短くなってしまったのか、、、。

他のブログを見ていると、梅雨の期間にはカラスヤンマは多く見られたという。
そこから推測すると、トンボの発生量自体は例年とそれほど変わらないのかもしれない。
とすると、やはり梅雨明けや台風の影響なのだろうか。

とにかく、どんな時でも必ず見られたはずの、
ハネビロトンボ、アオビタイトンボ、オキナワチョウトンボが見られなかった、というのは、
初めてのことだ。

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いっぽうで、今回の最大目標であるオキナワミナミヤンマにペアで出会えたことや、
いつになくアメイロトンボが多かったことなど、収穫も少なからずあったことも事実。

トンボではないが、今回の遠征を可能にしてくれた、スカイマークの午後10時羽田発、
深夜に現地着、というマニアックな格安便に助けられたところも大きい。

毎回思うが、遠征は現地に到着するまで分からない、出たとこ勝負。
当たりも外れもある。
痛いほどの強烈な直射日光でぼうっとふやけた脳みそをフル回転させ、
眩しい亜熱帯の空を睨み、トンボの影を全力で追いかける。
出会えれば嬉しいし、出会えないと悔しい。

これがやめられない理由の主要な部分を占めていることは、間違いない。
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by brunneus | 2011-07-23 01:48 | 沖縄 | Comments(0)
2011年 07月 22日

真打ち登場

再び南方から。
こいつに出会うのを6年間待っていた。


オキナワミナミヤンマ雌:体長73mm
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同雄:体長74mm
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派手なカラスヤンマなんかより姿は全然地味だが、
はるかに出会うのが難しい。

高い旅費と強引なスケジュール。無理をして遠征を強行しても、
姿さえ見られないことが何度もあった。

朝日を浴びて、シークワーサーの梢の上を悠々と旋回する姿。
目を閉じると、鮮やかにその光景が蘇る。
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by brunneus | 2011-07-22 03:20 | 沖縄 | Comments(3)
2011年 07月 18日

関東の夏

関東の夏は、やはりこのヤンマを見なければ始まらない。

マルタンヤンマ雄:体長75mm
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近場のポイントが思わしくないので、ちょっと遠出して、旧知のポイントへ。
地面低くを矢のように突進してくる浅黒いヤンマ。

台風の影響か、時々雨がパラつく不穏な天気の中、
間欠的に飛んでくるこのヤンマと対峙する緊張感を、久々に味わう。

そして自分のなかで少し、停滞していた季節が先に進んだ。
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by brunneus | 2011-07-18 22:39 | 神奈川 | Comments(0)
2011年 07月 18日

ウラ側

トンボを撮影するとき、気が向くと裏側からも写真を撮っている。

カラスヤンマ雄
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同雌
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ヤブヤンマ雌
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背中側から見た状態と比べると、一様に地味だ。
空を飛ぶ昆虫なので、下側から見た時にも斑紋で種の特徴が分かったほうがいいと思うのだが。

しかし考えてみると、
明るい空が背景なので、斑紋があっても逆光でよく見えない。
斑紋より、翅の模様のパターンや、全体のシルエットで種や雌雄を見分けているのかもしれない。
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by brunneus | 2011-07-18 11:46 | 沖縄 | Comments(0)
2011年 07月 17日

多摩と武蔵野

南方シリーズはいったん休止。

東京に戻ってからは、南方で採集したトンボの撮影をしていたのと、
遠征の余韻にどっぷり浸かっていたことで、まともに野外に出ていなかった。

そんな中、トンボ仲間から、次々に採集結果のメールが入ってくる。
そうだった、気付けば関東は黄昏飛翔性ヤンマのシーズンまっただ中だったのだ。

昨日と今日。
殺人的な直射日光にあふれた屋外には出たくないが、
気持ちを地元モードに切り替え、ヤンマを求めて多摩と武蔵野を彷徨った。

結果はバツ。
ひとつのポイントは馴染みの場所だが、綺麗に草が刈られてしまい、
ヤブヤンマがぽつんと飛んだだけで終了。
もうひとつは自己新規ポイントだが、ヤンマが飛ぶエリアを絞りきれず、
やっとマルタン雄が飛ぶ場所を見つけたところでタイムアップ。

トンボは駄目だったが、思わぬ副産物が。

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ヒゲコガネ。
出会うのは実に2年振りだ。
昨年もポイントを訪れたが、何がいけなかったのか、ついにその姿を見ることができなかった。
しかし今年は4頭の雄を採集。一日で4頭は新記録だ。
この甲虫は当たり年と外れ年のようなものがあるのだろうか、、。

関東周辺のコガネムシ科では、カブトムシに次いで大きい。
その重量感と、触ると出すキューキューという音。
2年振りの出会いに、トンボの不調も吹き飛んだ。

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あちこちの森ではニイニイゼミが鳴き、
今日は武蔵野でアブラゼミの声を初めて聞いた。
茂みからはヤブキリの暑苦しい鳴き声。

季節は既に夏本番に突入している。
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by brunneus | 2011-07-17 22:41 | 東京 | Comments(0)
2011年 07月 16日

バリエーション

亜熱帯のシンボル、カラスヤンマ。

このトンボが面白いのは、雌の翅の斑紋に個体差があるところだ。

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画像一番左上の個体は、かなり褐色斑が縮小していて、ここまでの個体はあまり見たことがない。
まったく「烏ヤンマ」らしくない。

同じ仲間のミナミヤンマもこの傾向があるが、ミナミヤンマの場合は、
産地による変異だ。
しかし、これも同じ属であるイリオモテミナミヤンマや、オキナワミナミヤンマは
雌の斑紋の変異は殆ど見られない。

他のグループでは、トラフトンボの雌がこのような個体変異が見られる。
トラフトンボの場合は、産地というより、個体ごとの変異。

他にはカワトンボの仲間も翅の斑紋の変化があるが、これは明確に繁殖上の戦略があるという。

こういった、納得できる理由があると安心するのだが、
理由もなく個体変異があるものだろうか。

細かく観察すれば、もしかしたらカラスヤンマも変異の理由がわかるかもしれない。
翅の色が暗いほど、薄暗い環境を好むとか、、、?

そんなに単純ではないとは思うけれども。
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by brunneus | 2011-07-16 13:00 | 沖縄 | Comments(0)
2011年 07月 15日

碧玉ヤンマ

南方遠征は、このヤンマなしには考えられない。

トビイロヤンマ雄:体長66mm
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同雌:体長64mm
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海沿いの湿地の貴公子とも言える、美しい南国情緒あふれるヤンマ。
水田や湿地の消失とともに、南西諸島全域で数を減らしつつある。
しかし、個体密度が多い産地では、タイミングが合えば、
頭上を覆いつくすほどの壮観な群飛を見ることができる。
南方通いを始めた頃はこうした光景をしばしば見ることができたが、
最近は久しく見ていない。

このヤンマの学名の一部分「Jaspidea」はラテン語で、「碧玉」の意味。
雄の複眼の色を表したものだろう。
その複眼の青はなんというか、亜熱帯の空を映しているような、独特な色合いだ。

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今回の遠征でも群飛を期待したが、結局、小規模な群れを一カ所で見ただけで終わってしまった。

どうも、今年はあの水田の様子がおかしい。
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by brunneus | 2011-07-15 15:22 | 沖縄 | Comments(0)