トンボの日々

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2012年 07月 31日

オニヤンマ2種

マルタンヤンマを待っていると、頭上に大きなトンボの気配。

見上げてみると、オニヤンマの未熟な雌が、小さな往復と旋回を繰り返して摂食飛翔中だった。
巨大な身体に似合わない、ふわふわと浮かぶような身のこなし。
灼熱の八重山のヒロオビオニヤンマの記憶が蘇る。

ふと思いつき、ヒロオビオニとの比較用に採集してみる。

左/オニヤンマ雌
右/ヒロオビオニヤンマ雌
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オニヤンマの未熟な雌は、翅の根元を中心に黄色く色付き
ヒロオビオニヤンマを彷彿とさせる雰囲気となるのだが、こうして見ると全然違う。
オニヤンマの方は翅が全体的に淡く黄色味を帯び、その境界線ははっきりしないが
ヒロオビの方は、三角室付近ではっきりと橙色が終わっている。
オニヤンマの黄色は「色付く」という範疇のものだが、
ヒロオビのこの橙色は「斑紋」といっても良い状態だ。
ちなみにオニヤンマは成熟と共に黄色味は消えるが、ヒロオビは生涯を通じて橙色が残る。

そしていちばん大きな違いが、腹部。
側面から見ると、オニヤンマは黄色い斑紋が縦の縞状なのに対し、
ヒロオビの方は腹面側で黄色班が太くなり、縦に長い三角形状になっている。
この差は画像より野外で見ると一層引き立ち、
ヒロオビオニヤンマは「黄色いオニヤンマ」に見える。

さらに腹端の産卵弁は、ヒロオビのほうが明らかに短い。

これらは端から見ると些細な違いだが、
いったん気付いてしまうと、その面白さにはまってしまう。

これがいわゆる「マニア」的な視点なのだろうか、、。
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by brunneus | 2012-07-31 22:37 | 神奈川 | Comments(0)
2012年 07月 31日

髭の季節

先週。

この時期に毎年足を運んでいる、川崎市の谷津へ。目的はマルタンヤンマ。

涼しい気候が影響したからか、数は少なく採集には随分苦労したが、
なんとか雄を手にすることができた。
このポイントでも今年もしっかり発生してくれているようで、ひと安心。

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既に翅が欠損した個体が出始めている。

その後は、お楽しみのポイントへ。
排気ガスを我慢しながら、街灯に照らされた足元を注意深く見て回る。
いた!!

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今が旬のヒゲコガネだ。
神経を路面に集中し、仄かな灯りに照らされた大きな甲虫の影を見つけた時は、
宝探しで宝物を見つけたような、わくわく感でいっぱいになる。
この日は、3年振りに雌も得ることができた。

多摩南部の自然は、いつも期待にしっかり応えてくれる。
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by brunneus | 2012-07-31 02:00 | 神奈川 | Comments(0)
2012年 07月 29日

7月のアオヤンマ

7月下旬のある日。

そろそろ発生ピークだろう、と千葉のネアカヨシヤンマの産地へ。
しかし、晴れていた天気もポイント到着と同時に怪しくなり、冷たい風が吹き始めた。
遠くでは雷鳴も、、。

こうなると、コンディションは最悪。
結局、ネアカの群飛は見られずじまいだった。
毎年、一回目のネアカはいつも失敗する。

ネアカヨシヤンマの代わりに多く見られたのが、アオヤンマ。

アオヤンマ雄:体長70mm
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アオヤンマと言えば初夏のヤンマというイメージがあるが、
実際には盛夏の頃までだらだらと活動は続いている。
手にした個体を見ると、だいぶ飛び古したものが多かったが、
これはこれで貫禄があり、魅力的。
腹部を側面からよく見てみると、全体が青味を帯びている。
この時期の老熟個体だけに見られる青色だ。

アオヤンマもそろそろ発生末期。
次に訪れる時は姿を消していることだろう。
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by brunneus | 2012-07-29 23:43 | 千葉 | Comments(0)
2012年 07月 26日

タイミング

先日のマルタンヤンマを採った谷津。

マルタンのポイントへと急ぐ途中、谷津の開けた場所でふと気配を感じ、あたりを見回すと
背後の黒い森に紛れて、辺りを無数の黒い影が音もなく飛び交っているのに気付いた。

マルタンが気になる所だが、この黒い影の正体を見極めたいので、神経を集中して凝視する。

空が背景になった瞬間、翅の付け根に橙色が見えた。ヤブヤンマの雌だ。

ヤブヤンマ雌:体長80mm
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苦労してネットに入れると、老熟して渋く緑化した個体だった。
擦れた翅は、既に繁殖後期に差し掛かっていることを物語っている。

しかし中にはこんな個体も。

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まだ全身が黄色味を帯びた、未熟個体。
上の老熟個体と比べると、とても同じ種類に見えないのがヤブヤンマの面白いところ。

ヤブヤンマは黄昏飛翔でよく目につくヤンマだが、あまり一箇所で沢山飛ぶシーンを見ない。
しかし、年に1度は大群飛に出くわすことがある。
谷津の地上低くに集結して多数の個体が飛んでいたこの時が、そのタイミングだったようだ。

この日はまだまだヤブヤンマたちを眺めていたかったが、
時間も差し迫っていたので、後ろ髪を引かれながら、マルタンのポイントへと走ったのだった。
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by brunneus | 2012-07-26 02:09 | 神奈川 | Comments(0)
2012年 07月 25日

ギネスと、初モノ

少し前のある日。
職場の人間と海辺のカフェで食事したあと、強風吹き荒れる砂浜へ。

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解散後、まだ少し時間があったので、とある場所へ急いだ。

現地到着が18時半。ぎりぎりの時間だ。
早速竿を組み立て、薄暗い谷間の奥を睨む。

数分後、茂みの奥に、待ち望んでいた影が一瞬見えた。

左/マルタンヤンマ雄:体長74mm
右/マルタンヤンマ雌:体長77mm
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今年初めてのマルタン。
いつの間にかすっかり成熟していた。

八重山の甘い記憶にうつつを抜かしているうちに、
関東の季節はすっかり夏に移り変わってしまったようだ。

冷えたギネスと黄昏の谷津、そしてマルタンヤンマ。
あまりにも夏らしい一日に、うまく心と身体がついてゆけない。
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by brunneus | 2012-07-25 01:11 | 神奈川 | Comments(0)
2012年 07月 20日

八重山・ふたつのトンボ

「八重山」「初夏」というキーワードを聞いただけで、
条件反射で思い浮かべてしまうトンボがふたつある。

まずはイリオモテミナミヤンマ。

左/イリオモテミナミヤンマ雄:体長79mm
右/イリオモテミナミヤンマ雌:体長82mm

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イリオモテミナミヤンマは
「ミナミヤンマ科」と呼ばれるオニヤンマに近縁な熱帯原産の大型トンボ類の一種だ。

国内では他に、
四国南部から徳之島まで点々と見られるミナミヤンマ、
沖縄本島北部や渡嘉敷島に分布するミナミヤンマの亜種であるカラスヤンマ、
そして沖縄本島北部のみに見られるオキナワミナミヤンマという種類がいる。

どの種も雄は一見するとオニヤンマそっくりだが、
雌は幅広い翅を持ち、その翅に様々な模様が発現する、という強烈な個性を持つ。
イリオモテミナミヤンマも、画像のように、雌には翅に独特の斑紋が発現している。

このグループは未熟時や摂食時に、大きな山の斜面やその麓の道路上、時には海岸の砂浜の上を
複数の個体が気流に乗ってグライダーのように雄大に旋回飛翔する習性がある。
姿かたち、行動のすべてが堪らなく魅力的なトンボなのだ。

イリオモテミナミヤンマは数回挑戦しているが、いつも悪天候に阻まれ、
あとちょっとの所で決まって時間切れ。生態が分からなければ、当然成果も出ない。
自分にとっては、なんとも掴み所のないトンボなのだ。

しかし幸運なことに、非常に稀なことではあるが、条件が良い日にぶつかることもある。
そんな時は拍子抜けするほど、あっさりと目の前に姿を現す。

朝日を浴びて路上をウスバキトンボと共に漂ったり、
海岸の絶壁の上をふわふわ浮かんでいたり、
風が静かな木立の上を忙しなく、舐めるように飛び回ったり。

行動は、ミナミヤンマやカラスヤンマと全く同じだ。

大きな翅で滑空しながら、目と鼻の先をゆったりと飛ぶ姿を間近に見る。
胸の斑紋や、翅の煙り具合、時々太陽光をきらりと反射する腹部。
心臓は飛び出るくらいに高鳴っているのだが、
その瞬間はまるで時間が止まったように永遠にも感じる。

イリオモテミナミヤンマは、
目を閉じると、いつもその飛翔する姿と風景が、共に蘇ってくるトンボだ。



もう一種はヒナヤマトンボ。

ヒナヤマトンボ雌:体長68mm

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ヒナヤマトンボの産地は石垣島が有名らしいが、西表島でも見られる。
国外では台湾を経て東南アジアや中国南部に広く分布するという。
内地にも分布するコヤマトンボグループの一種だが、
その細身の体型と、雌のぷっくりと広がった腹端は一見して他の種と異なり、
熱帯の雰囲気を強く感じさせる。

コヤマトンボは明るい川面をのんびりと飛ぶので採集は容易いが、このトンボは全く別。
薄暗い、木漏れ日のさす流れの上を、影のように素早く飛び回るのだ。
あっと気付いた時はもう遅い。次の瞬間には遥か遠くで後ろ姿となっている。

未熟な自分の腕では全く歯がたたないが
それだけに、偶然手にできた時の喜びもひときわ大きい。

ヤエヤマクマゼミや、ズアカアオバトの声を聴きながら一人、
涼しげな清らかな流れでこのトンボを待つ時間は、何にも代え難い至福の時だと思う。
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by brunneus | 2012-07-20 23:09 | 沖縄 | Comments(2)
2012年 07月 20日

カワトンボの不思議

沖縄県では、沖縄本島に次いで大きな面積を持つ西表島。
殆どが複雑な地形をなす山地で、そこから流れ出す河川も発達している。

トンボも、イリオモテミナミヤンマを筆頭に、流水性の種が充実している。

西表島には、流水性のトンボのうち、カワトンボの仲間は
チビカワトンボ、クロイワカワトンボ、コナカハグロトンボの3種が棲息している。
このうち、チビカワトンボにはまだ出会ったことがない。

左/クロイワカワトンボ雌:体長60mm
右/コナカハグロトンボ雄:体長45mm
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南西諸島のカワトンボ類の分布地図を眺めると、
不思議なことに、同じように河川が発達する沖縄本島や奄美大島には、
カワトンボの仲間はリュウキュウハグロトンボただ1種しか分布していない。

おそらくこれは、環境というより、近隣の地域との関係が原因しているのだろう。
つまり、沖縄本島や奄美大島は、大陸と切り離された時間が長かったが、
石垣、西表は台湾(そして中国南部)と地続きの時代が長かったために、
台湾から多くの生き物が流入していったのだろう。
事実、西表の3種のカワトンボは、台湾にごく近い種類が分布している。

南西諸島のカワトンボで面白いのは、
たとえば内地のニホンカワトンボ、ミヤマカワトンボ、アオハダトンボのように、
明るい川原を住処とする種が皆無で、
どの種も森林に覆われた、木漏れ日が差す渓流に生息している、ということだ。

写真で取り上げたクロイワカワトンボやコナカハグロトンボも、
薄暗い渓流や、その周辺のじめじめとしたジャングルの中でよく出会う。

南西諸島の島々の川は、いわゆる「下流域」が僅かで、
上流から中流を経るとすぐに、海水が入り込む汽水域になってしまうことが多い。

この辺に、その謎を解く鍵が隠されているのかもしれない。
と、自分勝手な妄想をしてみる。
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by brunneus | 2012-07-20 01:59 | 沖縄 | Comments(0)
2012年 07月 18日

妖しい赤

八重山のジャングルには、所々に湿地がある。
そんな環境の傍を通る小道でよく見られるのが、この2種のトンボ。

左/オオハラビロトンボ雄:体長38mm
右/ホソアカトンボ雄:体長40mm
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動作は緩慢で、近づくとぱっと飛ぶが、またすぐ近くに止まる。
この緩慢さは、その気になればジャングルの奥深くに瞬時に逃避できる自信から来るのだろうか。

ちらちらと目の前を飛ぶ小さなトンボ。
薄暗いジャングルの木漏れ日に、その鮮やかな赤色はどきっとするほど美しい。

手を伸ばすと、こちらの気を惹くように、少しずつジャングルの奥へと移動する。
いつの間にか自分自身の居場所を見失ってしまう恐怖に、はっと我に返り、また来た道を引き返す。

亜熱帯特有の、妖しい魅力のあるトンボだと思う。
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by brunneus | 2012-07-18 22:18 | 沖縄 | Comments(0)
2012年 07月 14日

翅の不思議

初夏の八重山で最もよく目にするトンボはウスバキトンボだが、ちょこまかと飛ぶその群れに
少し距離を置いてふわりと浮いているのが、ヒメハネビロトンボだ。

ヒメハネビロトンボ雄:体長50mm
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ウスバキトンボより一回り体格が大きく、そのせいか行動もゆったりとしている。
遠くからだと赤黒いトンボに見えるので、一目でそれと分かる。
街中ではさすがに姿を見ないが、ちょっと郊外へ足を伸ばすと、良く目につく。

飛んでいる時にはあまり分からないが、手にしてみると、
後翅の赤褐色斑の変異が意外に豊かであることに気付く。

この個体は、斑紋の輪郭がぼやけ、後翅全体に淡く広がったもの。
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過去には、斑紋がさらに広がり、後翅が殆ど褐色に染まったものも採っている。
ごく近い仲間のハネビロトンボでは、ここまでの変化のバリエーションは無い。

翅の斑紋の変化があるトンボとしてはカラスヤンマが有名だが、
カラスヤンマの場合、雌だけに発現するバリエーションだ。
しかしヒメハネビロトンボは、雄にも雌にも様々なパターンがある。

果たして生存の戦略に、こういうバリエーションはどんな意味があるのか。
考えてみると面白そうだが、案外意味なんて無いのかもしれない。
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by brunneus | 2012-07-14 02:30 | 沖縄 | Comments(0)
2012年 07月 11日

久しぶりの再会と、臭い

遠征に行く場合、トンボ以外にもいくつか採りたい虫をいくつか決めてから出かけることが多い。

八重山の場合は、例えばチャイロカナブン。

チャイロカナブン:体長20mm
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この地域では普通種で、
ブログなどではアダンの熟れた実に鈴なりになっている写真がよく紹介されている。

しかし、カナブンの仲間であるにもかかわらず、
内地のものとは全く異質な外見は、初めて見た時から強く惹かれるものがあった。
内地のものとは全く異なる、という意味では、トンボで言うなら
トビイロヤンマのような存在、とでも言うべきか。

過去に数回訪れた八重山では、普通種であるにも関わらず、
出会うことは殆ど無かった。
時期が微妙に早かったり、環境が異なったり、という理由だろう。

初めての出会いは2003年。
炎天下の中、畑の脇でトンボを待っていると、
目の前のブーゲンビリアの花に、見慣れない小さめの甲虫が飛んできたのが目に入った。
トンボは飛ばないし、することもなかったので、何気なくその甲虫をネットに入れてみて驚いた。

なんと、図鑑でしか見たことのない、チャイロカナブンがそこにいたのだった。
その存在は知ってはいたが、採れる、という発想が全く無かったので、
その想像以上に小さな体を見て感激したのを今でもはっきりと覚えている。

それ以降、飛行する小さめの甲虫には注意をはらっていたのだが、
結局追加個体には出会うことはなかった。

そしてその後、初夏の西表。
スコールにずぶ濡れになりながら、しょぼくれて夕方の林道を歩いていると
雨の止み間、路脇の灌木の梢に小さな甲虫が群飛していた。
あのシルエットは、、、。

ネットを振ってみると、中で転がっていたのは紛れも無くチャイロカナブン。
何年振りの再会だろう。手にした嬉しさにしょぼくれた気分は一気に吹き飛んだ。

この時は島内のあちこちでその姿を見た。
特に、道路脇に咲いている灌木の花に多く群れている印象があった。
花のあたりをさっと掬うと、ブーンと小気味よい音を残して四方八方に散っていく。

強烈な印象だったのが、臭い。
カナブンは、捕まえると独特のアンモニアにも似た臭気を出すが、
チャイロカナブンの臭いはその比ではない。
ネットに入れた瞬間から分泌するのか、顔を近づけただけで鼻が曲がるほど臭いのだ。
息を止めながらケースに収納したほど。

何はともあれ、
こういう外道との嬉しい出会いがあると、旅に豊かな厚みを与えてくれる。
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by brunneus | 2012-07-11 23:17 | 沖縄 | Comments(0)