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2013年 02月 26日

よけいなおせわ・その2

前回の記事が、なんだかクレーマーのいやがらせみたいになってしまった。
ただ、件のトンボ図鑑は、読み込み過ぎて購入後1年を待たずにボロボロになってしまい、
第2版の出来によってはもう一冊愛蔵版として買おうか、と考えているほど思い入れのある図鑑なのだ。

今回は、個人的に好きな図鑑をいくつかピックアップしてみる。

●「沖縄のトンボ図鑑」(ミナミヤンマ・クラブ/2007)
この図鑑は全編にわたって、標本写真や生態写真が理想型に近く、見ていて単純に、「美しい」と思ってしまう一冊。
特に 生色標本写真の自然な美しさは初めてページを開いた時は衝撃で、「ついに新時代が来たか」と唸ってしまったほど。
これは撮影者の技術と、印刷の技術が絶妙に噛み合った好例だろう。

●「空とぶ宝石 トンボ」(たくさんのふしぎ傑作集/福音館書店1998)
これは図鑑というより、子供向けの写真絵本に近い体裁だが、これも全編写真が美しい。
生色標本の写真も自然で美しい。少し欠損があるが、逆にそれがこの場合、リアリティに繋がっている。

●「ヤンマ・オニヤンマ」(文研出版/1979)
これも子供向けのトンボ図鑑。死後変色していない新鮮な個体を撮影した、草分け的な生色図鑑。
デジタル技術もない時代の本だが、その色の再現性は当時の職人業だろう。
ヤンマ科だけでなく、オニヤンマ科、ミナミヤンマ科のトンボも合わせて紹介したコンセプトも斬新。
絶版で入手困難なのが残念。

●「日本産トンボ大図鑑」(講談社/1985/2005)
「ヤンマ・オニヤンマ」で蓄積した標本撮影技術を発展させたのだろうか。
当時国内で記録されたほぼ全てのトンボの新鮮な生色標本写真を掲載した、本格的な図鑑。
初めて知ったのは図書館の書庫で既に絶版だったが、2005年に第3刷が発売されたので、高価だっが即購入した。
これも全てアナログの編集作業だが、デジタルには無い、その自然な色合いはほんとうに素晴らしい。


●「昆虫の図鑑 採集と標本の作り方」(2005/2009)
これはトンボだけでなく、鹿児島県の昆虫類を紹介した図鑑なのだが、驚くのはその種類数。
ハンディなサイズながら2500種もの昆虫を掲載したこだわりと熱意には脱帽。
虫好きがつくる昆虫図鑑の真骨頂を見る思いがする。
トンボ類では、2005年の第1版では鹿児島県で記録された全種を掲載。
書店でたまたま手に取った時に、これだけでも衝動買いしてしまったのだが、2009年の第2版では、
なんとそれに加えて沖縄県のみで見られる種も全種掲載しているのだ。しかも殆どが新鮮な生色標本。
中には色調補正に失敗しているものもあるが、それよりも密度と情報量に圧倒される。
トンボの専門家に太いパイプがあったからこそできる内容だろう。もちろん第2版も購入。


他にも好きな図鑑はあるが、トンボに関してはこれくらいだろうか。
やはり自分は、テキストの内容よりも写真の美しさに関心が行ってしまう。
美しく並べられた生色標本写真は、飽きることなくいつまでも眺めていられる。

採集も楽しいが、やはり採ったものを標本にして、お気に入りの図鑑と比べて悦に浸る時間が
自分にとって至福の時なのかもしれない。
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by brunneus | 2013-02-26 01:17 | つぶやき | Comments(2)
2013年 02月 21日

よけいなおせわ

昨年出版されたトンボ図鑑の第二版が出るようだ。

個人的にも、いくつかちょっと気になるページがあったので、それがどこまで改善されているか、チェックしてみたい。

初版で気になった点。文章の誤記は別として、画像について。

・ネアカヨシヤンマ雄の標本画像の青みが強い。
・トビイロヤンマ雌雄の標本画像の色調が薄い。
・ヤブヤンマ雄の標本画像の青みが強い
・オオギンヤンマ雌雄の標本の状態が悪い。
(死後時間が経っているためか、複眼の擬瞳孔が消えている。標本差し替えは難しいかもしれないが、、)
・サナエトンボ科扉のメガネサナエ標本画像の胴体がややアンダー気味で、青みが強い
・コオニヤンマの雌雄標本画像の複眼がアンダー気味。交尾画像のピントが甘い。
・オナガサナエ雌雄の標本画像の青みが強い
・モイワサナエのページの標本画像の青みが強い
・ヒメクロサナエ雄の標本画像の青みが強い
・オジロサナエ雄の標本画像の青みが強い
・タイワンオジロサナエ雄の標本画像の青みが強い
・チビサナエ沖縄個体群雌雄の標本画像の赤みが強い
・ミヤマサナエ雄の標本画像の青みが強い。若干緑寄りか。
・ホンサナエ雄の標本画像の青みが強い。若干緑寄りか。
・ヤマサナエ雄の標本画像の青みが強い。
・タイワンウチワヤンマの交尾画像の画質が悪い。
・オニヤンマ雄の標本画像の青みが強い
・ミナミヤンマ科扉のイリオモテミナミヤンマの翅と脚が、恐らくコピー反転ペーストしたものと思われる。胴体に対して翅が短いか?
・オキナワミナミヤンマ雄の標本画像の腹部先端が黒い。恐らくレイヤー調整ミスと思われる。
・ミナミヤンマ地域個体変異のページ、奄美個体群の雄標本画像の青みが強い。全体に、胴体に対して翅が短いか?
・ミナミヤンマ科全体的に、標本画像の複眼の彩度を上げすぎているので不自然で、浮いて見える。
・ミナミヤマトンボ科扉のサキシマヤマトンボ標本画像の複眼の色調が不自然。乾燥標本をデジタル処理したか?
・サキシマヤマトンボ雌雄の標本画像の青みが強い。
・リュウキュウトンボ雄の標本画像の腹部先端が黒い。恐らくレイヤー調整ミスと思われる。
 また、翅の部分を合成したか?
(沖縄のトンボ図鑑と翅の色が明らかに異なる)
・オオヤマトンボ日本本土個体群の雌雄標本画像の青みが強い。
・コヤマトンボ北海道個体群の雌雄標本画像の青みが強い。
・マユタテアカネ産卵画像の解像度が粗い。
・マイコアカネ雄の標本画像がやや青みが強い。
・コシアキトンボ雄の標本画像の色調が薄い。
・コシアキトンボ雌の標本画像の赤みがやや強いか。
・ベニヒメトンボ雌雄の標本画像の青みが強い。
・タイワンシオヤトンボ雌雄の標本画像の青みがやや強い。
・ベッコウトンボの標本画像が全体的に薄い。


大体こんな所だろうか。
標本画像の青みが強いものが多いのが気になるが、色調の偏りは特に透明な翅のトンボで目立つ。
この場合、画像処理ソフトで翅の部分を選択し、翅の彩度を下げることで解決できるような気がする。
しかし、こういう色調の補正はモニター上では簡単に出来ても、
印刷のインクや印刷機によって変わることも多いと思うので、調整は非常に難しいのだろう。

こういう、非意図的な色調の偏りの他に、
もし意図的に彩度補正や、異なる個体や同じ個体のパーツを合成したのであれば、個人的な趣向としてはあまり好みではない。
解りやすく、美しくするために人為的に手を加えるよりも、
多少汚れや欠損があっても、(できれば完品が良いが)ありのままの状態を提示したほうが、自然を正しく理解する、という図鑑の性質に合致していると思うからだ。
基本的に図鑑を読む人は、その情報を全面的に信頼する。
しかし、そこに画像修正という作為があると、その信頼する気持ちが揺らいでしまう。アイドルやタレントのグラビアや宣材写真のように。

図鑑はノンフィクションであってほしい。
写真で言えば報道写真であってほしい。


色々書いてしまったが、このトンボ図鑑を作った人々の情熱と苦労は想像するにあまりあるし、
個人的にも思い入れがある図鑑なので、ついつい好みというか、感情が入ってしまうのだ。

書店で第二版を手に取るのが楽しみだ。
改善の度合いによっては、購入も考えている。
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by brunneus | 2013-02-21 22:05 | Comments(10)
2013年 02月 17日

fair2013

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フェアが終わった。

人いきれに咽せながら、名前は知らずとも、強烈な個性むき出しの出品者の面々を眺めるのは楽しい。

お客を相手につばを飛ばしながら喋りまくる人。
怒ったようにむすっとしながら、ひたすら早足で歩き回る人。
山高帽子に黒ずくめ、毎年全く同じ服装で静かに歩く人。
さかんに話しかけてくれるが、全く買ってくれない人、、。
さらに、某大御所のお方、最近ブログで大活躍の女史、、、。

毎年ほんとうに相変わらずで、まるでそこだけ時間が止まってしまったかのようだ。

結果の方はまあまあだったが、
これからトンボを始めてみよう、と思う次の世代がもっと出てきてほしいと思った。
フェアに出品するということは、そういう人々の入り口になるのではないか、と思うからだ。
実際にトンボの標本を見て、説明を聞いて、その多様性を認識する。
そしてそこから世界が広がる。


フェアが終わると、季節は一気に加速する。
梅も咲き、公園の池ではヒキガエルの産卵も始まっているだろう。
春の尻尾が見えてきた。
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by brunneus | 2013-02-17 23:05 | つぶやき | Comments(0)
2013年 02月 16日

お知らせ

トンボの物語はまだまだ続くが、一時中断。

明日大宮で開催される昆虫標本即売会、インセクトフェアに、今年もちんまりと出品します。
会場は大宮ソニックシティ、時間は午前10時から午後5時。
今頃の告知ですが、もしお暇な方は是非。

標本の中でも需要が少ないトンボを出品するので、売り上げなんて雀の涙以下なのですが、
トンボ仲間との毎年恒例のシーズン前のイベント、ということでゆるく楽しんでいます。

今年は久々に立体標本もいくつか出品。

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左:オキナワチョウトンボ。アクリル棒に止まらせています。
右:芝生に棲む、生態が謎に包まれたムネアカセンチコガネ。

あとは今年も冊子類をいくつか。
もちろんトンボの標本もたくさん持っていきます。

こちらがいくら頑張っても、結局は天気次第で売り上げが左右するので、
あまり期待せずにのんびり行ってきます。
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by brunneus | 2013-02-16 14:16 | その他 | Comments(4)
2013年 02月 14日

ものがたり・その4

 どれくらい岸辺に佇んでいただろうか。ふと気付くと、梢の向こうに見える尾根から、
今日最後の太陽光が失われるところだった。谷間はにわかに薄暗さを増し、夜の闇が勢力
をじわじわと増しつつある。急に心細くなる。水田へ行かなければ。
 
 蒼い暗がりに包まれた林道を水田へと急ぐ途中、視界の隅、向いの斜面の上をぽつぽつ
と黒い点が漂っているのが見えている。あれはカラスヤンマだ。水田の上にも降りてきて
いるのだろうか。気持ちは焦る。
 林道が谷間を抜け、水田へと続く畦道に差し掛かった時、脇のフクギの植え込みから出
し抜けに黒い物体が飛び出してきた。反射的に荷物を投げ出し、全速力で追う。走りなが
ら竿を伸ばすのは難儀するが、なんとか追いすがり、地面に向けて振り下ろす。かちんと
フレームがアスファルトに当たる金属的な音がして、視界から黒い物体が消えた。
 ネットの中にはカラスヤンマ。今度の個体は翅の黒い部分が少ないタイプだ。呼吸を整
え、真横からの橙色の日差しを浴びながら、畦道を進む。
 今日のもう一つの目標、トビイロヤンマのシルエットを頭の中に思い浮かべる。

 太陽はいままさに水田の向こうに姿を消しつつある。その強烈な亜熱帯の光のに目を細
めると、はるか遠い稲穂の上を、ちらちらと淡白いトンボが見え隠れしている。おそらく
あれがトビイロヤンマだ。もう飛び始めていた!
 西日に向かって畦道を進み、水田地帯に入った頃に太陽がちょうど地中に没した。あた
りは一気に蒼い空気に包まれてゆく。作業を終えた農家の軽トラックが疲れたエンジン音
を響かせ、走り去る。
 荷物を脇に置き、静かに佇んで夕闇に目を慣らすと、視界のあちこちで気配を感じる。
竿を持って、畦道をゆっくりと歩き出すと、見えてきた。さっ、さっと視野を横切る淡白
い気配。トビイロヤンマだ。空色の複眼の残像を残して畦道の脇の水路を飛び去るもの。
時々足元を掠めるものもいる。ヤンマは不規則に飛んでいるようでつかみ所がなく、竿を
振るチャンスは少ない。向こうから直進してくるヤンマに狙いを付けていると、後ろから
別の個体が抜けて、気を取られているうちに見失ってしまう。なかなかネットに入れるこ
とができずにもどかしいが、ここで焦ってはいけない。探すのはトビイロヤンマが集結す
るポイントなのだ。

 濃紺に染まりつつある稲田を睨みながら、淡白い影の集団を求めて歩き回るが、なかな
か見つからない。地平線の上に僅かに残る橙色がしだいに色褪せてゆくさまを見ると、自
然と急ぎ足になってしまう。今日はこのまま終わってしまうのだろうか、、。
 畦道を海の方角へ進むと、農作物の洗い場がある十字路がある。そこを右折した先の黒
々としたイグサ田に、それはあった。背景が黒いので目立つのだろうか。そこには無数の
淡白い影の集団があった。ひとつひとつは自由気ままに動いているように見えるが、全体
としては一枚のイグサ田の上から離れることはなく、まるで一匹の巨大な生き物のように、
ゆっくりと形を変えながら蠢いていた。想像以上の光景に、竿を構えるのも忘れてしばし
見とれる。これが全部トビイロヤンマなのか!いや、よく見るとその群の上にぽつんと黒
い影が漂っている。あれはカラスヤンマだ。
 カラスヤンマが眼に入った時、気持ちが切り替わった。竿を淡白い集団の中に突き出す。
しかしこれはひとつひとつ狙う、という状況ではない。ためしに群の中に入れた竿をぶう
ん、ぶうん、と左右に振ってみた。振るたびに、竿の先でかさっ、かさっと小さな音がす
る。しばらく同じ動作をしたあとに手元にたぐり寄せてみると、ネットの中にはいくつも
のトビイロヤンマが暴れていた。その中のひとつを手に取ってみると、澄んだ空色の複眼
が、僅かな残照を映し出している。トビイロヤンマの雄。この色を見るといま自分が亜熱
帯にいることを実感する。
 ネットの中の数匹を三角紙に入れると、既に気持ちが満ち足りていることに気付いた。
まだヤンマは飛んでいるが、もう竿を突き出す気になれない。心が落ち着くと、色々な音
が静かに耳に流れ込んでくる。水田や茂みのあちこちから、聞こえるシロハラクイナの叫
び声や、タマシギの雌が雄を呼ぶ甲高い声。遠くの植え込みではクビキリギスやタイワン
クツワムシの単調な声が響いている。周囲は夜の音で充満していた。

 竿を仕舞い、荷物を手に背負ってバス停へと歩き出す。足が重い。海からの生暖かい風
が舐めるように全身を包み、そして去ってゆく。シャツは汗でべっとりと皮膚に絡みつい
ている。思ったより疲れているようだ。
 家々から微かに流れてくるのは、テレビや夕食の支度の音。そしてたまに三線の乾いた
音。さっきまでいた生命の気配に満ちた水田とは、別世界の生活の音。
 その生活の音世界の中を抜けると、オレンジ色を帯びた街灯の下のバス停に到着した。
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by brunneus | 2013-02-14 13:51 | つぶやき | Comments(0)
2013年 02月 05日

ものがたり・その3

 永遠に続くと思われた畦道もすぐ数十メートル先で終わり、林道と合流して右折し、谷
間へと入ってゆく。すぐ先に見える角を曲がれば、あのトンボが飛んでいると思うと、久
しぶりの恋人に逢いに行く日にも似て不安と期待がない交ぜになった気持ちになる。
 道が谷間に入ると頭上を涼しげな木陰が覆い、上流からはひんやりとした風が頬を撫で
る。さっきまでの狂気じみた灼熱の水田とは別世界の、瑞々しい生命力に溢れた空気に一
安心する。視線は常に上方を彷徨い、目的のトンボの影を探す。そして木々の中に入った
林道が再びひらけた場所に出たとたん、真っ黒な、ふわふわと漂う物体に出くわした。
 担いだ荷物を放り出し、竿を握りしめて物体の動きに全神経を集中させる。
 
 カラスヤンマ!

 周囲のあらゆる音が脳の中で遮断され、自分の心臓の音以外は無音になる。そしてその
心臓の音がまるで太鼓のように、硬く大きく喉元あたりで響いている。頭のすぐ上。カラ
スヤンマは夕方の黄色味を帯びた空を背景に、まるで重力から解放されたかのようにゆら
ゆらと空中を彷徨っている。すうっと向こうへ遠ざかったかと思うとくるっと反転し、再
びこちらへ向かって滑るように近づいてくる。いよいよ竿の射程に入ったかと腕の筋肉を
強ばらせたとたんに三たびきびすを返し、今度は右へと方向転換。ふわふわと呑気に飛ん
でいるかに見えるが全く次の行動が読めず、竿を振るタイミングが掴めない。次に直進し
てきた瞬間に必ず振ろうと心に決め、じっと動きを見据える。そして数メートル先で反転
し、こちらへ方向転換した直後に竿を下から振った。

 かさっ

 小さな乾いた音が谷間の静かな空気に吸い込まれた。すぐに路面に網を伏せると、編み
目の向こうに真っ黒なトンボがばさばさと翅を動かしていた。緊張が解け、周囲の音が耳
に蘇ってきた。対岸の西日を受けた斜面からは、オオシマゼミの声が一段と大きくなって
いる。ゆっくりと路面に伏せられたネットに近づき、そっと中に手を入れる。指先に、真
っ黒な翅のざらざらとした感触。
 取り出してみると、飛んでいる時よりもずいぶん小さく感じる。胴体に小さな黄色い斑
紋が散りばめられてはいるものの、周りの風景からカラスヤンマの輪郭線に沿ってそこだ
け切り取られたかのような、漆黒の色。深い緑色をした複眼だけが、闇の中から黄昏の青
空を映し出している。初日からカラスヤンマが採れるとは、幸先がいい。
 素早くトンボを三角紙に包み、再び上流へ。

 脇の林の中からリュウキュウアカショウビンの澄んだ物悲しげな声が響いている。せせ
らぎの音が近いので覗いてみると、川は林道のすぐ下を流れていた。降りて行けそうな微
かな踏み跡があったので、草をかき分け入ってみる。
 岸辺に降り立つと、心地よく冷やされた風とともに、ぱっと足元から翅を青藍色に輝か
せてリュキュウハグロトンボが数頭飛び立った。思わず流れに手を触れてみる。水の優し
い冷たさが指先から全身に伝わり、改めて灼熱の下界とは別世界にいることを実感する。
 ふと目の前の水面を見ると、真鍮のような質感のオキナワオオミズスマシが群れて水の
上を右往左往している。
 木漏れ日の向こうから、リュウキュウアカショウビンがまた一声鳴いた。
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by brunneus | 2013-02-05 00:51 | つぶやき | Comments(0)