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2013年 07月 31日

つかみどころのない

沖縄シリーズ最後は、このトンボ。少し大きな画像で掲載。


オキナワミナミヤンマ雌:体長73mm
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沖縄本島という地域は国内で唯一、ミナミヤンマ属(Chlorogomphus属)が二種混生する地域
だ。
そのうちの一種カラスヤンマは、雌の特徴的な真っ黒な翅や、朝夕に平地に降りてきてあちこちでひら
ひら漂いながら摂食する行動など、目立つ要素が多いので、特にトンボに詳しくない人でも簡単に出会
うことができる。
しかしオキナワミナミヤンマは簡単には出会えない。雌の翅が透明なので、空高く飛ぶトンボの群れの
なかに紛れがちなことや、平地の開放空間には殆ど降りてこないことがその理由だろう。あるいは見落
としや、単に多数が集まるポイントを知らないだけかもしれない。
とにかく自分にとっては、つかみどころのないトンボなのだ。

過去の経験から、出没ポイントを絞って狙うのだが、三日間の遠征で出会えるのはせいぜい2、3回。
そのうちチャンスとなるシーンはほぼ一発勝負。次は無い。過去には姿さえ見ない遠征もあったほどだ。
今回は出会えた回数は多かった方だが、確実に採れるチャンスは2回あった。そのうち1回は痛恨のミ
ス。こういう時は悔やんでも悔やみきれない。そういう時は、慣れない気候で疲労が溜まっているせい
もあるのかも、と言い訳じみたことを考えて、自分を慰める。

手にした個体は二日目の朝、何の気なしに頭上を舞うカラスヤンマの小群を見ていて、その中に紛れ込
んでいるのを発見したものだ。出会いはふとした瞬間にやってくる。

なにはともあれ、前回の本島遠征と続いてオキナワミナミヤンマを手にできたことは、幸運だった。
今頃は彼らの最後の生き残りが懸命に子孫を残していることだろう。
また次に出会うことを楽しみにしながら、意識は関東のトンボに集中していく。
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by brunneus | 2013-07-31 12:06 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 29日

貧多様性

今回の遠征では、カラスヤンマが数年振りに数多く見られたのだが、最大の特徴である雌の翅の黒褐色
斑のバリエーションは、少なかったように思う。

カラスヤンマ雌:翅のパターン
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出会った個体は、概ね上の画像のパターンの範疇に収まっている。中でも一番多かったのが、下段真ん
中の斑紋型。4枚の翅がべったりと完全に黒く染まった個体は、最後まで見かけなかった。

あくまで狭い範囲で行動した中での印象なので、斑紋パターンの貧多様性(?)はカラスヤンマ全体の
傾向とは言えないだろう。
しかし、年や地域によって微妙に斑紋の出方に変化があるとしたら、これはなかなかロマンがある話だ
と思う。

個体数が多かった、という印象も、経年的に広範囲の調査したものではないので、単なる感覚の話でし
かない。「少ない」と感じた年は、たまたまその数日の気候や気流の問題で、いつも行くポイントに飛
来しなかっただけなのかもしれない。

気軽に行けない遠征だけに、カラスヤンマの出現状況のどこに当たるかは運次第。外れも当たりもある
わけだが、一度当たりを経験してしまうとやめられなくなってしまうのが、遠征というものの魔力だと
思う。
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by brunneus | 2013-07-29 23:26 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 24日

リュウキュウ・その2

リュウキュウをさらに二つ。


昨年も同じようなことを書いた気がするが、普通種の範疇に入るはずのリュウキュウカトリヤンマは、
なかなか出会えないヤンマだ。
沖縄本島にもあちこちに棲息しているのだろうが、棲息環境が薮の奥の湿地というようなピンポイント
でわかりにくいことや、早朝や日没後のかなり暗い時間帯にしか飛ばないこと、ハブの恐怖から産卵場
所の薮に突っ込んでいく勇気が無いことが、出会いを薄くしているのだろう。

今回の出会いも偶然だ。
トビイロヤンマを求めて黄昏の水田地帯を駆け回っていた時、民家脇のバショウの木陰で何かが忙しな
く上下運動をしているのに気付いた。いかにも怪しいその気配を目がけてネットを振るう。暗闇から、
「カサッ」という軽い音したのでネットを折り返すと、その中で暴れていたのは予想通りのリュウキュ
ウカトリヤンマの雌だった。

リュウキュウカトリヤンマ雌:体長68mm
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濃褐色の体色と大きな複眼は、薄暗い環境で背景にとけ込むためのもので、トンボ科のオオメトンボと
全く同じ配色だ。黄昏時の活動に特化したようなその風貌は、亜熱帯におけるカトリヤンマの進化形を
見るようで、魅力的だ。

このポイントでは数年に一度はちらっと姿を見るのだが、いったいどこから発生しているのだろう。


もうひとつのリュウキュウは、涼しげな木陰の小流を可憐に飛び交うモノサシトンボの仲間。

リュウキュウルリモントンボ雄:体長45mm
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狂気に満ちた光と熱の攻撃から逃げ込んだ小川の畔でこのトンボを見ると、その涼やかな青色にほ
っと一息つく気持ちになる。涼やかな青色ではあるが、北方系のルリボシ色ではなく、あくまで亜
熱帯の情熱的な青色だ。

国内では奄美・沖縄諸島限定分布の種。控えめではあるが、このトンボも沖縄を代表するトンボだ
と思う。
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by brunneus | 2013-07-24 14:08 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 17日

リュウキュウ

動植物の和名について。

一般には、動植物に与えられる和名はその種の外見的、生態的特徴から付けられることが多いが、個人
的には、和名は短ければ短いほど好きだ。

トンボで言えば例えばリュウキュウルリモントンボ(琉球/瑠璃紋/蜻蛉)というような形容部分が多
い和名よりも、ミナミヤンマ、ミナミトンボ、エゾトンボというような、地域名を冠したシンプルな名
前は、ある種の力強い響きがあるように思う。

キョウトトンボ、カゴシマヤンマ、ヤマガタトンボ、シズオカヤンマ、、、。
うん、なかなかいい響きだ。実在するトンボでは、ナニワトンボ、というのも良いネーミングだと思う。
トウキョウトンボ、サイタマヤンマ、チバサナエ、、、。??
何故か関東地方の名前を冠したトンボはピンと来ない。結局、単純に旅情の有無、ということなのだろ
うか。


そしてこのトンボ。

リュウキュウトンボ雄:体長53mm
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リュウキュウトンボ雌:体長54mm
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亜熱帯沖縄の名前を冠した、シンプルな和名。その名の通り、南西諸島中部の亜熱帯地域のみに分布す
る。外形も、斑紋が殆ど無くシンプルそのものだが、ほっそりとした体型と、真夏の太陽をギラギラ反
射する金緑色は、琉球蜻蛉の名前が相応しいと思う。

同じ時期に見られるこの甲虫。

リュウキュウツヤハナムグリ:体長20 - 25mm
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激烈な太陽光を反射させながら、真っ昼間の街中を元気に飛び回る。内地の普通種シロテンハナムグリ
に大きさも体型も近いが、その強い光沢は亜熱帯の強い日差し対策なのだろうか。
沖縄では掃いて捨てるほどの普通種で、名前も長ったらしいが、そのシンプルで力強い姿形は、沖縄の
風景がとてもよく似合う。
沖縄にいるとあまりこの虫に気持ちが向かないが、東京で標本を眺めていると、現地で過ごした狂おし
い日々が、鮮明に蘇ってくるから不思議なものだ。
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by brunneus | 2013-07-17 00:25 | 沖縄 | Comments(2)
2013年 07月 14日

初物

沖縄シリーズは一旦中断。

一昨日。
遠征後、久々の休みが取れたので山梨方面に採集行を予定していたが、朝起きてみると身体が動かず、
山梨行きはあっさり諦めた。早くも夏バテかもしれない。

何もしないのも勿体ないので、近場のマルタンヤンマの産地に様子を見に行った。

17時30分。ポイント到着と同時に、谷間の上空を悠々と旋回するオニヤンマの未熟個体が視界に飛
び込んできた。

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ミナミヤンマ属を彷彿とする、あっぱれな飛びっぷり。いつ眺めても惚れ惚れする。個人的にはオニヤ
ンマが一番輝いて見えるのがこの時期だと思う。

あたりは薄暗くなり、オニヤンマたちはいつしか森の中へ帰っていったが、時々せせこましく通過する
ヤブヤンマ以外は、マルタンらしきトンボは飛ばない。

18時30分。今日はもう駄目だろう、と諦めかけていた時、前方の草上に一瞬、妖しい気配が見えた
気がした。間違いない、向かって来ている。
数秒後、頃合いを見計らって竿を振ると同時に、目の前に青黒いヤンマが飛び出してきた。快音。

マルタンヤンマ雄:体長75mm
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翅は褐色に煙り、すっかり成熟した個体だった。
この個体以降、追加は現れずにこの日は終了した。

目の醒めるような青色を見て、関東の夏がやってきたことを実感する。
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by brunneus | 2013-07-14 02:04 | 東京 | Comments(0)
2013年 07月 13日

時の運

遠征で南方を訪れると時々見かけるのが、オキナワツノトンボ。

オキナワツノトンボ雌:体長約30mm
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内地にも数種のツノトンボ類が分布するが、オキナワツノトンボ雌の後翅後縁の褐色帯がどこかミナミ
ヤンマ類のようで、見かけるとつい手に取ってしまう。

いつもは谷間の草にぽつんと止まっていたり、夜の街灯の下に落ちていたりと出会いは偶然に頼るしか
なかった。しかし今回、日没後の水田地帯の低空を多数の個体が飛び回る光景を見て、初めて生態の一
部を垣間見た気がした。
飛び方は同所的に飛ぶトビイロヤンマにそっくりで、イグサの葉先を縦横無尽に敏速に飛ぶ。シルエッ
トは小さなハチのようで、ネットに入れるまでは何の虫か見当もつかなかった。採集は苦労したが、手
にした数匹はみな雌だったので、産卵に関係する飛翔なのだろうか。

長く通い慣れたポイントだが、オキナワツノトンボの群飛は初めて見た。生き物、特に昆虫の行動はそ
の日の微妙な気象コンディションが強く影響する。遠征の僅かな滞在期間で、どの昆虫の活動日に当た
るかは運次第だ。

オキナワツノトンボの群飛を次に見られる保証は全くないので、こういう日は少し得をした気分になる。
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by brunneus | 2013-07-13 00:32 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 11日

直翅3種

南方遠征では、トンボ以外にも心惹かれるものがある。例えばバッタ、キリギリスなどの直翅類。

いちばんよく見かけるのがこれ。

ダイトウクダマキモドキ雄:体長約40mm
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ちょっとした住宅の植え込みにも棲息し、夜に街灯に飛来する個体も多い。

今回、初めて出会ったのがこの種。

ナカオレツユムシ雌:体長約40mm
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一見するとダイトウクダマキに似ているが、こうして見てみると色調や全体のフォルムがかなり異な
る。こちらのほうが緑色が鮮やかで、体型もなんとなくシャープで引き締まった印象。内地には分布
していないグループなので、密かに憧れていた種だ。今回は山あいの林道などで時々見かけた。それ
ほど珍しい種ではないようだが、今まで出会わなかったのは気付いていなかっただけなのだろうか。

そして毎度気になる存在。

オキナワキリギリス?雄:体長約50mm
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今回も、海沿いの国道脇の貧相な草地から沢山鳴き声が聞かれた。図鑑によると少ない種類のような
ので、人里離れた草深い環境に棲んでいるイメージを勝手に持っている。貧相な環境に加え、僅か数
百メートルの限られた範囲でしか見られないので内地のキリギリスの逸出個体の子孫ではないかと疑
っているのだが、、。
内地産との違いは、体が大型なこと、翅が長い傾向があること、鳴き声が多少異なることくらいしか
分からない。

もっとじっくり観察したいのだが、生息地は日陰も無い灼熱地獄で、しかもポイントを移動する途中
ということもあり、今回も、もやもやは解決できなかった。

そういえば、いつもは至る所で見られるオキナワヘリグロツユムシが少なかったこと、タイワンクツ
ワムシの鳴き声が一度も聞かれなかったことが印象に残った。同じような風景でも、訪れる度に生き
物の出現状況が変化するところが、遠征が面白い一番の理由だと思う。
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by brunneus | 2013-07-11 00:06 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 09日

虹色をもういちど

トンボは未熟な時と成熟した時とで体色が大きく変わる種類が多い。大抵のトンボは未熟時は全体に色
調が淡く、ぼやけたはっきりしない色彩で、成熟すると見違えるほど鮮やかな色彩に変化することが多
い。

複眼は最も色が顕著に変化する部分のひとつで、複眼が大きなヤンマの仲間はそれがとくに目立つ。
未熟個体は大体の種は灰色がかった鈍い色を帯びることが多いが、トビイロヤンマは未熟個体の複眼も
美しい。

トビイロヤンマ雄 左/成熟個体 右/未熟個体
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未熟な個体の複眼の色は、透明感のあるなんとも言えない色彩だ。桜色というか、桃色というか、、。
この色が成熟すると目の醒めるような空色になるのだから、自然とは不思議なものだ。
かつて多産していた頃は、未熟から成熟まで色々な段階の個体が採れたが、中間的な成熟度の、全体が
虹色を帯びた色彩に衝撃を受けた思い出がある。

もういちど、あの虹色を見てみたい。
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by brunneus | 2013-07-09 00:34 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 07日

増減

夏の沖縄遠征になくてはならないトンボはカラスヤンマだが、自分にとってはトビイロヤンマも同じく
らい重要なトンボだ。

それはごく個人的な理由で、沖縄のトンボに興味を持つきっかけになったヤンマだからだ。その経緯は
このブログ内で何度も書いているのでここでは割愛。

最盛期の面影はもはやどこにもないが、今回も苦戦しながらもいくつか手にすることができた。

トビイロヤンマ雄:体長68mm
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同未熟雄
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このポイントでトビイロヤンマの大群飛が見られなくなって数年経つが、それよりも減少が著しいの
がオオギンヤンマ。数が少ない、というレベルではなく、一頭もいないのだ。
夏のこの時期に多数が見られたのは2006年が最後で、翌年には殆ど姿を見ることができなくなっ
た。その他、アメイロトンボ、ハネビロトンボもこのポイントでは個体数の増減が激しい。
これらのトンボに共通するのは、「移動力が強い、広域分布種」ということ。そしてそれはトビイロ
ヤンマにも当てはまる。
同じヤンマでも、移動する習性のないリュウキュウギンヤンマや、ヤブヤンマの個体数は殆ど変化は
ない。

オオギンヤンマの減少は産地の環境ではなく、日本付近の気流の流れに変化があったのか、遥か南方
の供給地になんらかの環境変化があったのかもしれない、などと無責任な空論をひねり出してみる。
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by brunneus | 2013-07-07 04:13 | 沖縄 | Comments(0)
2013年 07月 03日

儀式

6月中旬から7月上旬は関東は梅雨まっただ中だが、沖縄地方は一足先に夏が始まっている。
この時期に沖縄へ行くと、意識の中で季節が夏に切り替わる。これは自分にとって大切な儀式で、南方
行きなしに夏を迎えることは考えられない。

毎年、この儀式をどこで執り行うのか悩むところだが、やはり沖縄本島が一番手頃だと思う。
なんと言っても南日本では随一の観光県なので航空各社の競争も激しく、それによりチケットも値崩れ
する。距離としては沖縄よりも近いはずの奄美諸島よりも、「安、近、短」の三拍子が揃った優れた場
所なのだ。もちろん、豪華なホテルでリラックススパ、なんてことをしなければ、の話だが。

とは言うものの、やはりちょっと電車に乗ってマルタンヤンマを採りに行くのとはやはり訳が違う。大
きな心配の一つは、天気だ。簡単に予定が変えられないだけに、いつも出発前はやきもきしながら予報
を見る日々が続く。
今回は、出発前の週間予報では何故か現地で過ごす日だけ雨マークが並び、本気で予定変更を考えたが、
なんと2日前に予報が一変、ずらりと太陽マークが並ぶという大逆転が起こった。

そして現地。

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早朝、静かな東シナ海を背景に音もなく舞うカラスヤンマの群れ。
5年振りに素晴らしい光景を目にすることができた。

目を閉じると、ふわふわと浮かぶ真っ黒なシルエットと、唸るようなクマゼミの合唱が鮮明に蘇る。
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by brunneus | 2013-07-03 12:08 | 沖縄 | Comments(0)