トンボの日々

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2014年 03月 27日

春は出会いと別れの季節と言うが、身近なところでもそれは訪れている。

ここ数年、持ち前の猛烈なエネルギーで関東周辺の様々なムシを求めて動き回っていた、気鋭のハン
ターKくんが関西に引っ越すという。

土曜日。
トンボ仲間のM氏の呼びかけでいつものメンバーが集まり、埼玉各地を巡るお別れ採集会を決行した。
もちろんこの時期はトンボはまだいないので、狙いはスギカミキリ。朝晩肌寒く、若干早いと思われ
たが、気の早い個体に淡い期待を寄せて、杉林へ。


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なかなか良さそうな杉林だ。スギカミキリは、美しく管理された杉林よりも、国道や集落の外れの、
忘れ去られたような貧弱な林に見られる。
期待を込めて、さっそく樹皮をめくってみる。


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出て来るのはサシガメの幼虫ばかり、、、。
場所を移動しつつ探索するが、Kくんが羽脱したばかりと思われるスギカミキリを数個体採った以外
は成果はない。

まだスギカミキリは早い、という認識で全員一致し、オサムシ、マイマイカブリ掘り出し採集に切り
替える。ブログの記事などで時々見かけていた採集法だが、実際に体験するのは初めてだ。持参した
シャベルで良さそうな朽ち木を割っていく。
しかし当然のことではあるが、いつまで経っても何も出てこない。しびれを切らしたAさんが、
「このあたりいいんじゃないー?」とバールで一撃した所から、見事にクワガタの幼虫が出てきた。


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続いて移動した途中で、車中から良さそうな気配を放出する崖を発見。車を止めて、さっそく三々五
々崖を崩しにかかる。「エサキ出た!」「アオオサ出た!」とコールがかかる中、一向に何も掘り当
てられない自分に情けなくなるが、ようやく手応えが。


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結局、アオオサムシを一匹掘り出した所で終了となってしまった。そんな姿を見て哀れに思ったKく
んからエサキオサムシと、途中の河川敷で彼が掘り出したヒメマイマイカブリを手みやげに貰った。


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気付くと日没。
ことごとく、こういうタイプの採集に向いていない自分と、場数を踏んだ人間の眼と嗅覚の良さを再
確認した一日だった。


高知ではムカシトンボとタベサナエ出現の報。東京でも桜が一気に開花した。
関西に行ってからも、気鋭のハンターKくんには仕事なんぞにめげずに、さらに活躍してほしい。
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by brunneus | 2014-03-27 23:54 | 埼玉 | Comments(0)
2014年 03月 22日

大金の島:海編

先日のオオキンカメムシ採集行には、実はもうひとつ楽しみがあった。

オオキンカメムシの産地は、基本的に海沿いにある。ということは、産地のすぐそばで、海採集ができ
るかもしれない。ということは、オオキンカメムシが空振りに終わっても海採集の保険ができるかもし
れない。

こういうことでもなければ、遠征などしないものだ。
そしてその成果の一部。

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上左:イソクズガニ 上右:ヒライソガニ
中:イボイワオウギガニ(脱皮殻)
下左:イソカニダマシ 下右:オウギガニ

海と言っても、現地に行くまではどんな環境が広がっているのか分からなかったが、オオキンカメムシ
の死骸を拾った場所から数分、道の脇に広がっていたのが、波に洗われる岩礁だった。
目的のカメムシを入手できた余裕からか、足取りも軽く岩場に降り立ち、新鮮な海水が供給される潮溜
まりの石を起こすと、ささっと動く影。とっさに取り押さえると、それはイソガニだった。
これに勢いを得て、石を起こす度に新たな生き物が石の下から姿を現す。これは興奮だ。

中でも、手にしてみたかったゴミの塊のようなイソクズガニと、思いがけず出て来たイソカニダマシ、
そして帰り際に岩の上に鎮座していたイボイワオウギガニの脱皮殻。
オウギガニと言えば、画像右下の個体のような甲長2㎝足らずの小さなカニのイメージだったが、脚を
伸ばすと広げた手のひらから軽々とはみ出す程のイボイワオウギガニの大きさには度肝を抜かれた。

干潟の生き物が主体だった昨秋の多摩川河口とは全く違う種構成に、改めて関心した。
海辺の生き物の採集の醍醐味は、次から次へと現れる多様な生物との出会いだと思う。

今シーズンは、海採集が増えそうな予感。
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by brunneus | 2014-03-22 23:29 | 千葉 | Comments(0)
2014年 03月 20日

大金の島

昨年から気になっている虫がいた。その名はオオキンカメムシ。
国内のキンカメムシの仲間では最大の大きさになる種で、オレンジから紫へと変幻自在に輝く艶やかな
体色は、一度見てみたかった。
南方系のカメムシだが、成虫は照葉樹林の葉で越冬するようだ。
さらに、内陸部よりも沿岸地域に越冬地があるらしい、ということまでは分かったが、それ以上の情報
は分からない。

あれこれ調べるうちに、ある地名が浮上してきた。アプローチまでは調べていたのだが、仕事が繁忙期
に入ってしまい、気付けば3月も半ば。暖かくなるとオオキンカメムシは分散してしまうので、遅けれ
ば遅いほど不利になる。もう後は無い。

3月中旬のある日。ようやく心身共に余裕が出たので、勉強の次に苦手な早起きを乗り越えて、サラリ
ーマンを満載した電車に乗り込んだ。

ポイントは東京湾に突き出た小島で、内陸部から越冬地へと次々に移動してくるオオキンカメムシが最
後に行き着く場所としては相応しい。
海からの強風に吹かれながら、ポイントへと向かう。

目指す小島が遠くに見えて来た頃、こんもりと茂った森の脇に広場があった。そこに公衆トイレ。
何かを感じ、トイレの裏側に回り込んだ瞬間にそれは目に飛び込んできた。


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いた!オオキンカメムシ!早々に見つかるとは幸先がいい。さっそく収納に取りかかろうと、虫に手を
触れると、ぽろっと落下してしまった。死んでいたのだ。
よく見ると、あちこちに紫色に光るオオキンカメムシの死骸が転がっている。死骸は残念だが、この先
採れる保証もないので、綺麗なものをいくつか摘む。ここがポイントなのだろうか?
周囲の林縁の葉を見てみるが、それらしき姿は無い。
しばらく探してみたが諦め、とりあえずメインのポイントである島へ向かう。

島は砂州で陸地と繋がっている。砂に足を取られながら渡り、一歩島に踏み込むと、そこは沖縄の森の
ような鬱蒼とした照葉樹林が広がっていた。

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これはいい雰囲気だ。早春の関東だが、ここだけ亜熱帯の香りが漂う。
道はすぐに島の頂上の小広い広場に出た。日当りが良く、強風からも守られて、小さなアブやハチが飛
び交っている。あたりを見回し、何か惹かれるものがある一角へと踏み込む。日光が良く当たる林縁だ。
少し林内へ踏み込み、振り返ると大当たり。


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間違いない、今度は生きた個体だ。収納する瞬間、独特のカメムシ臭が鼻をつく。そしてあたりを見回
すと、、、

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こっちにも、あっちにも、という感じで、あちこちの葉にオオキンカメムシ。
一枚の葉に複数固まる光景は見られなかったが、日の当たる林縁沿いに多くの個体を見ることができた。
時期が遅いかも、、という心配は杞憂だったようだ。

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どう見ても熱帯系にしか思えない虫が、冬の関東に群れる。海からの冷たい風から守られた、小さな温
室のような不思議な島だった。
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by brunneus | 2014-03-20 01:29 | 千葉 | Comments(0)
2014年 03月 18日

アジアの顔

どこかで誰かが言っていた気がするが、昆虫には「地域の顔」のようなのもがあると思う。
トンボでも、北米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアそれぞれの顔がある。

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Tetracanthagyna waterhousei(デジタルイラスト)

画像のトンボは、東南アジアに分布するトゲオヤンマ属の一種。
この仲間は森林内の渓流に棲息し、世界最大のトンボと言われるTetracanthagyna plagiata
属するグループだ。幼虫も含め、国内に分布するネアカヨシヤンマとそっくりで、画像も、ネア
カヨシヤンマを画像加工したもので、色をいじっただけで形はほぼそのまま。
ネアカヨシヤンマが属するグループAeschnophlebia属とこの仲間の分類上の位置はよく分から
ないが、形や色がどこか親しみを感じて、アジアのトンボだなあ、と思うのだ。

全身が褐色、大きな複眼。この特徴から、おそらく日中はジャングルの中にひっそりと静止し、
早朝や日没後の薄暗い時間に、渓流沿いの林道や空き地などを飛び回るのだろう。
全体の雰囲気から、ミルンヤンマのように低空をせかせか飛ぶのではなく、樹冠を悠々と旋回す
るのかもしれない。薄暗い空き地で巨大なトンボが頭上を飛び回るさまは、さぞかし迫力がある
だろう。いや、むしろ実際に体験したら不気味に感じるかもしれない。

そんなことをあれこれ想像しながらデジタルペイントするのが、楽しい。
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by brunneus | 2014-03-18 23:37 | つぶやき | Comments(0)
2014年 03月 13日

ファーストコンタクト・その5

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※上列3頭は全てデジタルイラスト


Eamesの映像「Powers of Ten」が好きだ。
極小のミクロから無限大のマクロな世界へと、自由自在にカメラが行き来する。

ミナミヤンマを初めて知ったのは、いつのことだろう。
その出発点を探して、「Powers of Ten」のカメラのように、広大で混沌とした記憶の宇宙の中を、
ミナミヤンマへと繋がる最初のポイントに向けてダイブしてゆく。
そしてその点から続く線は一本ではなく、他と繋がる様々な線と複雑に絡み合っているのだ。

1995年。
浪人生だった頃、予備校の帰りによく駅前の大きな本屋に寄り道していた。
昔から、センチメンタルな私的風景写真を撮らせたら右に出る者はいない写真家、荒木経惟が大好き
だったのだが、当時は荒木経惟チルドレンこと、長島有里枝やHIROMIX、ホンマタカシなど、若い世
代の「シャッター・アンド・ラヴ」な私写真家が一斉に脚光を浴びた時代でもあった。
そして彼らを発掘した始祖である荒木経惟も、凄まじい創作意欲で次々に作品を発表し、その結果産
み出された写真集が、書店に山積みされていた。彼は呼吸をするのと同じようにシャッターを押して
生きているのだと思う。
ある日、いつものように荒木経惟のコーナーを物色している時に出会ったのが、その写真集だった。
たしか「沖縄烈情」というタイトルだったと思う。
ページをめくるたびに香り立つ、亜熱帯の狂おしく甘美な風景写真に、すっかり魂を持って行かれて
しまったのだ。

1年後。
無事に大学に入学し、怠惰でモラトリアムな大学生活に入ってからも頭の片隅には荒木経惟の沖縄の
強烈な風景がこびりついていた。
当時の自分にとって沖縄はあまりにも遠い別世界だったが、たまたま同じ年に沖縄の大学に進学した
知人がいた。
好奇心と、頭の片隅の亜熱帯の記憶がそうさせたのかもしれない。思い切って大学1年の夏休みに、
友人を連れて那覇の知人を訪ねることにしたのだった。
そこでの体験は強烈だった。
光と熱の暴力的なエネルギー。街中を飛び交う色とりどりのチョウと、街路樹から四方に飛び散るク
マゼミの群れ。
道ばたに落ちる金緑色に輝くハナムグリ。渡嘉敷島のビーチの木陰に群れ飛ぶ、腹が異様に細い見た
こともないトンボ。頭上を覆いつくすガジュマルの茂み。
沖縄そばも、エンダーのルートビアも、ジェフのゴーヤバーガーも、キングタコスも、もちろん強烈
だったが、何よりもそこに存在する人間を全力で拒絶せんとする、亜熱帯の光と熱、そして植物と動
物のエネルギーに完全にやられてしまったのだった。
沖縄から帰ってきてからも、沖縄での日々を反芻して過ごし、何をしていても心ここにあらずの状態
だった。
「南への憧れ」はこの年に始まったのだ。


当時通っていた大学は、八王子の山の中にあった。
校舎の周囲は濃い緑に囲まれ、夏になると様々な昆虫が周囲の林から教室に飛び込んできたが、都心
の住宅街の貧相な自然体験しか持たない自分にとっては、それは驚きの連続だった。幼い頃の生き物
への渇望がいつしか再びむくむくと頭をもたげ、意識を浸食してゆく。
大学では暇を持て余していたので、大学図書館に入り浸っていた。いま思い出してみるとそこは、図
書館というより図書室と呼んだほうがよさそうな貧弱な空間で、蔵書も手垢がついたボロボロのもの
ばかリだったが、そこでもしぜんと昆虫図鑑に手が伸びることが多くなった。そんな中に国産の昆虫
を網羅した「世界文化社」という出版社の大判の図鑑シリーズがあり、普通の図鑑には載っていない
ような無名の虫たちが多く登場していたので、よく借りて眺めていた。
トンボも多くの種類が載っていた。標本写真の状態はあまり良くなかったが、聞いたこともない名前
のトンボの真っ黒な標本を眺めては、生時の色彩の妄想に耽っていた。「ヤンマ」といえばギンヤン
マしか分からない程度の知識に、「サキシマヤンマ」や「トビイロヤンマ」などという名前が次々に
飛び込んできて、その多様性の豊かさに目眩がしたものだ。そしてその標本群のなかに、「ミナミヤ
ンマ」という文字をみつけた。南ヤンマ!!
人を喰ったようにシンプルな名前だが、明快で力強い響き。そして「南」という単語を見つけた瞬間
に、荒木経惟の沖縄烈情が鮮やかに瞼の内側に蘇ったのだった。

この時、「四国南部以南に分布する、大型のオニヤンマの仲間」という図鑑的情報以上のものが、ミ
ナミヤンマに対して芽生えたのかもしれない。
たまたまトンボにそういう名前が付いていたから気持ちが動いたのか、例えば「ミナミクワガタ」と
いう名前の昆虫がいたら、どうなっていたか?それは分からない。
とにかく、それ以降、「トンボと、南への憧れ」は現在まで途切れることなく繋がっている。


ミナミヤンマの分布は四国南部から南西諸島の鹿児島県徳之島までで、行政で言うところの沖縄県に
は分布していない。
しかし沖縄本島には、「カラスヤンマ」という近い種類が棲息し、属島の渡嘉敷島には「アサトカラ
スヤンマ」がいるらしい、ということも、調べるうちに分かってきた。
憧れの沖縄に、ミナミヤンマに近い種類がいるとなれば、これは行くしかない。
大学を卒業した2000年の初夏。最初にターゲットにしたのは、渡嘉敷島だった。狭い島の方がポ
イントを絞りやすい、ということが理由だったが、炎天下の徒歩でのポイント探しは想像以上に辛く、
大苦戦した。しかし本命以外でも、亜熱帯のトンボとの出会いは驚きの連続で、この旅で沖縄のトン
ボ採りにさらにのめり込むことになった。

ミナミヤンマを手にしたのは、カラスヤンマの採集が一段落した2001年の夏だ。乏しい情報を手
に高知県まで行ったのだが、高知のスケールの大きな地形と、灼熱地獄で疲労困憊し、雄を一頭採集
しただけで終わってしまった。
さらにその後2年かけて通い、ようやく満足する成果を得ることができた。
日没後。ミナミヤンマのポイントの帰りの広大な沼地帯の薄暗い畦道を、ヒクイナやヌマガエルの声
を聞きながらとぼとぼ歩く風景は、今でも鮮明に思い出すことができる。

トンボを採るようになったきっかけは、思い出してみれば他にも色々ある気もするが、ミナミヤンマ
と出会っていなければ、ここまでのめり込むことはなかったかもしれない。
ミナミヤンマ類をターゲットとした初夏の南方遠征は、今となっては季節の移り変わりを実感する上
で重要な役目を果たしている。
初夏の亜熱帯を経験することで、身体のリズムが春から夏へと劇的にシフトするのだ。

そして今年も、ミナミヤンマの季節が少しずつ、近づいている。
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by brunneus | 2014-03-13 01:04 | つぶやき | Comments(0)
2014年 03月 07日

ファーストコンタクト・その4

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エゾトンボとの初めての出会いは、1999年の夏だ。

大学四年だった当時はトンボに興味を持ち始めた頃で、情報は図鑑からの断片的な物に頼るしかな
かった。
そんな状態であったので、とりわけ憧れていたネアカヨシヤンマは関東ではとっくに絶滅していて、
図鑑の写真に付されたキャプションの地名「高知県」まで行かなければ見ることは叶わない、と早
とちりしてしまったのも無理はない。

7月に、二回目の沖縄行で衝撃的なカラスヤンマとの初対面を経験したあと、興奮さめやらぬまま、
8月に入るとすぐに、ネアカヨシヤンマを採るべく高知への夜行バスのチケットを予約していた。

そして当日。
夜に新宿を出発したバスは、翌日の午後になってようやく高知駅前に到着した。暇は有り余るほど
あったのだが、立て続けに飛行機に乗るほどの金は無かったのだ。
高知駅からはローカル線に延々揺られ、さらに炎天下を延々歩いた先に、その湿地帯はあった。
陽炎揺らめくガマが繁茂する池の上をひらひらと乱舞するチョウトンボの群れは、暑さで朦朧とし
た意識には幻でも見ているかのように映った。

さっそく手製の竿を出し、ふらふらと湿地を歩き回るが、目的のヤンマらしきトンボは見かけない。
そのかわりに、黒っぽい中型トンボが空中に宙づりになったように停止しながら飛ぶ光景があちこ
ちに見られた。まだ見ぬヤンマの仲間だろうか?ネットを振ると簡単に採れたので取り出して見る
と、全身金緑色のトンボ。これは確かエゾトンボという奴に違いない。ヤンマではなかったのでガ
ッカリし、一匹だけ持ち帰ることにして、あとの個体は見向きもしなかった。
その後は運良く産卵に飛来したネアカヨシヤンマを取り押さえることに成功したのだが、この時以
降、エゾトンボとの出会いはしばらく巡ってこなかった。

関東ではエゾトンボがネアカヨシヤンマより採集難易度が高いことを知ったのは、ずっと後のこと
だ。
数年後、都内二カ所で偶然雄や雌を手にしたことはあったが、狙おうにも情報がなく、自分の中で
はいつの間にかネアカヨシよりも憧れのトンボになっていた。
さらに月日が経ち、トンボ仲間と思い切って東北南部の多産地と言われる場所まで遠征したことが
あったが、そこでも数は少なく、雄でさえ採集には苦労した。
狙って採れるようになったのは、良い産地の情報を得た最近になってからだ。雄はそれほど労せず
に得ることはできるようになり、そのせいで自分の中でのエゾトンボ雄の希少価値はすっかり下が
ってしまった。我ながら随分勝手なものだ。

先日、フェア出品のために標本を物色していて、久々にまじまじとエゾトンボ雄の標本を眺めてい
ると、15年前の灼熱の高知の風景が鮮やかに蘇ってきた。

標本には、私的な物語が詰まっていると思う。
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by brunneus | 2014-03-07 00:49 | つぶやき | Comments(0)
2014年 03月 02日

越境者

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屋久島から南。黒潮に洗われながら点在するトカラ列島にかけて、目に見えない生物界の国境線が存在
する。
「三宅線(九州と種子島、屋久島の間)」、「渡瀬線(トカラ列島南部)」と呼ばれるラインで、この
あたりを境に、南方系と北方系の生物の分布域が分かれるのだ。
その境界は生物群集によって多少異なるが、トンボ類の分布を見る限りでは、種子島、屋久島の南に大
きなギャップがあるように思う。
具体的には、九州以北に分布する国内のトンボ相の核となる種の殆どが、九州南端、もしくは屋久島、
種子島を南限とし、そのラインはきれいに揃っている。逆に南方系のトンボはというと、その北限はか
なり曖昧になる。

上に挙げた写真のトンボはどれも熱帯、亜熱帯を起源とする種だが、個々の種で見ると北限は以下のよ
うになっている。

(一列目左から)
リュウキュウカトリヤンマ:種子島
リュウキュウギンヤンマ:トカラ列島北部
ミナミヤンマ:徳島県
(二列目左から)
オキナワオジロサナエ:(亜種チビサナエ)大隅半島
ミナミトンボ:種子島
(三列目左から)
ベニトンボ:四国
アオビタイトンボ:山口県西端
オオハラビロトンボ:宮崎県南部
(四列目左から)
ハネビロトンボ:四国西部
ハラボソトンボ:九州北部
ホソミシオカラトンボ:屋久島
(最下段)
ヒメトンボ:屋久島

こうして見てみると、種によってその北限ラインはまちまちであることが分かる。
北進傾向が強い南方種と、あまり南進がみられない北方種の違いとは何だろう。
南方種が飛び石伝いに北上できるのであれば、北方種も同じように南下できないのだろうか。
木立があり小規模な水域であればどこにでも棲息できるマユタテアカネなどは、奄美諸島やそれ以南の
島々にも分布していても良さそうなのだが、、。(実際に台湾には分布しているらしい)

気流の関係か、はたまた他の生物との競合関係なのだろうか。
フェアで売れ残った標本を眺めながら、あれこれ考える至福の時。
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by brunneus | 2014-03-02 01:53 | つぶやき | Comments(0)