トンボの日々

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2017年 07月 30日

パイヌシマ2017・その9

先島諸島特産の甲虫と言えば、身近なところではチャイロカナブンが挙げられるだろう。
宮古諸島、八重山諸島それぞれで亜種に分化しているが、与那国亜種、宮古亜種は手にしたことがない。

昨年の遠征では何故か目撃が散発的で、偶然目の前を通過した一匹しか採集することができなかった。
こういう類いの虫は、出会うと嬉しいが、わざわざ探す気にはならない。沢山いるスポットを発見でき
ればいいが、そうでなけでば昨年のように貧果になってしまうのだ。

今回は初日、ヒメキトンボの池の脇道でチャイロカナブンが沢山群れ飛んでいた。頭上の低木の梢付近
を何匹かが飛んでいるのを見て気付き、樹液でもあるのかと探してみたが、見当たらない。目が慣れて
くると、足元の草むらにもぶんぶん飛び交っているのが見えてきた。どうやら摂食のために集まってい
るわけではなさそうだが、繁殖に関係する行動なのだろうか。


チャイロカナブンを眺めると、いつも「猿」という単語が浮かんできてしまう。

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長い前脚、そして淡褐色の身体。淡褐色に見える部分を拡大すると、、

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けむくじゃら。
まさに、毛皮を纏った甲虫界の猿。
チャイロカナブンは内地のカナブン類よりも身軽で、飛んでいる個体をネットに入れてもその中で延々
と飛び続けている。外殻が硬い甲虫は、鈍重で飛ぶことに対しておっくうな印象があるが、チャイロカ
ナブンはむしろ、飛ぶことを楽しんでいるようにさえ見える。このあたりも身軽なテナガザルにだぶる
のかもしれない。

八重山にはもう一種、内地のアオカナブンをさらに大型にしたような、美麗極まりないサキシマアオカ
ナブンが棲息している。調べてみるとこれがどうもかなりのくせ者のようで、どこでどのようにして採
るのか皆目見当もつかない。
サキシマヤマトンボのように、いつか偶然でも手にできる時がやってくるのだろうか。








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# by brunneus | 2017-07-30 23:37 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 24日

パイヌシマ2017・その8

南方に行くと、トンボと同じくらい出会いを楽しみにしているのが、海辺の甲殻類。本格的に目を向け
始めてからまだ日が浅いので、どこに何がいるのかさっぱり分からない。それだけに、訪れる度に違う
出会いがあり、刺激的だ。

今回の旅では潮汐のタイミングが悪く、ちょうどトンボの繁忙時間帯に干潮が重なってしまったので、
干潮が狙い目のマングローブに棲息する面々との出会いは諦めていた。
しかし、昨年見つけた、港のすぐ裏の小さなマングローブ干潟のことを思い出し、島に渡ったすぐ後に
覗いてみることにした。

干潟の大部分は海水に没していたが、最奥部までは海水が届かないらしく、一部砂泥が露出している区
域がある。これは希望が持てるかもしれない。岸辺から身を乗り出して、まず目に入ったのが赤い粒。

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ベニシオマネキ!
そっと近づいてみる。

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間違いない。
しかしここで大きな失態に気付く。カニ採集の秘密兵器、移植ゴテを忘れてきてしまったのだ。穴に隠
れたカニを枝や指で気長にほじるわけにもいかず、思案に暮れた結果、近くの商店で弁当用のプラスチ
ックフォークを購入。これが意外に威力を発揮した。

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ベニシオマネキ:暗色型と紅色型

干潟には真紅のタイプと黒地に青い紋が入るタイプがいたので、しめた、2種のシオマネキを同時に採
集!と現地ではほくほくしていたが、帰宅して調べるとベニシオマネキの色彩変異らしい。カニにこん
な顕著な変異があること自体驚きだ。

ベニシオマネキは、甲殻類に興味を持つきっかけになったカニだ。
1999年。この時期はまだ、特に目的もなく沖縄を放浪していたのだが、たまたま訪れた石垣島の河
口の干潟で、このカニを見て衝撃を受けた。カニと言えばザリガニかサワガニ程度の色と形しか見たこ
とがなかったので、内地とは全く異なる、その南国情緒あふれる色彩と形態にひと目惚れしてしまった
のだ。
それ以来、南方を旅する度にこのカニとの出会いに淡い期待を寄せていたのだが、場所や時期が悪いの
か、叶わなかった。18年目にしてようやく思いが実った。

そしてもう一つの出会い。
夢中になってベニシオマネキをほじくっていると、足元に岩の割れ目があることに気付いた。何となく
気になったので覗き込んでみると、暗闇で真っ赤な眼がぎらりと光り、一瞬たじろく。この眼の持ち主
は、、。
その日の夜、干潟が干潮になった時間を見計らって再び訪れてみると、懐中電灯に照らされた巨大なカ
ニが泥に上に立ちすくんでいる。いきなり手を出して返り討ちに遭いたくないので、まず靴で踏みつけ
てから慎重に取り出す。

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クマドリオウギガニ

ノコギリガザミに次ぐ、亜熱帯のマングローブの主。とてもではないが、この強大なハサミの間に指を
入れてみようとは思えない。そして「隈取り」の由来がこれ。

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大迫力。確かに歌舞伎役者の顔だ、、。

ベニシオマネキやクマドリオウギガニは自分にとって亜熱帯のシンボル的な存在で、そういうものと触
れ合うことで、亜熱帯の懐にまた一歩、近づいた気がした。

次に訪れる時は、どんな刺激的な出会いが待っているのだろう。








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# by brunneus | 2017-07-24 00:49 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 19日

パイヌシマ2017・その7

亜熱帯でほっと一息つけるのは、日没後と夜、そして日の出前の僅かなひととき。山の尾根から太陽が
姿を現すと、あたりは熱と光の暴力的な世界へと一変する。

そんな灼熱の地獄から逃れるように、ジャングルに囲まれた渓流に駆け込んだ。足元の日だまりには、
コナカハグロトンボがちらちらと舞う。長靴を通して心地よく冷えた水の感触が脹ら脛に伝わってくる。
背後の斜面から響く、タイワンヒグラシのヒステリックな耳鳴りのような声を聴きながら石に腰を下ろ
して放心していると、目の前に黄色っぽい小さなトンボがふらふらと現れた。ヒメホソサナエだろうか。
正体を確認すべく、脇に置いた竿を手に取りトンボの動きを注視する。

トンボはさっと水面を掠めて再び舞い上がった。水飲み行動だ。まずい。このままでは飛び去ってしま
う。体勢が整っていなかったが、竿を振る。「かさっ」という微かな音。

頭の中にヒメホソサナエの雌のイメージを浮かべながらネットの中を覗き込んで、息を呑んだ。


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サキシマヤマトンボ雌

去年、まぐれで雄を採った全く同じ島、同じ場所で、今度は雌を手にしたのだった。しかも今回手にし
たのはまだ未熟な個体。サキシマヤマの時期は既に末期のはずだ。さらに雄ならまだしも、サキシマヤ
マの雌なんて、どこでどうやって採ればよいのか見当もつかない。
このことは何度も書いているが、幸運とは、全く予想もしない時にひょっこりと目の前にやってくるも
のなのだ。

今回の最大の目標、イリオモテミナミヤンマは最後まで姿を見せなかったが、サキシマヤマトンボの雌
と出会えただけでもう充分。これ以上の成果を望むのは欲張り、というものだ。

八重山最高!









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# by brunneus | 2017-07-19 22:18 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 16日

パイヌシマ2017・その6

関東でオニヤンマを見かけても、「ああ、いるね」で済ませてしまうことが殆どだが、南西諸島では話
が違ってくる。
棲息可能な環境が多くあるにも関わらず、何故か南西諸島ではオニヤンマを見る機会が少ない。しかも
奄美大島以南では島ごとに変異が顕著で、八重山産は東南アジアに分布する別種の北限とされている。
この微妙な変化が面白く、南方遠征で姿を見かけると本気で追い回してしまう。

遠征二日目の朝。
オオキイロトンボの狂乱の真っ最中に、立木の梢を周回する巨大なトンボが目に入った。考えるまでも
ない。乱舞するオオキイロトンボは放り出して駆け寄り、竿を全開にして射程に入るのを待つ。背伸び
してぎりぎり届く高さを不規則に飛ぶので全く自信は無かったが、ここぞという瞬間に振ると、空中か
らシルエットが消えた。

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ヒロオビオニヤンマ雄

昨年の遠征では全く姿を見ず。2012年の遠征では雌を、2010年では雄を手にしている。雄は実
に7年振り。ヒロオビオニヤンマは雌の翅の付け根が橙色になることが大きな特徴だが、雄もやはり一
見して内地のものとは雰囲気が異なる。その理由は腹部下側の黄斑拡大で、裏返してみるとそれがいっ
そう顕著。「黄色いオニヤンマ」という形容がぴったりだ。

八重山でのヒロオビとの出会いは、未熟、もしくは成熟したての個体の摂食飛翔だ。その日にどこを飛
ぶかは全くの運任せなので、今回は幸運にぶつかった、ということなのだろう。


そしてその後、今回の遠征中最大の幸運にぶつかることになる。







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# by brunneus | 2017-07-16 00:46 | 沖縄 | Comments(0)
2017年 07月 14日

パイヌシマ2017・その5

オオギンヤンマを最後に手にしたのはいつだろう。
記録を辿ってみると、2006年の山原が最後だった。2007年は姿を目撃したが少なく、採集には
至らず。2008年以降は一匹も見ていない。
移動性の強いオオギンヤンマの減少は、環境の変化や採集圧ではなく、はるか南方の供給地から飛来す
る際、気流が変わったか、なんらかの理由で山原まで到達できなかったのではないか、と考えている。
2006年以前の山原ではごくありふれたヤンマであったので、改めて採集しようなどという気が起き
なかった。しかし気付いてみると、その姿はない。
2015年もその姿は無かったが、その年の遠征の前後に行った仲間からの情報では、オオギンヤンマ
は複数いたらしい。こうなると気流云々ではなく、自分の日頃の行いが原因、、という疑いが強くなっ
てくる。

ともかく、オオギンヤンマはまともに撮影を始めてから一度も手にしていなので、是非とも出会いたか
った。実は昨年の八重山でも姿は見ているのだが数は少なく、炎天下の岸辺で待ち続けるという状況に
音を上げて、ついに採集はならなかった。

そして今年。昨年姿を見た池で、再びオオギンヤンマと対峙する。
オオギンヤンマは広大な範囲を縄張りに持ち、一度目の前を通過するとなかなか戻ってこない。
頭上のオオキイロトンボを収納した次の瞬間、足元の岸辺に飛び込んできて、一瞬ホバリングする大型
ヤンマが目に入った。体勢は整っていなかったが、フルスイング。快音。

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思わずガッツポーズが出る。
11年越しの念願が叶った瞬間だった。そして是非やってみたかったのがこれ。

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Anax3種の夢のコラボレーション。
こうなるとオオギンヤンマの雌も、、と欲が出てしまうが、それは来年以降に取っておこう。希望は少
しづつ叶えるのがいい。








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# by brunneus | 2017-07-14 00:55 | 沖縄 | Comments(0)