トンボの日々

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2017年 10月 09日

マダラヤンマ考

マダラヤンマは、一般的には海岸近くの抽水植物が繁茂した開放的な池沼に棲息する、とされている。
言わば「低地のヤンマ」で、北関東以北の産地は概ねこの条件に合致すると思う。震災で被災した東北
の太平洋岸地域に雨水が溜まり、そこへガマなどの抽水植物が侵入、数年でマダラヤンマ天国が出現し
た事実は有名だ。

そこでこのペア。

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恐らく、国内のマダラヤンマの産地で最も標高が高い地域で得た個体。
マダラヤンマは、不思議なことに中部地方では内陸部の山岳地域に分布している。中部地方に限って言
えば、「山地のヤンマ」ということになる。
この二面性がマダラヤンマを魅力的にしているのだが、なぜこのような分布上の矛盾が起きるのだろう
か。
ヒントになったのは、中部地方のいきつけの場所。上のペアを得た場所でもある。
このポイントは開放的な池が点在するオオルリボシヤンマが多い環境だ。しかし訪れるたびにマダラヤ
ンマが飛ぶのを見、一度だけだが雌の産卵も確認している。初めて見た時は、全くの想定外で何かの間
違いかとも思ったが、どうやらそうではないようだ。

ちなみに環境はこんな感じ。

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マダラヤンマは移動性が強い種なので、ふらっと本来の生息地ではない場所に現れることはあるが、気
になったのは雌の産卵。マダラヤンマの雌は、生きた植物には産卵せず、水面に浮いたり斜めに傾いた
枯死部分に産卵する。雌は、こうした充分に水に浸かって軟らかくなった枯死組織を好むのだろう。
もしかしたら軟らかい枯死植物があれば、「繁茂する抽水植物群落」は必要ないのではないか?

移動力が強いことと、軟らかい枯死組織を好むこと。そこで妄想してみる。

マダラヤンマは、かつて日本が寒冷だった頃、各地に広く分布していた。
持ち前の移動力を駆使し、低地から山地まで、我が世を謳歌していた時代があった。しかし温暖化が始
まり、ギンヤンマなど競合種が侵入して分布域が狭まったが、まだ戦前までは都内などにも生息地があ
った。その後、平地にある池や湿地が徹底的に潰され消滅。結果的に、未だ灌漑用に活かされている溜
め池が多く点在する中部地方の山岳地帯に生き残った、、。

思いつきをコラージュしただけだが、こんなふうに、ロマンのある戯れ言をこねくり回すのが好きだ。

そんなマダラヤンマのシーズンも、もうすぐ終わる。





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# by brunneus | 2017-10-09 22:02 | つぶやき | Comments(0)
2017年 10月 04日

主役

9月下旬。
そろそろキトンボの生殖活動が始まっている頃と見て、長野の高原へ。
ポイントの風景はまだ青々としているが、水辺の植物の勢いは衰え、所々に褐色が混じっている。

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天気は快晴、申し分ない。水面が秋の太陽を眩しく反射している。
頭上には何頭ものオオルリボシヤンマ。昨年訪れた時はオオルリボシが少なく心配したが、それはどう
やら杞憂に終わったようだ。
準備をしていると、向こうからネットを持った人影が、、。良く見ると、なんと同好A氏。考えること
は同じだったようだ。短い立ち話の後、忙しそうに別ポイントへ向けて立ち去って行った。相変わらず
のエネルギッシュさだ。

足元に視線を落とすと、さっそくオレンジ色の塊が飛来。キトンボ産卵。

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時間を追うごとにキトンボ産卵が増えてゆく。視界に入るだけで何カップルいるだろうか。キの字に連
なったオレンジ色が、あちこちで上下運動する素晴らしい風景。
キトンボの産卵を楽しみつつ、岸辺の草をネットで揺らしながら歩き回る。時々「ガサッ」という音と
共に、やや腹を下に曲げた特徴的なヤンマの雌のシルエットが飛び出す。オオルリボシ雌。警戒してホ
バリングする雌に視線を釘付けにして一歩を踏み出した瞬間、足元から思いも寄らぬトンボが飛び出し
てきた。マルタン雌!関東では普通種だが、高原での優先順位はオオルリボシよりも上。ここでは数年
振りに姿を見た。ターゲットをマルタンに切り替える。
無事にマルタンを採集し、一息。ふと頭上を見上げると、細身の小振りのヤンマがふわふわと風に乗っ
て漂っている。シルエットだけでも充分判別可能。竿を伸ばしてふわりとネットに誘い込む。マダラヤ
ンマ雄。今年もここで出会うことができた。

そしてこの日のサプライズ。
あたりを一周して再び戻ると、オオルリボシ雌がよく産卵に訪れる池の隅を、見慣れない黒っぽいヤン
マがホバリングしている。大きさはオオルリボシくらいだが、後ろに真っ直ぐ伸びた腹に見覚えがある。
さっと振ってネットの中から出してみると、やっぱり。このポイントでは初となるルリボシヤンマ雄だ。

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終わってみれば、ポイントの主役が全て揃った一日だった。オオルリボシもキトンボも、ほぼ例年通り
の出具合。
オオルリボシとキトンボだけでも充分魅力的なのだが、この場所が面白いのは、思わぬトンボが出てく
ることだ。今回で言えばルリボシヤンマ。通い始めた頃はルリボシも来るだろうと探しまわったが、姿
を見つけることは出来なかった。何かの要因でルリボシヤンマに嫌われているのだろう、と無理矢理納
得していたのだが、やはりいるのだ。近くにある隠された池からの飛来なのかもしれない。

今年はもう訪れることはないだろう。最高の形で長野遠征をしめくくれて満足。







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# by brunneus | 2017-10-04 22:59 | 長野 | Comments(0)
2017年 09月 29日

呪いは解けた

正直、前回の採集行でマダラヤンマは懲りたので、今年はもう終わりにしようと思っていた。しかし晴
天予報を見ると、むくむくとまた気持ちが膨らんでゆく。

今回は海にほど近い秘密の池を訪れてみたが、快晴適温にも関わらず、雄の縄張りは不活発。胴長を履
いて入水すると、目の前には食事中の雄。

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この時期の主食はアカネ類らしい。
池の中では全神経を研ぎすませて、ガマのジャングルの中を巡回する。広大な池の中で産卵中のマダラ
ヤンマの雌に出会うのは運頼みだ。その運を引き寄せるためにも、歩みを止めずにひたすら水の中を歩
き続けるしかない。
この日はまだ日が高いうちに、「幸運の音」つまりマダラヤンマの雌がガマの根元から飛び立つ「カサ
ッ」という微かな音に巡り会うことができた。

そして午後。
西に傾いた光が、ガマの群落を黄金色に染める。

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雌の産卵のハイタイムに入る頃だ。今までにも増して入念に探索するが、雌どころか雄も飛び出さない。
そして虚しく日没を迎えるが、このまま引き下がるわけにはいかない。最後の足掻きで黄昏飛翔のポイ
ントを探す。
空高く舞うアカネの摂食が終わる頃。池に隣接した草むらを歩いていると、視界を白い小型のヤンマの
シルエットが駆け抜けた。急いで追うが見失う。少し歩くと、今度は灌木の梢を同じ形の影が狂ったよ
うに宙返りしている。あれはマダラヤンマか?
竿を手に構えるが、予測が付かない変幻自在の飛び方に翻弄される。まるで八重山で見たアメイロトン
ボの摂食飛翔のようだ。何度かのニアミスの末に、ようやく快音。やはりマダラの雌!
この日は他にも数匹、同じように路上や梢を狂飛する個体を目撃。

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幸運なことに、三年振りに青色型の雌も手にできた。
北関東で一度だけ見た記憶では、マダラヤンマの雌の黄昏飛翔は、アシ原の上の広範囲を多角形を描い
て飛び回る、、というものだったので、今回のようなパターンは全くの予想外。
複数の個体が同じような飛び方をしていたので、これがここでのスタンダードなのだろう。

マダラヤンマの新たな一面を垣間見た日。前回の呪いは完全に解けたようだ。





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# by brunneus | 2017-09-29 00:21 | その他 | Comments(0)
2017年 09月 23日

ルリボシ三昧

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つい三ヶ月前、サキシマヤマだのイリオモテミナミだの騒いでいたのが嘘のように、頭の中はルリボシ
一色に染まっている。
秋風が吹くと誰もがサンマとビールが恋しくなるように、やはり季節の流れには抗えないということだ
ろうか。
オオルリボシヤンマやマダラヤンマの産地は高原や北方であることが多く、現地では一足先に秋色に染
まった風景で一日過ごすことになる。この体験が、頭の中から亜熱帯の残り香を一掃するのに役立って
いることは間違いないだろう。

モズの高鳴きと、遠くの林から響くチッチゼミの声。頭上を悠々と舞うオオルリボシの雄と、微かな翅
音を残して足元の岸辺から飛び立つ雌。
この時期のトンボ採りは、汗だくになって頭上のトンボを追い回す真夏とはまた別の、染み入るような
心地よさがあるように思う。

そして再び、足は深まった秋の世界へと向かう。









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# by brunneus | 2017-09-23 00:16 | その他 | Comments(2)
2017年 09月 17日

呪われた木曜日

マダラヤンマの季節。
今年も、虎視眈々と決行するチャンスを窺っていた。
休みの日と晴天予報がまんまと一致した日。早朝に家を出る直前に念のため再度予報を見て、晴れマー
クがずらりと並んでいるのを確認してから電車に飛び乗った。
そして、現地で待っていたのはこんな空。

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これは何かの間違いだろうか。それでも来てしまったからには、やるしかない。竿を出して、入水する
のを待っていたかのように、さーっと雨が降り出す。
午後になり、ようやく太陽が顔を出すが、今度は西から強烈な風が吹き出し、いっこうに止む気配がな
い。例えて言うなら、80キロ程のスピードを出した車から顔を出した時に額を打つ風が、常に吹いて
いる状態。この風で、辛うじて飛んでいたオオルリボシもどこかへ行ってしまった。
夕方になると風は止んだが一気に気温が下がり、ヤンマどころかアカトンボも姿をみせず、最後は突如
発達して接近してきた雷雲に巻かれ、豪雨で強制終了。

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トンボがいない水面をひたすら眺め続けた一日。
今年は休みの木曜日が定期的に悪天になる循環が続いていたが、この期に及んで再び悪天。しかも予報
で晴天が確約されていたはずなのだ。呪われた木曜日と言うほかない。

当然ながらマダラヤンマも少なく、一日通して目撃したのは雄は4匹ほど。辛うじて雌を一匹手にでき
たのは不幸中の幸い、というか奇跡に近いのかもしれない。

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そろそろ厄払いに行くべきだろうか。







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# by brunneus | 2017-09-17 13:39 | つぶやき | Comments(0)