トンボの日々

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2017年 10月 14日

終わりの季節

数日前。
「もう訪れることはないだろう」という舌の根も乾かぬうちに、突発的に用事が出来たので、それに便
乗して再び高原へ。

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橙色に色付いた葉と、青空のコントラストが素晴らしい。シラカバの黄葉はほんの少し先のようだ。
さっそく岸辺を周回すると、ふらふらとヤンマが足元の日だまりに降り立った。

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よく見ると、疲れ果てたルリボシヤンマ雄。暗がりを好むヤンマのはずだが、エネルギー補給の日光浴
なのだろう。

やがて足元から「がさっ」という例の音。

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オオルリボシヤンマ雌。近い場所を移動しながら一心不乱に産卵している。
さらに歩くとまた発見。あまりに安定して産卵しているので、写欲が出てきた。

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少し先にまた別個体。さらに接近してみる。

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これはもう少しでレンズに翅が触れるほどの距離。

オオルリボシに限らず産卵中のヤンマの雌は気配に敏感で、普通はめったなことでは接近できないが、
この日はどの個体もいとも簡単に近付けた。これは残り少なくなった体力の中で、自らの身の危険より
も子孫を残すことを優先させる、本能のようなものなのだろうか。

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ろくに採集もせず、短時間の滞在だったが、じっくり雌たちに向き合えた。
この場所を訪れるのは今度こそ本当に最後。心の中のトンボシーズンも、ゆっくりと終わりを迎えよう
としている。










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# by brunneus | 2017-10-14 00:14 | 長野 | Comments(0)
2017年 10月 11日

秋色

10月に入ると関東では気温が下がり、季節が一気に進んだようだ。街路樹で鳴くアオマツムシの声も
弱々しく、たまに聴こえるアブラゼミの鳴き声は息も絶え絶え。生命の気配が日一日と少なくなってい
く。
前回の訪問から一ヶ月。ようやく気温が上がったある日、「あの音」を聞きたくなって、都内近場のル
リボシヤンマのポイントへ向かった。

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山里の柿はすっかり色づいている。

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虫の世界もすっかり秋色。

ポイントに到着すると、静かに岸辺を歩きながら、耳を澄ます。
一周目。反応なし。一ヶ月前にあれだけ沢山いたタカネトンボは、影も形もない。
二周目。足元から「かさっ」という音。これだ。
動きを止めて待つと、水草の茂みから赤茶色のヤンマが飛び出してきた。しばらくあたりを警戒してホ
バリングするが、やがてまた近くの茂みへと降下してゆく。しっかりと着地点を見届けてから、そっと
ネットを被せる。ルリボシヤンマ雌。

三周目。池の奥の日だまりを中型ヤンマが飛び回っている。ルリボシヤンマより小型だ。不規則に飛ぶ
ので翻弄されるが、さっと振ったネットに偶然入った。このポイントの定番、ミルンヤンマ雄。

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その後も、ルリボシヤンマ雄のパトロールと雌の産卵を確認。ルリボシヤンマは最後の活動ピークに入
っているようだ。
正味一時間と少ししか滞在できなかったが、秋の里山のトンボを充分に味わえて、とても満足。

今週末から一気に気温が下がり、天気も下り坂の予報。ルリボシヤンマは、これが見納めになるかもし
れない。






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# by brunneus | 2017-10-11 12:22 | 東京 | Comments(0)
2017年 10月 09日

マダラヤンマ考

マダラヤンマは、一般的には海岸近くの抽水植物が繁茂した開放的な池沼に棲息する、とされている。
言わば「低地のヤンマ」で、北関東以北の産地は概ねこの条件に合致すると思う。震災で被災した東北
の太平洋岸地域に雨水が溜まり、そこへガマなどの抽水植物が侵入、数年でマダラヤンマ天国が出現し
た事実は有名だ。

そこでこのペア。

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恐らく、国内のマダラヤンマの産地で最も標高が高い地域で得た個体。
マダラヤンマは、不思議なことに中部地方では内陸部の山岳地域に分布している。中部地方に限って言
えば、「山地のヤンマ」ということになる。
この二面性がマダラヤンマを魅力的にしているのだが、なぜこのような分布上の矛盾が起きるのだろう
か。
ヒントになったのは、中部地方のいきつけの場所。上のペアを得た場所でもある。
このポイントは開放的な池が点在するオオルリボシヤンマが多い環境だ。しかし訪れるたびにマダラヤ
ンマが飛ぶのを見、一度だけだが雌の産卵も確認している。初めて見た時は、全くの想定外で何かの間
違いかとも思ったが、どうやらそうではないようだ。

ちなみに環境はこんな感じ。

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マダラヤンマは移動性が強い種なので、ふらっと本来の生息地ではない場所に現れることはあるが、気
になったのは雌の産卵。マダラヤンマの雌は、生きた植物には産卵せず、水面に浮いたり斜めに傾いた
枯死部分に産卵する。雌は、こうした充分に水に浸かって軟らかくなった枯死組織を好むのだろう。
もしかしたら軟らかい枯死植物があれば、「繁茂する抽水植物群落」は必要ないのではないか?

移動力が強いことと、軟らかい枯死組織を好むこと。そこで妄想してみる。

マダラヤンマは、かつて日本が寒冷だった頃、各地に広く分布していた。
持ち前の移動力を駆使し、低地から山地まで、我が世を謳歌していた時代があった。しかし温暖化が始
まり、ギンヤンマなど競合種が侵入して分布域が狭まったが、まだ戦前までは都内などにも生息地があ
った。その後、平地にある池や湿地が徹底的に潰され消滅。結果的に、未だ灌漑用に活かされている溜
め池が多く点在する中部地方の山岳地帯に生き残った、、。

思いつきをコラージュしただけだが、こんなふうに、ロマンのある戯れ言をこねくり回すのが好きだ。

そんなマダラヤンマのシーズンも、もうすぐ終わる。





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# by brunneus | 2017-10-09 22:02 | つぶやき | Comments(0)
2017年 10月 04日

主役

9月下旬。
そろそろキトンボの生殖活動が始まっている頃と見て、長野の高原へ。
ポイントの風景はまだ青々としているが、水辺の植物の勢いは衰え、所々に褐色が混じっている。

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天気は快晴、申し分ない。水面が秋の太陽を眩しく反射している。
頭上には何頭ものオオルリボシヤンマ。昨年訪れた時はオオルリボシが少なく心配したが、それはどう
やら杞憂に終わったようだ。
準備をしていると、向こうからネットを持った人影が、、。良く見ると、なんと同好A氏。考えること
は同じだったようだ。短い立ち話の後、忙しそうに別ポイントへ向けて立ち去って行った。相変わらず
のエネルギッシュさだ。

足元に視線を落とすと、さっそくオレンジ色の塊が飛来。キトンボ産卵。

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時間を追うごとにキトンボ産卵が増えてゆく。視界に入るだけで何カップルいるだろうか。キの字に連
なったオレンジ色が、あちこちで上下運動する素晴らしい風景。
キトンボの産卵を楽しみつつ、岸辺の草をネットで揺らしながら歩き回る。時々「ガサッ」という音と
共に、やや腹を下に曲げた特徴的なヤンマの雌のシルエットが飛び出す。オオルリボシ雌。警戒してホ
バリングする雌に視線を釘付けにして一歩を踏み出した瞬間、足元から思いも寄らぬトンボが飛び出し
てきた。マルタン雌!関東では普通種だが、高原での優先順位はオオルリボシよりも上。ここでは数年
振りに姿を見た。ターゲットをマルタンに切り替える。
無事にマルタンを採集し、一息。ふと頭上を見上げると、細身の小振りのヤンマがふわふわと風に乗っ
て漂っている。シルエットだけでも充分判別可能。竿を伸ばしてふわりとネットに誘い込む。マダラヤ
ンマ雄。今年もここで出会うことができた。

そしてこの日のサプライズ。
あたりを一周して再び戻ると、オオルリボシ雌がよく産卵に訪れる池の隅を、見慣れない黒っぽいヤン
マがホバリングしている。大きさはオオルリボシくらいだが、後ろに真っ直ぐ伸びた腹に見覚えがある。
さっと振ってネットの中から出してみると、やっぱり。このポイントでは初となるルリボシヤンマ雄だ。

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終わってみれば、ポイントの主役が全て揃った一日だった。オオルリボシもキトンボも、ほぼ例年通り
の出具合。
オオルリボシとキトンボだけでも充分魅力的なのだが、この場所が面白いのは、思わぬトンボが出てく
ることだ。今回で言えばルリボシヤンマ。通い始めた頃はルリボシも来るだろうと探しまわったが、姿
を見つけることは出来なかった。何かの要因でルリボシヤンマに嫌われているのだろう、と無理矢理納
得していたのだが、やはりいるのだ。近くにある隠された池からの飛来なのかもしれない。

今年はもう訪れることはないだろう。最高の形で長野遠征をしめくくれて満足。







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# by brunneus | 2017-10-04 22:59 | 長野 | Comments(0)
2017年 09月 29日

呪いは解けた

正直、前回の採集行でマダラヤンマは懲りたので、今年はもう終わりにしようと思っていた。しかし晴
天予報を見ると、むくむくとまた気持ちが膨らんでゆく。

今回は海にほど近い秘密の池を訪れてみたが、快晴適温にも関わらず、雄の縄張りは不活発。胴長を履
いて入水すると、目の前には食事中の雄。

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この時期の主食はアカネ類らしい。
池の中では全神経を研ぎすませて、ガマのジャングルの中を巡回する。広大な池の中で産卵中のマダラ
ヤンマの雌に出会うのは運頼みだ。その運を引き寄せるためにも、歩みを止めずにひたすら水の中を歩
き続けるしかない。
この日はまだ日が高いうちに、「幸運の音」つまりマダラヤンマの雌がガマの根元から飛び立つ「カサ
ッ」という微かな音に巡り会うことができた。

そして午後。
西に傾いた光が、ガマの群落を黄金色に染める。

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雌の産卵のハイタイムに入る頃だ。今までにも増して入念に探索するが、雌どころか雄も飛び出さない。
そして虚しく日没を迎えるが、このまま引き下がるわけにはいかない。最後の足掻きで黄昏飛翔のポイ
ントを探す。
空高く舞うアカネの摂食が終わる頃。池に隣接した草むらを歩いていると、視界を白い小型のヤンマの
シルエットが駆け抜けた。急いで追うが見失う。少し歩くと、今度は灌木の梢を同じ形の影が狂ったよ
うに宙返りしている。あれはマダラヤンマか?
竿を手に構えるが、予測が付かない変幻自在の飛び方に翻弄される。まるで八重山で見たアメイロトン
ボの摂食飛翔のようだ。何度かのニアミスの末に、ようやく快音。やはりマダラの雌!
この日は他にも数匹、同じように路上や梢を狂飛する個体を目撃。

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幸運なことに、三年振りに青色型の雌も手にできた。
北関東で一度だけ見た記憶では、マダラヤンマの雌の黄昏飛翔は、アシ原の上の広範囲を多角形を描い
て飛び回る、、というものだったので、今回のようなパターンは全くの予想外。
複数の個体が同じような飛び方をしていたので、これがここでのスタンダードなのだろう。

マダラヤンマの新たな一面を垣間見た日。前回の呪いは完全に解けたようだ。





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# by brunneus | 2017-09-29 00:21 | その他 | Comments(0)