アオヤンマとネアカヨシヤンマは、同じ「Aeschnophlebia」という属に分類されている。
いわば親戚同士の、近い仲間だ。
しかし実際この2種は大きく外見が異なり、野外でもまず見間違うことはない。
全身は前記事参照だが、今回着目したいのは、頭部。
アオヤンマ雄頭部背面
ネアカヨシヤンマ雌頭部背面
まずこの角度から見ると、左右の複眼の接点(縫合線)が、
アオヤンマよりネアカヨシヤンマのほうが長い。
つまり、複眼がネアカヨシヤンマの方が大きい、ということになる。
アオヤンマ雄頭部側面
ネアカヨシヤンマ雌頭部側面
この角度からは、複眼後縁の膨らみを見てみる。
アオヤンマは、この膨らみが大きく張り出すので、全体が丸みを帯びて見える。
一方、ネアカヨシヤンマは膨らみが小さく、全体がやや角張って見える。
複眼が大きいということは、一般的な昆虫のルールに当てはめると、
暗い環境でも物が良く見える、ということ。
確かに、アオヤンマより、ネアカヨシヤンマの方が暗い場所を好み、
朝夕の薄明薄暮時に最も活発に飛翔する。
体の色に関しても、アオヤンマの鮮やかな緑色は、日中、アシ原の中で過ごすときに
有効な保護色となるだろう。
ネアカヨシヤンマが暗い体色をしているのは、薄暗い時間帯に飛ぶからだろうか。
うだるような灼熱の午後は、冷房をフル運転させた快適な部屋で、標本を引っ張りだしてきて、
こんな些細な差異を発見しては、あれこれ妄想しているのです。