晩夏から中秋に活動するヤンマは何種かいるが、
ミルンヤンマもそのひとつ。
先日のコシボソヤンマのポイントでは、ちらちらと姿が見られた。
薄暗い河川上流部に棲むこのヤンマは、コシボソヤンマと混棲することも多いのだ。
時間があまりなかったが、コシボソの雌を採集した勢いで、ミルンヤンマの雌も狙うべく
尾根をいくつか移動。
移動した先の谷は、春にはムカシトンボが見られる。
そしてその本流に流れ込む、小さな流れを発見。ここは怪しい。
流れの脇にしゃがむと、すぐに雄が目の前に飛んで来た。
じっとしているので、岩か何かだと思っているらしく、ホバリングしながら
鼻先から足元まで舐めるように見つめられた。
タイムリミットぎりぎり。
帰ろうと立ち上がると、斜面の上に気配。
注視すると、頭上3メートルの斜面の朽ち木の向こうに、ヤンマの翅がのぞいている。
雌だ!
と思う瞬間に、竿を振る。「ガサッ」
下草もろともストローク。手応えはなかったが、ネットの中を見るとヤンマの姿。
太い腹部。よし、雌だ!
ミルンヤンマ雌:体長75mm
翅がうっすら茶色く煙り、腹部もぼってりと太く、渋く老熟した個体だ。
前々記事の未熟雌と比べると、どっしりと重量感があり、まるで雰囲気が違う。
ミルンヤンマの雌は成熟すると不活発になり、産卵時以外はめったに姿を見せない。
長時間ポイントで待てば出会うのは簡単なのだろうが、そんな根気はない。
なので、成熟したミルンの雌は、一瞬の出会いを大事にしなければいけないのだ。
そして雄。
この雄は体長が69mmしかなかった。
まさに「ヒメミルン」
ミルンヤンマは頭部が胴体に対して不釣り合いなほど大きく、そこがまた魅力的なヤンマだ。