トンボという昆虫の最大の特徴は何かと言えば、それは翅だ。
傍目にはどれも同じように見えるが、よく見ると、実に変化に富んでいる。
例えば翅の形。
幅が細いものから幅広のものまで様々だ。
左から
ホソアカトンボ雄、ウチワヤンマ雄、エゾトンボ雄、マルタンヤンマ雌、
カラスヤンマ雌、チョウトンボ雌
右に行くにつれ、幅が広く、長くなってゆく。
生物の形態は、その生活様式で決定される、という説に沿って考えれば、
たとえば込み入った森林内で生活するホソアカトンボの翅が幅が狭いことや、
やはり森林内に潜み、繁茂した挺水植物の中で産卵するマルタンヤンマの翅が太短いこと、
逆に大空を悠然と滑空するカラスヤンマやチョウトンボの翅が幅広く、長いことは
見事にそれを表している。
鳥で言うと、
森林内に棲むオオタカの羽が太短いこと(これはマルタンヤンマ的)、
大空を旋回するイヌワシの羽が幅広く長いこと(カラスヤンマ的)、
と同じことかもしれない。
ある年。
初夏の沖縄で、上空を旋回するカラスヤンマと、
さらにその上空で一回り大きな円を描くトビの姿が重なったことがあった。
ずいぶん大きさは異なるが、見事なまでに飛び方が同じで甚く感動したことがある。
生物種は違えど、やはり生活様式が似ているトンボと鳥は、
共通点が多いのかもしれない。
こういうことの発見が、さらに生き物の観察を面白くする。