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トンボの日々

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2014年 03月 02日

越境者

越境者_a0126535_0202825.jpg



屋久島から南。黒潮に洗われながら点在するトカラ列島にかけて、目に見えない生物界の国境線が存在
する。
「三宅線(九州と種子島、屋久島の間)」、「渡瀬線(トカラ列島南部)」と呼ばれるラインで、この
あたりを境に、南方系と北方系の生物の分布域が分かれるのだ。
その境界は生物群集によって多少異なるが、トンボ類の分布を見る限りでは、種子島、屋久島の南に大
きなギャップがあるように思う。
具体的には、九州以北に分布する国内のトンボ相の核となる種の殆どが、九州南端、もしくは屋久島、
種子島を南限とし、そのラインはきれいに揃っている。逆に南方系のトンボはというと、その北限はか
なり曖昧になる。

上に挙げた写真のトンボはどれも熱帯、亜熱帯を起源とする種だが、個々の種で見ると北限は以下のよ
うになっている。

(一列目左から)
リュウキュウカトリヤンマ:種子島
リュウキュウギンヤンマ:トカラ列島北部
ミナミヤンマ:徳島県
(二列目左から)
オキナワオジロサナエ:(亜種チビサナエ)大隅半島
ミナミトンボ:種子島
(三列目左から)
ベニトンボ:四国
アオビタイトンボ:山口県西端
オオハラビロトンボ:宮崎県南部
(四列目左から)
ハネビロトンボ:四国西部
ハラボソトンボ:九州北部
ホソミシオカラトンボ:屋久島
(最下段)
ヒメトンボ:屋久島

こうして見てみると、種によってその北限ラインはまちまちであることが分かる。
北進傾向が強い南方種と、あまり南進がみられない北方種の違いとは何だろう。
南方種が飛び石伝いに北上できるのであれば、北方種も同じように南下できないのだろうか。
木立があり小規模な水域であればどこにでも棲息できるマユタテアカネなどは、奄美諸島やそれ以南の
島々にも分布していても良さそうなのだが、、。(実際に台湾には分布しているらしい)

気流の関係か、はたまた他の生物との競合関係なのだろうか。
フェアで売れ残った標本を眺めながら、あれこれ考える至福の時。

by brunneus | 2014-03-02 01:53 | つぶやき | Comments(0)


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