この1枚の画像から漂う違和感。
秋のヤンマであるオオルリボシヤンマと、春のヤンマであるクロスジギンヤンマが並んでいる。
両種ともに先日の長野で手にしたものだ。
クロスジギンヤンマは基本的には春のヤンマで、平地では7月には殆ど見られなくなる。ところが、山
間部や寒冷地では秋にもぽつぽつ姿が見られることがある。
これらの水温が低い地域では、春から断続的に発生が続いているのか、春と秋に二化するのかは分から
ない。いずれにしても、秋風が吹き抜ける高原で、オオルリボシヤンマの下をせかせか飛び回るこのヤ
ンマを見ると、一瞬、その場所だけ季節感が希薄になる。
そしてこの時期疑わしいのは、ギンヤンマとのハイブリッドである通称スジボソギンヤンマだ。この時
も淡い期待に色めき立ち、必死に追い回して手にしてみたが、どこからどう見てもクロスジギンヤンマ。
春に出現するヤンマで大型種はクロスジギンしかいないので比較対象がないが、こうしてオオルリボシ
と並べてみると、体型の違いが一目瞭然。やはり狭い空間をせせこましく飛ぶクロスジは翅が短く、
広々とした空間を悠然と飛ぶオオルリボシは、翅が幅広く長い。環境、習性による翼の形状の法則は鳥
類に顕著だが、個人的にはトンボにも当てはまると思っている。
秋の高原ならではの違和感をじっくりと味わう日々。