トンボの日々

brunneus.exblog.jp
ブログトップ
2018年 07月 06日

遠い記憶・その1

羽田から南へ向けて離陸したボーイング727は、初夏の靄に霞む東京湾の上空で右旋回する。眼下に
横浜臨海部が見えたところで視線を上げると、北西に奥秩父最高峰の北奥千丈岳から金峰山へと続く緩
やかな盛り上がりの上に、八ヶ岳が見えてくる。

a0126535_21531599.jpg


そして視線を左に移すと、ピラミダルな甲斐駒ケ岳、北岳から間ノ岳、農鳥岳の南アルプス北部の核心
部が雲の上に顔を出している。

a0126535_21544663.jpg


夢中になって窓ガラスに額を押し付けているうちに、刻一刻と峰々は形を変えてゆき、眼下に黒々とし
た富士山の火口が見えてくる頃になると、南アルプスの上に小さく輝く雪の連山が顔を出す。槍ヶ岳や
穂高の北アルプス南部の盟主たちだ。機体はいま駿河湾沖の太平洋上空を飛んでいる。北アルプスまで
遥か170キロ。

a0126535_21555205.jpg


これから向かう光と熱の狂気の世界と、未だ雪と氷が支配する標高3000mの世界。ふたつの全く異
質な世界が、意識の中で交錯する。

伊勢湾が見えてきた所で機体は本州から離れ、進路を南西に変え、大洋のただ中を進む。うとうとして
きた所で眼下を見ると、色鮮やかな珊瑚礁に囲まれた亜熱帯の島。

a0126535_21564196.jpg


目を凝らすと家の一軒一軒が判別できる。小さな港沿いの集落。

a0126535_21573402.jpg


クマゼミの声に包まれながら、人々の一日の活動が始まっているのだろう。

羽田から南へと向かう機窓。温帯から亜熱帯へと移り変わる眼下の風景を受け入れることが、意識を日
常から開放する大切な儀式なのだ。

そして光と熱の狂気の世界へ。









.

[PR]

by brunneus | 2018-07-06 21:59 | つぶやき | Comments(0)


<< 増減2018      グリーン >>