トンボの日々

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2018年 07月 28日

ヒゲコガネ2018

ここ数週間ほど、仕事の後に夜な夜な多摩川中流に出かけている。
ターゲットはこの虫。

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ヒゲコガネ。
数年前から、馴染みのポイントでは、おそらく灯のLED化でヒゲコガネが全く採れなくなっていた。以
来この虫からは遠ざかっていたのだが、今年は新たなポイント開拓をすべく、いくつかの場所を巡って
いたのだった。

結果はそれほど数は多くはないものの、広く薄くヒゲコガネが見られた。
印象的だったのは、雄よりも雌が多かったこと。本来ヒゲコガネは灯火に飛来するのは雄が圧倒的に多
く、雌は稀なはずだ。発生後期だからか、時間の関係か、、。

ヒゲコガネはコフキコガネ類の最大種。国産コガネムシ科の中でも、ヤンバルテナガコガネ、カブトム
シ、タイワンカブトムシに次ぐ大きさだ。
そんな大きな虫が歩道に落ちていれば気付きそうなものだが、ポイントには点々と踏みつぶされた死骸
があった。
ポイントの歩道は仕事帰りやジョギングなどで往来が激しい。ヒゲコガネの存在に全く気付かぬ人々に
踏まれる前に発見するには、飛来して歩道に落下したばかりの個体に出会うしかなく、これがなかなか
難しい。
踏みつぶされながらも、まだ動いている個体を何度か見たが、その度に「あと数分前に通っていれば!」
と歯ぎしりする。

街灯のLED化は、こうした無惨な死を防ぐ点で言えば喜ばしいことだとは思うが、虫屋の立場からする
と、ちょっと複雑、、。








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by brunneus | 2018-07-28 22:28 | 東京 | Comments(0)
2018年 07月 25日

お手軽

連日、熱水の中にいるような猛暑が続いている。こんな日々は、息を吸って吐いて、生きているだけで
精一杯だ。

そんな猛暑がチャンスのトンボを求めて、仕事前に、誰もが知る場所へ。この場所は以前から狙ってい
たのだが、なかなかタイミングが合わず、機会に恵まれなかったのだ。
撮影目的で訪れるのは初めてなので、勝手が分からない。目的のトンボがどこにいるかも分からない。
しかし、あまり心配はしていなかった。

気温が最も高くなる時間に、現地着。
とりあえず適当に歩道を流していると、頭上の木陰でホバリングするスリムなトンボのシルエット。歩
みを止めて注視すると、良い位置の枝に止まった。

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ヤブヤンマ雄。
これは予定外のラッキーな出会い。
しかしヤブヤンマは本命ではない。歩道をさらにふらついていると、早速、高そうなカメラを首から下
げた紳士がやってきてちらっとこちらのカメラを一瞥、そして本命のトンボについてのヒントを丁寧に
教授してくれたのだった。
何の躊躇もなく紳士のヒントを受け入れて、言われた場所を探すことしばし。あっけなく本命を発見。

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マルタンヤンマ雄。ひとしきり撮影すると、ふわっと飛んで、すぐ近くに再び静止。

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良い角度だが、手前のクモの糸が邪魔、、。
なんとか別の角度から、、と少し粘ってみたが、暑さに負けて撤収。

黄昏飛翔性のヤンマは、日中はこのようにして風通しが良い林内に静止して休んでいる。その生態自体
は昔から知っていたのだが、いかんせん根気が無い。蒸し風呂のような森の中を、一匹のトンボを求め
て彷徨うことを想像しただけで目眩がする。
そしてこの場所。
有名なので、森にカメラを向けた人を目印にすれば本命に辿り着けるだろう、と甘い期待をしていたが、
いっぽうでそんなに都合良く本命は現れてはくれないだろうとも思っていた。しかし現実は甘い期待そ
のままだった、、。噂に違わぬお手軽天国。

ヤンマたちがどんな環境で休息しているのかが何となく分かった気がするので、今日の経験を他の場所
でも応用してみよう。








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by brunneus | 2018-07-25 00:11 | 東京 | Comments(0)
2018年 07月 19日

遠い記憶・その3

国道沿いの食堂で遅い夕食を食べ、疲れ果てて宿に戻る。
蚊取り線香の煙が漂う薄暗い廊下を進み、部屋へ。即座にエアコンを点けると、重々しい音と共に埃臭
い風が額を撫でる。汗を滴らせながら、部屋の温度が下がるのをじっと待つ。

やがて送風口からの風が涼やかになると、一気に緊張が解け、同時に眠気が襲ってくる。しかしここで
眠るわけにはいかない。
戸外にある洗濯機にじっとりと湿った衣服を放り込みスイッチを入れると、懐中電灯を持ち、ビーチサ
ンダルを引っ掛けて、海岸を目指す。
気持ち良さげな歌声が響くスナック街を抜けると、潮騒の音だけが鳴る漆黒の世界。どこまでも続く真
っ黒な水面の遥か遠くに、ぽつんと島の灯り。時々近くで点滅するのは漁港の灯台。
真っ黒い異世界に踏み込む軽い恐怖をごまかしながら、ハマヒルガオの葉を踏みしめて、波打ち際へ。

波の音が近くなった所で懐中電灯を点ける。

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光の中に浮かび上がる、異形のカニの姿。ツノメガニだ。
ここで動きを止め、カニに光の輪を浴びせながら徐々に間合いを詰める。カニからは光の向こうの存在
は見えないようだ。さらに近付く。

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充分に射程距離になった所で、一気に押さえ込む。

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国内最大のスナガニ、ツノメガニ。甲幅はアカテガニほどだが、脚が長いので遥かに大きく見える。
暗闇の中では、さらにその巨大さが際立つ。
スナガニ科に限らず、砂浜に棲むカニやヤドカリの多くは夜行性だ。昼間に訪れても、彼等は穴深く潜
って出て来ない。何かの間違いで砂に出ていることもあるが、近付く前に猛スピードで逃げられてしま
う。
彼等に出会うには夜。視力に長けた彼等も、暗闇だとこちらの姿が見えず、容易に近付くことができる
のだ。
この接近法を知ってからは、夜の砂浜探索は、南方遠征のルーチンになりつつある。昼間のトンボが振
るわなくても、夜のカニたちは裏切らない。


空を見上げれば、恐ろしいほどの星で覆われている。時々、緑色の光の残像を残して消える流星。
防波堤の上でしばし宇宙とシンクロしてから、また黴臭い宿の部屋に戻る。






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by brunneus | 2018-07-19 00:07 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 14日

増減2018・その2

今現在入ってきている情報では、ヤンバルの馴染みのポイントのカラスヤンマが今年は非常に数が少な
いようだ。
川がどこも妙に綺麗だった、という話も聞く。世界遺産を睨んだ工事の影響もあるとは思うが、羽化の
時期の大雨で、ヤゴが底質もろとも根こそぎ流されてしまったのだろうか、、。きちんと調査したわけ
ではないので原因は不明だ。もしかしたら、たまたまその日が少なかっただけなのかもしれない。

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話変わってオオメトンボとアメイロトンボ。
オオメトンボは、オキナワミナミヤンマが飛ぶ渓流の水溜まりに朝行くと、多くの個体が飛び交ってい
る。しかし全く見られない年と、沢山の個体が飛び交う年がある。同じ時期の同じ時間なのに、不思議
だ。今年は最盛期とまではいかないものの、複数の個体が飛んでいたようだ。
アメイロトンボは海岸沿いの水田地帯や、その水路で見られるが、このトンボも個体数の増減が激しい。
全く見られない年が続いたかと思うと、あちこちで見かける年も。今年は少ないながらも見られたよう
だ。アメロトンボも移動性が強い種なので、個人的にはオオギンヤンマやトビイロヤンマとリンクして
いるのでは、と思っている。

トンボ以外ではこの虫。

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タイワンツチイナゴ。
この巨大なバッタとの出会いは、2000年の渡嘉敷島でのこと。山の頂上のだだっ広い草原で、足元
の草むらから歩く度に飛び出す赤茶色の小鳥がいて、正体を確かめようと近付くと、それがバッタで驚
いたことがあった。
その時の衝撃はずっと残っていて、次に出会ったら是非手にしたい、とその後の遠征で気をつけて見て
いたが、出会いに恵まれなかった。
今年はどこの場所でも大量に発生しているらしく、街外れの空き地やサトウキビ畑はもちろん、林道脇
のちょっとした草むらにもいたらしい。何がこのバッタの発生をコントロールしているのだろうか。

行く度に様々に表情を変える自然があるから、遠征が飽きない理由のひとつだと思う。









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by brunneus | 2018-07-14 13:09 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 10日

遠い記憶・その2

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亜熱帯の島の、田舎のバスターミナル。
目的地へのちょうど中間地点という所だが、このターミナルにある売店が好きだ。白い光が充満する世
界から薄暗い店内に一歩入ると、涼しげな風が頬を撫でる。奥のベンチでは近所の女子学生が扇風機の
前で涼んでいる。雑然と並べられた雑多な商品の中から、いつも選ぶのはサーターアンダギーとターン
ムのパイ。そしてパックに入ったモズクの天ぷら。
商品の裏にいる店のオバアは、どこかへ行ってしまっている時もあれば、知り合いと長電話している時
もある。

やがて老いたエンジン音を響かせながら、乗り継ぐバスがやってくる。
冷房が効き過ぎた車内に、乗客は自分しかいない。暴力的な運転で国道をひた走り、さらに奥地へ。

午後遅く、海沿いの水田地帯へ降り立つ。

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午後とはいえ、日差しは衰える兆しもなく、頭上と地面の照り返しで光と熱にがっちりと全身を捉えら
れている。額を撫でる熱風、吹き出す汗。意識が朦朧としてくる。

汗で霞む眼を凝らしてイグサの間を覗くと、当初は見えなかったものが見えてきた。

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すぐに限界が来た。ぬるい水をいくら飲んでも体力が回復しない。いま必要なのはぬるい水ではなく、
身体の芯の温度を下げる冷水だ。身体が動かなくなる前に、谷間へ逃げ込む。

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心地よく冷えた川の水に足を浸していると、いくらか気分が楽になってきた。林道へと出てみると、頭
上に気配。見上げると、待ちこがれていたシルエットが舞っていた。

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これを見られただけでも、東京から10時間、遥々やってきた意味があるのだ。
久しぶりに出会う恋人を見たときのように、胸が高鳴るのを感じる。









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by brunneus | 2018-07-10 23:02 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 08日

増減2018

移動性の強いトンボは、年によって個体数の増減が激しい。
例えばこの二種。

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上:オオギンヤンマ 下:トビイロヤンマ

オオギンヤンマは、2000年代前半まではヤンバルの水田地帯に多くの個体が見られ、飛んでいて
も無視していたほど。ところが次第に数を減らしていき、2008年を最後に全く見かけなくなった。
ところが数年前からトンボ仲間の間で目撃され始め、今年も雄雌ともに複数見られたようだ。
かつてヤンバルにオオギンヤンマが多かった頃、飛ぶのは雄ばかりで雌は見たことがなかった。一度
だけ、リュウキュウギンヤンマの雄に捕捉された雌を手にしたことがあったが、このヤンマの雌は、
いったいどこで何をしているのだろう。水田地帯で産卵するのはギンヤンマか、リュウキュウギンヤ
ンマの雌ばかりなのだ。自分の目が節穴なだけかもしれないが、、。
画像の雌は、日没後、芭蕉の木の上を飛び交うトビイロヤンマに混じって飛んでいたもの。

トビイロヤンマも、2000年代前半頃はそれこそ無数に飛んでいた。以降は全く見かけない年はな
いが、個体数は減ったり増えたりを繰り返している。

この2種は山間部には見られず、平地、それも海岸沿いの開けた浅い池沼に多い。分布の本拠地は東
南アジアから太平洋一帯でとても広大だ。強靭な移動力で、大海原に点在する島々を渡り歩いている
のだろう。
近年の研究ではオオギンヤンマは国内に定着せず、飛来種扱いになっているが、個人的にはトビイロ
ヤンマもそれに近い状況なのでは、と思うのだ。

現地を訪れるたびに個体数の増減に一喜一憂する。自然の気まぐれに振り回されるのも、それもまた
自然相手の趣味の一部なのだろう。

そういえば少し前から神奈川にオオギンヤンマが入っているらしいが、開拓精神旺盛な若者諸君の成
果はあっただろうか。










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by brunneus | 2018-07-08 13:12 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 06日

遠い記憶・その1

羽田から南へ向けて離陸したボーイング727は、初夏の靄に霞む東京湾の上空で右旋回する。眼下に
横浜臨海部が見えたところで視線を上げると、北西に奥秩父最高峰の北奥千丈岳から金峰山へと続く緩
やかな盛り上がりの上に、八ヶ岳が見えてくる。

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そして視線を左に移すと、ピラミダルな甲斐駒ケ岳、北岳から間ノ岳、農鳥岳の南アルプス北部の核心
部が雲の上に顔を出している。

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夢中になって窓ガラスに額を押し付けているうちに、刻一刻と峰々は形を変えてゆき、眼下に黒々とし
た富士山の火口が見えてくる頃になると、南アルプスの上に小さく輝く雪の連山が顔を出す。槍ヶ岳や
穂高の北アルプス南部の盟主たちだ。機体はいま駿河湾沖の太平洋上空を飛んでいる。北アルプスまで
遥か170キロ。

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これから向かう光と熱の狂気の世界と、未だ雪と氷が支配する標高3000mの世界。ふたつの全く異
質な世界が、意識の中で交錯する。

伊勢湾が見えてきた所で機体は本州から離れ、進路を南西に変え、大洋のただ中を進む。うとうとして
きた所で眼下を見ると、色鮮やかな珊瑚礁に囲まれた亜熱帯の島。

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目を凝らすと家の一軒一軒が判別できる。小さな港沿いの集落。

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クマゼミの声に包まれながら、人々の一日の活動が始まっているのだろう。

羽田から南へと向かう機窓。温帯から亜熱帯へと移り変わる眼下の風景を受け入れることが、意識を日
常から開放する大切な儀式なのだ。

そして光と熱の狂気の世界へ。









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by brunneus | 2018-07-06 21:59 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 01日

グリーン

梅雨け間近の関東南部。
海からの強風に流された雲が、暑く湿った風に低く流されてゆく。身体に絡み付くねっとりとした空気。
まるで沖縄にいるみたいな日だった。

時間が少し出来たので、クラシックなマルタンヤンマの産地へ。
街中で吹き荒れる熱風も、この小さな谷津には入り込めない。頭上の電線を共鳴させる音が聴こえてい
る。草と泥の匂いと、湿地から響くキンヒバリの涼しげな音。ネットを構えて谷津の奥の暗がりを見つ
める。

草むらを黒い影が滑るのが見えた気がして全身に緊張が走るが、次の瞬間、青い残像を残して遥か後方
へ。数分後、今度は谷津をぐるぐる旋回する気配。かと思うと背後から一気に抜けていく後ろ姿。

なかなかストロークしやすい場所を飛んでくれず、全く良いイメージが湧かない。このまま手ぶらで帰
るのか、、と思った矢先、出し抜けに頭上に影が飛び出してきた。身体が勝手に反応し、ネットの中に
は待望の姿。

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取り出してみると、まだ斑紋が緑色がかり、翅も透明な半成熟個体だった。
未熟から成熟へと劇的に体色が変わるマルタンヤンマ。野外で成熟前の個体を手にしたいと願っていた
が、この日、ようやくそれが叶った。

この場所は例年7月に入ってから訪れている。その時期のマルタン雄は、基本的には一定のコースを飛
び去るパターンなのだが、この日は飛び方が不規則すぎて翻弄された。それが成熟度によるものなのか、
天候によるものなのか、、。

長年通い慣れた場所なのでマルタンに関しては熟知しているつもりだったが、まだまだだったようだ。













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by brunneus | 2018-07-01 22:35 | 神奈川 | Comments(0)