2013年 05月 10日
カワトンボを再評価すると言っても、その複雑な多型出現の法則を理解する気は起きない。 下の画像は同じ流れの狭い範囲で見られた3つの個体なのだが、全部ニホンカワトンボなのだろうか。 自信がいまひとつない。 採集した地域は、どうもアサヒナカワとニホンカワの混生地らしいのだ。 左上の個体はおそらく確実にニホンカワだが、その右の個体は翅の不透明部分が縮小していて、こう いう個体はアサヒナカワにも見られるという。縁紋の長さも識別ポイントになるというが、よく分か らない。 あとは胸高に対して頭部の幅などいくつかの違いはあるらしいのだが、こういう差異は多数の個体を 見比べなければ、実感として把握できないと思う。 こうして今年も、カワトンボのもやもやは消えぬまま、シーズンが過ぎてゆく。 #
by brunneus
| 2013-05-10 14:51
| 東京
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2013年 05月 07日
ファンの方には申し訳ないが、基本的には、均翅類にはあまり興味がない。 もともと「大型の昆虫が好き」というところから入ったので、まず小型種であること、そして糸のよう な線の細さと、吹けば飛ぶような存在感の薄さ。このあたりがなかなか目が向かない理由だろうか。 微細に見ていくと、はっとするような美しさも発見するのだが、やはり第一印象というのは拭えない。 であるので、足元に止まっていてもなかなか手が出ないのだが、中には例外もある。 その一つがこのトンボ。 ニホンカワトンボ橙色翅型雄:体長65mm 日当りの良い清流に棲むトンボで、そろそろ活動がピークになる頃だ。 このトンボも、以前はあまり意識して見ることもなかったのだが、ある時、何気なく捕まえてみてよく 見てみると、爽やかで透明感溢れる翅の橙色に目を奪われた。「オレンジ色」でなく、「橙色」という 表現がぴったりの翅色。5月の清々しい青空とのコントラストがそう思わせたのかもしれない。 標本にした時の見栄えも思いのほか良い。 それ以来、5月の川辺で姿を見かけると、つい手が伸びてしまうようになってしまった。 身近な種でも、新たな発見があると嬉しくなる。 #
by brunneus
| 2013-05-07 01:16
| 東京
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2013年 05月 06日
連休の後半二日を、どう使うか悩んでいた。 近場のムカシトンボか、千葉のトラフトンボの成熟個体を狙うか、という選択肢だが、予報が良い方の 日を遠出に選んだ。 トンボ採りには絶好の日和。そして千葉の有名ポイント。 ライバルが出現し、厳しい戦いになるのを少しでも避けるために、多大な犠牲を払っていつもより一本 早い電車に乗った。早起きが何よりも苦手なのだ。 しかし、ポイント入りするや否や、遠くにゆらゆら揺れる大きなネットがいくつか目に飛び込んできた。 あのネットは、、。 結局、示し合わせたわけでもないのに、ポイント周辺には既に5人のトンボ仲間が集結していて、自分 がしんがり、というオチだった。考えていることはみな同じ、というわけだ。 天気は快晴、風も弱く気温も高い。条件は最高だ。池にはトラフトンボ雄が飛んでいる。繁殖後期に入 っているようだ。しかしいくら空き地を巡っても、摂食飛翔する雌に出会わない。これは外れ日のパタ ーンだ。 そこで作戦を変更。トラフに見切りをつけ、毎年サラサヤンマの未熟個体が飛ぶポイントに腰を据える ことにした。 待つことしばし。上空に一頭のヤンマが飛び出した。青空にオレンジ色の翅が鮮やかに映える。サラサ ヤンマ雌! トラフトンボを見慣れた目には、随分大きく見える。サラサヤンマはゆったりと、まるでミナミヤンマ のように優雅に飛ぶ。美しい! 上/サラサヤンマ未熟雄:体長57mm 下/サラサヤンマ未熟雌:体長58mm 結局ここでは雌を3頭、雄を1頭目撃。作戦は功を奏したようだ。 サラサヤンマは、特に雌の未熟個体の翅が鮮やかなオレンジ色に色付く。成熟しても多少は残るが、こ の時期の鮮やかさにはかなわない。 前回のトラフトンボとアオヤンマ、そして今回のサラサヤンマ。 このポイントの初夏の役者は出そろったところで、ようやく本格的なシーズンが始まったようだ。 #
by brunneus
| 2013-05-06 02:56
| 千葉
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2013年 05月 04日
中途半端な天気、中途半端な気温。 こんな日は、中途半端な近場のポイントでお茶を濁すに限る。 頭に浮かんだのは青梅市のポイント。駅から歩いて行ける、お手軽な場所だ。 狙いはクロスジギンヤンマ。インターネットの情報だと、未だに羽化中のもの、既にパトロール、産卵 しているものと、発生段階がバラバラだ。青梅の状況は分からないが、どうせ様子見だし、あまり期待 しないで家を出た。 例に漏れず、ぐだぐだしていたらポイント着が昼過ぎ。 それほど有名な場所ではないので人は少ないだろうと踏んでいたのだが、甘かった。次から次へとやっ てくるハイキングや散歩の人、人、人、、。殆どが子連れで、気になってトンボに集中できない。 クロスジギンヤンマは既に繁殖期に入っていて、雄が頻繁に入ってくるが、飛び方が素早く落ち着きが ない。密かに狙っていた雌は一度だけやってきたが、何が気にくわないのか、腹の先をちょんと水面に くっつけてすぐに飛び去ってしまった。 クロスジギンヤンマ雄:体長74mm 手にした個体は成熟したてで、一番瑞々しい時期だ。複眼のなんとも言えない青色。 普通種ではあるが、客観的にみれば、なかなか美しいヤンマだと思う。 このヤンマは畳一枚ほどの貧弱な水域でも容易に世代を繋ぐことができるため、過密に住宅がひしめき、 開放水面が少ない都市環境に適応したヤンマだ。猫の額ほどの民家の庭先の池を点々としながら生活し ているのだろう。都内で最も繁栄しているヤンマかもしれない。 クロスジギンヤンマに限らず、普通種のトンボは都内での採集は意外に苦労する。 産地の殆どが採集禁止の公園であることもそのひとつだが、採集禁止でなくても、「人」が採集をしに くくしているのだ。 爽やかな風が吹く、よく晴れた日曜日。家族で気持ちよく森林浴をしながら谷津を歩いていると、突然 茂みから巨大な捕虫網を持った男が飛び出してきて、家族は驚き狼狽える。これではせっかくの行楽気 分が台無しだ。 行楽している家族に罪はないのでこれは仕方の無いことだが、やはりこういう場所での採集は気が進ま ない。その点、人が好んで行かないようなドロドロの沼地や山奥の産地は、のびのびと活動できて楽し い。 さて。連休後半。選択肢がいよいよ少なくなり、焦ってきた。 #
by brunneus
| 2013-05-04 23:55
| 東京
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2013年 05月 04日
今シーズンは、標本写真を撮影するにあたり、今までとは異なる試みを始めている。 4月29日以降の記事でお気づきの方も、もしかしたらいるかもしれない。 何が異なるかと言うと、横位置画像の頭部の向きを、捻って上面を見せる方法から、胴体の方向と統一 した側面の方向を見せる方法に変更した点だ。 古今のトンボの図鑑を眺めていると、ある事柄に気付く。 昔の図鑑は、横位置の標本写真に頭を捻ったものが大多数を占めているが、近年に出版された図鑑は、 胴体の方向と一致させたものが多い。 そもそも頭を捻るやり方は、種の斑紋の特徴が良く出る胴体側面を見せるために横位置標本を使用す る際、上面に特徴が出やすい頭部を一体の標本で同時に示そうとしたものだ。 これはこれで狭い図鑑の掲載スペースに効率よく標本を並べる方法で、「同定のしやすさ」を優先さ せた結果なのだろう。図鑑以前に標本箱に収めるための手法として考案されたのかもしれない。 それに対して胴体の方向と統一させた写真を使った近年の図鑑。何故そうなったかは分からないが、 図鑑に対して「自然さ」や「美しさ」を求めた結果なのではないか、と思う。しかしその分、頭部上 面の斑紋が標本写真からは見えなくなってしまった部分は、鮮明な生態写真でカバーしよう、という ことなのだろうか。 標本撮影方法は全くの自己流なのだが、セッティングの構造上、手間としては頭を捻った方が楽に作 業が進む。しかし楽さにかまけて惰性で撮影するうち、どうも頭の中に引っかかるものがあった。 「頭の方向は、展翅と、横位置で変えなくて良いのか?」 撮影しながら、この疑問が次第に大きくなってきていた。展翅と横位置両方の撮影をするなら、頭だ けどちらも方向が同じ、という状態が、なんだかあるべき姿でないように思えてきたのだ。 そこで切りがいい今シーズンから頭部と胴体の方向をそろえてみたのだが、やってみるとしっくりく る。 図鑑というものは、それぞれ目的も異なり、それに加えて作者の信念もあるだろう。 それぞれの制作者の方は、標本写真に関してどうお考えなのだろうか。 一度聞いてみたいものだ。 #
by brunneus
| 2013-05-04 04:25
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