トンボの日々

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2018年 07月 25日

お手軽

連日、熱水の中にいるような猛暑が続いている。こんな日々は、息を吸って吐いて、生きているだけで
精一杯だ。

そんな猛暑がチャンスのトンボを求めて、仕事前に、誰もが知る場所へ。この場所は以前から狙ってい
たのだが、なかなかタイミングが合わず、機会に恵まれなかったのだ。
撮影目的で訪れるのは初めてなので、勝手が分からない。目的のトンボがどこにいるかも分からない。
しかし、あまり心配はしていなかった。

気温が最も高くなる時間に、現地着。
とりあえず適当に歩道を流していると、頭上の木陰でホバリングするスリムなトンボのシルエット。歩
みを止めて注視すると、良い位置の枝に止まった。

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ヤブヤンマ雄。
これは予定外のラッキーな出会い。
しかしヤブヤンマは本命ではない。歩道をさらにふらついていると、早速、高そうなカメラを首から下
げた紳士がやってきてちらっとこちらのカメラを一瞥、そして本命のトンボについてのヒントを丁寧に
教授してくれたのだった。
何の躊躇もなく紳士のヒントを受け入れて、言われた場所を探すことしばし。あっけなく本命を発見。

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マルタンヤンマ雄。ひとしきり撮影すると、ふわっと飛んで、すぐ近くに再び静止。

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良い角度だが、手前のクモの糸が邪魔、、。
なんとか別の角度から、、と少し粘ってみたが、暑さに負けて撤収。

黄昏飛翔性のヤンマは、日中はこのようにして風通しが良い林内に静止して休んでいる。その生態自体
は昔から知っていたのだが、いかんせん根気が無い。蒸し風呂のような森の中を、一匹のトンボを求め
て彷徨うことを想像しただけで目眩がする。
そしてこの場所。
有名なので、森にカメラを向けた人を目印にすれば本命に辿り着けるだろう、と甘い期待をしていたが、
いっぽうでそんなに都合良く本命は現れてはくれないだろうとも思っていた。しかし現実は甘い期待そ
のままだった、、。噂に違わぬお手軽天国。

ヤンマたちがどんな環境で休息しているのかが何となく分かった気がするので、今日の経験を他の場所
でも応用してみよう。








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# by brunneus | 2018-07-25 00:11 | 東京 | Comments(0)
2018年 07月 19日

遠い記憶・その3

国道沿いの食堂で遅い夕食を食べ、疲れ果てて宿に戻る。
蚊取り線香の煙が漂う薄暗い廊下を進み、部屋へ。即座にエアコンを点けると、重々しい音と共に埃臭
い風が額を撫でる。汗を滴らせながら、部屋の温度が下がるのをじっと待つ。

やがて送風口からの風が涼やかになると、一気に緊張が解け、同時に眠気が襲ってくる。しかしここで
眠るわけにはいかない。
戸外にある洗濯機にじっとりと湿った衣服を放り込みスイッチを入れると、懐中電灯を持ち、ビーチサ
ンダルを引っ掛けて、海岸を目指す。
気持ち良さげな歌声が響くスナック街を抜けると、潮騒の音だけが鳴る漆黒の世界。どこまでも続く真
っ黒な水面の遥か遠くに、ぽつんと島の灯り。時々近くで点滅するのは漁港の灯台。
真っ黒い異世界に踏み込む軽い恐怖をごまかしながら、ハマヒルガオの葉を踏みしめて、波打ち際へ。

波の音が近くなった所で懐中電灯を点ける。

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光の中に浮かび上がる、異形のカニの姿。ツノメガニだ。
ここで動きを止め、カニに光の輪を浴びせながら徐々に間合いを詰める。カニからは光の向こうの存在
は見えないようだ。さらに近付く。

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充分に射程距離になった所で、一気に押さえ込む。

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国内最大のスナガニ、ツノメガニ。甲幅はアカテガニほどだが、脚が長いので遥かに大きく見える。
暗闇の中では、さらにその巨大さが際立つ。
スナガニ科に限らず、砂浜に棲むカニやヤドカリの多くは夜行性だ。昼間に訪れても、彼等は穴深く潜
って出て来ない。何かの間違いで砂に出ていることもあるが、近付く前に猛スピードで逃げられてしま
う。
彼等に出会うには夜。視力に長けた彼等も、暗闇だとこちらの姿が見えず、容易に近付くことができる
のだ。
この接近法を知ってからは、夜の砂浜探索は、南方遠征のルーチンになりつつある。昼間のトンボが振
るわなくても、夜のカニたちは裏切らない。


空を見上げれば、恐ろしいほどの星で覆われている。時々、緑色の光の残像を残して消える流星。
防波堤の上でしばし宇宙とシンクロしてから、また黴臭い宿の部屋に戻る。






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# by brunneus | 2018-07-19 00:07 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 14日

増減2018・その2

今現在入ってきている情報では、ヤンバルの馴染みのポイントのカラスヤンマが今年は非常に数が少な
いようだ。
川がどこも妙に綺麗だった、という話も聞く。世界遺産を睨んだ工事の影響もあるとは思うが、羽化の
時期の大雨で、ヤゴが底質もろとも根こそぎ流されてしまったのだろうか、、。きちんと調査したわけ
ではないので原因は不明だ。もしかしたら、たまたまその日が少なかっただけなのかもしれない。

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話変わってオオメトンボとアメイロトンボ。
オオメトンボは、オキナワミナミヤンマが飛ぶ渓流の水溜まりに朝行くと、多くの個体が飛び交ってい
る。しかし全く見られない年と、沢山の個体が飛び交う年がある。同じ時期の同じ時間なのに、不思議
だ。今年は最盛期とまではいかないものの、複数の個体が飛んでいたようだ。
アメイロトンボは海岸沿いの水田地帯や、その水路で見られるが、このトンボも個体数の増減が激しい。
全く見られない年が続いたかと思うと、あちこちで見かける年も。今年は少ないながらも見られたよう
だ。アメロトンボも移動性が強い種なので、個人的にはオオギンヤンマやトビイロヤンマとリンクして
いるのでは、と思っている。

トンボ以外ではこの虫。

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タイワンツチイナゴ。
この巨大なバッタとの出会いは、2000年の渡嘉敷島でのこと。山の頂上のだだっ広い草原で、足元
の草むらから歩く度に飛び出す赤茶色の小鳥がいて、正体を確かめようと近付くと、それがバッタで驚
いたことがあった。
その時の衝撃はずっと残っていて、次に出会ったら是非手にしたい、とその後の遠征で気をつけて見て
いたが、出会いに恵まれなかった。
今年はどこの場所でも大量に発生しているらしく、街外れの空き地やサトウキビ畑はもちろん、林道脇
のちょっとした草むらにもいたらしい。何がこのバッタの発生をコントロールしているのだろうか。

行く度に様々に表情を変える自然があるから、遠征が飽きない理由のひとつだと思う。









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# by brunneus | 2018-07-14 13:09 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 10日

遠い記憶・その2

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亜熱帯の島の、田舎のバスターミナル。
目的地へのちょうど中間地点という所だが、このターミナルにある売店が好きだ。白い光が充満する世
界から薄暗い店内に一歩入ると、涼しげな風が頬を撫でる。奥のベンチでは近所の女子学生が扇風機の
前で涼んでいる。雑然と並べられた雑多な商品の中から、いつも選ぶのはサーターアンダギーとターン
ムのパイ。そしてパックに入ったモズクの天ぷら。
商品の裏にいる店のオバアは、どこかへ行ってしまっている時もあれば、知り合いと長電話している時
もある。

やがて老いたエンジン音を響かせながら、乗り継ぐバスがやってくる。
冷房が効き過ぎた車内に、乗客は自分しかいない。暴力的な運転で国道をひた走り、さらに奥地へ。

午後遅く、海沿いの水田地帯へ降り立つ。

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午後とはいえ、日差しは衰える兆しもなく、頭上と地面の照り返しで光と熱にがっちりと全身を捉えら
れている。額を撫でる熱風、吹き出す汗。意識が朦朧としてくる。

汗で霞む眼を凝らしてイグサの間を覗くと、当初は見えなかったものが見えてきた。

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すぐに限界が来た。ぬるい水をいくら飲んでも体力が回復しない。いま必要なのはぬるい水ではなく、
身体の芯の温度を下げる冷水だ。身体が動かなくなる前に、谷間へ逃げ込む。

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心地よく冷えた川の水に足を浸していると、いくらか気分が楽になってきた。林道へと出てみると、頭
上に気配。見上げると、待ちこがれていたシルエットが舞っていた。

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これを見られただけでも、東京から10時間、遥々やってきた意味があるのだ。
久しぶりに出会う恋人を見たときのように、胸が高鳴るのを感じる。









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# by brunneus | 2018-07-10 23:02 | つぶやき | Comments(0)
2018年 07月 08日

増減2018

移動性の強いトンボは、年によって個体数の増減が激しい。
例えばこの二種。

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上:オオギンヤンマ 下:トビイロヤンマ

オオギンヤンマは、2000年代前半まではヤンバルの水田地帯に多くの個体が見られ、飛んでいて
も無視していたほど。ところが次第に数を減らしていき、2008年を最後に全く見かけなくなった。
ところが数年前からトンボ仲間の間で目撃され始め、今年も雄雌ともに複数見られたようだ。
かつてヤンバルにオオギンヤンマが多かった頃、飛ぶのは雄ばかりで雌は見たことがなかった。一度
だけ、リュウキュウギンヤンマの雄に捕捉された雌を手にしたことがあったが、このヤンマの雌は、
いったいどこで何をしているのだろう。水田地帯で産卵するのはギンヤンマか、リュウキュウギンヤ
ンマの雌ばかりなのだ。自分の目が節穴なだけかもしれないが、、。
画像の雌は、日没後、芭蕉の木の上を飛び交うトビイロヤンマに混じって飛んでいたもの。

トビイロヤンマも、2000年代前半頃はそれこそ無数に飛んでいた。以降は全く見かけない年はな
いが、個体数は減ったり増えたりを繰り返している。

この2種は山間部には見られず、平地、それも海岸沿いの開けた浅い池沼に多い。分布の本拠地は東
南アジアから太平洋一帯でとても広大だ。強靭な移動力で、大海原に点在する島々を渡り歩いている
のだろう。
近年の研究ではオオギンヤンマは国内に定着せず、飛来種扱いになっているが、個人的にはトビイロ
ヤンマもそれに近い状況なのでは、と思うのだ。

現地を訪れるたびに個体数の増減に一喜一憂する。自然の気まぐれに振り回されるのも、それもまた
自然相手の趣味の一部なのだろう。

そういえば少し前から神奈川にオオギンヤンマが入っているらしいが、開拓精神旺盛な若者諸君の成
果はあっただろうか。










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# by brunneus | 2018-07-08 13:12 | つぶやき | Comments(0)